自分も母親との気持ちのすれ違いがあり、幼い頃にいじめだとも思える躾を受けて心の傷を持つみずほ、チエミの母娘関係の濃さには少々の違和感を持っていたが、まさかチエミがあの優しかった母を包丁で刺すとは考えられない。友人たちに話を聞く中で、女同士の友人という関係が、実は嫉妬や見栄、過剰な親密さの中にも、反発や嫌悪が渦巻く。
二人が幼稚園の時には、いじめられるチエミを身をもってかばったみずほ、そのことを今でも忘れないチエミ、結婚願望が強いのに、本当に良いと思える相手になかなか出会えないチエミは、みずほが男だったらいいのにと思う。みずほは兄に紹介された啓太と結婚しているが、チエミの結婚願望の強さを行方調査の間に感じていく。8月7日が誕生日の人は、ATMカードの暗証番号にもその数字を使う、これがタイトルの意味だが、本当の意味は物語の中にしかない。
みずほのチエミをおもう心の強さに読者は引き込まれてしまう。お赤ちゃんポストの話題にストーリー展開の行く末を予感しながらも、富山県への舞台転換にちょっとした驚きがある。そしてチエミが逃げていた本当の理由、読者はすこしほっとするような結末である。
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