意思による楽観のための読書日記

梅原猛の授業 仏教  梅原猛 ****

梅原猛が2001年に孫も通う京都の洛南中学校3年生を相手に授業をしたときの授業録。洛南中学は東寺の隣にたつ仏教(真言宗)の学校。空海の綜藝種智院が設立された場所にたつ。難しい宗教という内容を優しく中学三年生にでも分かるように語る。なぜ宗教は必要なのか、文明が発達するには宗教が必要だったことは歴史が証明していることを説明する。そして仏教とキリスト教、イスラム教の違いの一つが聖者の死に方であるという。イエスキリストやマホメットは殺害されるが釈迦は天命を全うする。戦いと対立の教えではなく和と自然との共存の教えであるのが仏教であると。東南アジアに広く伝わる仏教は自分のための小乗仏教だが、日本の仏教はすべての人のための大乗仏教だという。そして仏教の教えは平等、自由な知恵、慈悲であり、仏教の「空」を実践しているのがイチローだという。仏教は道徳を教えるが、道徳さえあれば仏教がいらないわけではなく、仏教とは道徳を維持継続していく仕組みであるという。

日本の律令制を定めた聖徳太子は仏教をその中心の教えとして17条憲法に取り込み、国民に説いた。行基には著書はないのですが遊行僧として広く国民に仏教の教えを説いて回った。最澄は聖徳太子の教えと中国から持ち帰った密教の教えを天台宗として打ち立てた。これらのこの根本はすべて法華教であり、その教えは日蓮に引き継がれ、創価学会や立正校正会もこの流れであり、日本仏教の柱である。空海は真言密教をもたらし、東寺と高野山を根拠地とし、嵯峨天皇に寵愛された。浄土教を開いたのは比叡山にいた源信、その弟子の弟子である法然、その弟子が親鸞、その弟子が蓮如で浄土宗、浄土真宗という日本で一番広まった教えにつながる。

ハンチントンの「文明の衝突」によると現代は文明の衝突の時代である。世界にはユーラシア大陸に6つ、アメリカ大陸に一つ、アフリカ大陸に一つ、合計8つの文明があるという。西欧文明にはヨーロッパと北米が含まれ科学技術主上主義であるキリスト教文明を形成する。もう一つは東欧・ロシア文明でビザンチンとロシア正教を背景に持つ。アラブ世界には一神教であるイスラム教による文明がある。これが現在一番勢力を伸ばしており、他の宗教を認めないのでバーミヤンの遺跡なども簡単に壊してしまう。そしてインド、ここはバラモン教を源にする多神教であるヒンズー教の文明。中国では仏教は廃れ儒教国と言える。そしてハンチントンは日本を一つの独立した文明だと言っている。その背景は仏教と神道が混淆した神仏習合の文明だという。特にキリスト教徒イスラーム教、ユダヤ教はお互いに排他的であり、衝突は避けられないのかもしれない。仏教は和と調和を目指す。キリスト教やイスラム教は人間中心であり、自然は支配しコントロールすべきもの、仏教では人間は自然の一部分であり共存すべきものである。グローバリズムという資本主義の支配に流されてはいけない、世界は多を含むことによって素晴らしいことを知るべきである、と主張する。一木一草が人間の中にある、つまり自然や地球と人間は一体である。福岡伸一さんの「動的平衡」の考え方に通ずる。強者が弱者を管理するという考えには与したくない、というのが梅原さんの思想である。
梅原猛の授業 仏教 (朝日文庫)

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