主人公は国立東都大学医学部臨床医から感染症研究の立場にかわり助手をつとめている仲沢葉月、夫は啓介、アメリカで臓器移植を手がけていた有名な外科医。妻子ある啓介と葉月は研究を通して知り合い、啓介は妻と離婚して2年前葉月と結婚した。葉月は幸せな結婚と感じていたが、啓介は臓器移植の問題に面していた。元妻公子との間にできた子供宏に拡張性心筋症でアメリカで移植手術を受けさせていたのだ。その手術の仲介をしたのが啓介、そのことを葉月は知らされていなかった。
公子が夜中に葉月に電話をかけてきた、宏がいない、誘拐されたというのである。身代金2000万円を要求されているという。犯人の要求にしたがって指定の場所に行くと、そこには壷に入った宏の遺骨が置かれていた。遺体を焼却していれたものと調査してわかった。さらに調べてみると、臓器移植をされた子供が死ぬ事件が続いていることが分かる。啓介は一体何に関わっていたのだろうか。南米で調達された子供の臓器をアメリカの病院で高い医療費をとって臓器移植する、そんなビジネスに関わっていたのであろうか、と葉月は啓介を疑う。さらに豚やヒヒの内臓を人間の子供に臓器移植する、という人体実験をも行われていたのではないかという疑いも出てくる。しかし、啓介が自分の子供に臓器移植をするなら理解できるが、その子供をどうして焼却する必要があったのか、それを啓介がやったのであろうか。
動物の臓器、遺伝子操作と臓器移植、子供の臓器の売り買い、日本での臓器移植の実態、移植失敗がもたらす札幌医大の後遺症など、日本の移植医学の問題を提起する小説である。
感染 (小学館文庫)
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