讐雨―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
被匿―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
帰郷―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
孤狼―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
久遠〈上〉―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
久遠〈下〉―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
疑装―刑事・鳴沢了 (中公文庫)
新潟警察署で刑事課担当だった鳴沢は捜査上の行きがかりから人を殺してしまい、青山署生活安全課に異動している。お話はマルチ商法の被害に遭ったと訴えでてきている老人たちとのやりとりから始まる。被害は予想以上に大きく、背後には木村インターナショナル、K商事の存在と実質的に詐欺工作を取り仕切っている数名の人間が見えるが、詐欺の立証をできるような証拠を残していない。マルチ商法であり、被害者が加害者にもなることから被害届けを出すこともためらう被害者も多いと想像できる。同じ頃、ドメスティックバイオレエンス被害にあってDV被害者を守るNPOに逃げ込んでいる被害者からの通報があり駆けつけて、DV被害者沙織とNPO職員、優美と出会う、これも生活安全課の仕事。町で鳴沢の米国留学時代のルームメイトで今はNY警察刑事である内藤七海と偶然出会い、祖母の住む自宅に招かれると、そこに優美がいる、七海の妹だった。ここからマルチ商法被害とDV被害、七海の日本での活動目的が徐々に一つの線上に重なってくる。鳴沢は優美に引かれ、優美との会話の中で新潟警察での出来事がトラウマになっていること告白する。事件の概要が徐々に明かされてくるとともに、背後にいる中国人トミーワンの存在が七海の目的だったこともわかってくる。警察官の仕事を誇り高きやりがいある仕事であると書いている点、同じ警察小説を書いている黒川博行とは異なる。黒川の小説では人は死なないが、警察内部に存在する問題をえぐり出すように描写する。堂場は鳴沢の心の中の葛藤は描くが、警察の暗部にメスを入れることはしていない。中国人を使った殺人のからくりやマルチ商法とDVという現在の問題を題材にした読み始めると最後までやめられないお話、警察小説好きには格好の読み物。
熱欲 (中公文庫)