意思による楽観のための読書日記

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ 辻村深月 ****

甲府盆地に生まれ幼馴染の神宮寺みずほと望月チエミ、小学校までは同じ学校だったが、それ以降は別の道に歩む二人、進学校から東京の大学に進み結婚して雑誌ライターになったみずほ、チエミは地元の短大を出て地元の建設業に派遣事務員として働いていたが、結婚はまだしていなかった。度々ある合コンに参加して再会する二人、物語はチエミが実の母親を包丁で刺して殺してしまい出奔した直後、みずほが幼馴染のチエミの行方を追おうと昔の友人やチエミの友人関係をしらみつぶしに調べるところから始まる。

自分も母親との気持ちのすれ違いがあり、幼い頃にいじめだとも思える躾を受けて心の傷を持つみずほ、チエミの母娘関係の濃さには少々の違和感を持っていたが、まさかチエミがあの優しかった母を包丁で刺すとは考えられない。友人たちに話を聞く中で、女同士の友人という関係が、実は嫉妬や見栄、過剰な親密さの中にも、反発や嫌悪が渦巻く。

二人が幼稚園の時には、いじめられるチエミを身をもってかばったみずほ、そのことを今でも忘れないチエミ、結婚願望が強いのに、本当に良いと思える相手になかなか出会えないチエミは、みずほが男だったらいいのにと思う。みずほは兄に紹介された啓太と結婚しているが、チエミの結婚願望の強さを行方調査の間に感じていく。8月7日が誕生日の人は、ATMカードの暗証番号にもその数字を使う、これがタイトルの意味だが、本当の意味は物語の中にしかない。

みずほのチエミをおもう心の強さに読者は引き込まれてしまう。お赤ちゃんポストの話題にストーリー展開の行く末を予感しながらも、富山県への舞台転換にちょっとした驚きがある。そしてチエミが逃げていた本当の理由、読者はすこしほっとするような結末である。


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