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意思による楽観のための読書日記

日本会議の研究 菅野 完 ****

「日本会議」に関する情報が本として出版されてきている。現在の閣僚の18人中15人が属しているという日本会議は何を目指している組織なのか、いったい安倍政権は何を目指しているのか、右傾化政権と言われて長いのに支持率を保っていられるのはなぜなのか、憲法改正の狙いは何なのか、どんな国を目指しているのか、その中身を知りたいと思って本書を手に取った。2016年7月の参議院選挙の前に読んでおいてよかったと思う。

著者は、ダイアモンドオンラインなどWebで評論を発表している元サラリーマンのジャーナリスト、1年をかけて調査したという記事の集大成である。書いてあるポイントは次の通り。

1. 現在の安倍政権が目指す政策は、日本会議が掲げる政策の実現を目指している。日本会議が目指すのは、皇室を中心とした社会の確立、そのためには個人の尊厳、男女平等を定めた現憲法を見直すこと。祭政一致を基本とし、靖国神社や伊勢神宮参拝など国家の名誉を最優先する政治を目指す。また、こうしたビジョン実現を担う新たな世代を教育するため、歴史認識を見直し、国防力を強めたうえで自衛隊の積極的な海外派遣を行って世界の平和に貢献する。
2. 憲法改正は、最近の国際情勢などから、取り組みやすく賛同が得やすい「緊急事態事項の創設」から着手するというのが日本会議の政策、安倍政権も同様である。その後、憲法24条の「個人の尊厳」を見直し「家族の価値」条項と書き換える。そして本丸の憲法9条第二項の改正へと進むのが日本会議の示す道筋。
3. 現憲法は日本の自主的制定過程を経ていないため、そもそも認められない。よって、96条の改正には3分の2が必要という条項に従う前に、反憲法の姿勢を示し、解釈で実質的な改憲を目指せ、というのが日本会議の方針。
4. 日本会議の推進役は「日本青年協議会」という右翼団体である。
5. 日本青年協議会の会長である椛島有三や日本政策研究センターを率いる伊藤哲夫が安倍晋三総理のブレーンだといわれているが、いずれも1983年以前の「生長の家」出身、谷口雅春の薫陶を受けていた。現在の生長の家は別路線である。
6. 生長の家原理主義ともいえる1983年以前の主張をもとに国会に出てきたのが村上正邦、そして現在それを引っ張っているのが衛藤晟一、稲田朋美、学者では百地章、高橋史郎などの保守派言論人、その淵源には安東巌という生長の家出身者がいる。
7. 戦後70年談話は、50年談話の時に自民党幹事長だった加藤紘一や自治大臣だった野中広務が「太平洋戦争は日本による侵略戦争だったこと」ことを認めてしまったことへの意趣返しの意味合いが強かった。それでも認めなければアメリカや中国からの反発が明確なので、支持者向けに侵略を認めない意思を示すためには主語を曖昧にするしかなかった。

つまり、安倍政権は自民党政権ではあるものの、長く自民党主流派だった宏池会やその他今まで主流だった「安保推進で護憲」という考え方とは全く異なる政治を目指している、ということ。閣僚が靖国参拝にこだわる理由は何か、なぜサミットは伊勢志摩で実施したのか、安倍政権が家父長制を軸に据えたような家族観を憲法に反映したがる理由は何か、男女共同参画に反対する理由は何か、その背景がよく分かった。

本書内容は、極めて政治的な内容であり、記述内容に反発する人もいると思うが、参議院選挙で改憲勢力で3分の2を占めた時に何が起きるかを明確に示す内容であり、選挙前に一読する価値がある。日本会議に関する著作は最近多数発刊されている。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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