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映画『この世界の片隅に』

2017年01月04日 | よしなしごと
新年早々の映画鑑賞、「この世界の片隅に」。予想したのは戦争という悲惨な現実の中で必死に生き抜こうとする人たち。あながち間違いではありませんが、そんな映画やアニメはごまんとあります。しかしこのアニメは一味違う。「三丁目の夕日」がテレビや冷蔵庫、そして東京タワーに象徴される高度経済成長期を背景とした下町の人間模様を描いたものだとしたら、「この世界の片隅に」は戦時中の呉軍港、広島を背景とした、人間模様。すさまじい物資の欠乏、毎日のような空襲、そして原爆と極限状態が描かれはしているが、それはあくまで背景であり、主題ではありません。

描かれているのは優しさ、ユーモアに富んだ人間模様。嫁として主人公のすずを迎え入れた北条家はすずの度を越した「天然」にあきれはするものの、暖かく受け入れ、またすずも一生懸命北条家の人間になろうと奮闘努力。どこまでもすずを守ろうとする周作。みんなあくまで前向きで明るい。

考えてみれば戦時中のいくら極限状態でも人々が毎日をひたすら暗く過ごしていたわけでなない。やはり苦しみもあれば喜びもあり、泣くこともあれば大声で笑ったこともあるに違いない。このアニメはそういった人間の営みを無理にデフォルメすることなく、淡々と描いています。

「人間ってこんなにしなやかでたくましいんだ」と思わされるアニメ。すずの声を担当したのん(本名能年玲)の伸びやかな声はうわさ通りに素晴らしい。まるですずに乗り移ったようでした。

映画『この世界の片隅に』予告編