上巻で登場した「天使の代理人」の著者冬子は、中絶を思いとどまらせる活動をする組織をリードしていくが、若い世代が入ってきて、もっと直接的に胎児の姿を妊婦に見せて思いとどまらせようとする活動方針に違和感を抱く。それでも説得成功率が上がってくると反対ばかりもしていられない。しかし、ある妊婦は天使の代理人に説得され、しかしその後中絶をしたあとに自殺してしまう。冬子は活動停止を提案する。
精子バンクを使って妊娠した川口弥生は19週目の出産前検診で胎児が女の子だとわかったとたん中絶することを決めてしまう。たまたま、それを知った天使の代理人のメンバーは冬子に説得を依頼する。決意が硬い弥生は訪れてきた冬子をけんもほろろに追い返す。そして、麻矢のブログにそのことを書き込む。麻矢は弥生の決断を賞賛するが、有希恵は「女の子だから」という理由で中絶しようとする弥生を思いとどめようとする。弥生は表面的には突っ張っているが、それでも有希恵の説得には耳を傾け始める。しかしやはり中絶の決意は変わらない。
有希恵は人違いで中絶させられた人違い相手である同姓同名の雪絵の出産をなんとか手伝いたいと毎週雪絵のアパートに通う。雪絵の相手である若い男の子に父親になることの意味を説いたりもする。雪絵は一時は中絶することを決めていたが有希恵に説得され生むことを決心する。有希恵のヘルプもあって、妊娠した相手の男の子もやっと父親になることの覚悟を決め、めでたく出産する。
弥生は妊娠22週目のぎりぎりのタイミングで中絶手術を受けるが、切迫流産の危険があるということでたまたまその場にいあわせた冬子が出産の手伝いをする。死産する可能性があると聞いて弥生は生きて生まれて欲しいと冬子に頼み込む。ほとんど可能性がなかったが奇跡は起こる。
冬子は「贖罪」という言葉をつかって自分の行為を説明する。さんざん人工死産の施術をするうちに、胎児であっても命あるものを亡きものにしているという罪の意識に耐えられなくなっていたのである。重いテーマではあるが、読後感が良いお話であり、筆者の必死の勉強の姿勢も好ましい。若い男女、特にこれから結婚する世代や30-40代の誰にでも薦めたい作品である。
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