光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

国立近代美術館 工芸館(2013.3.23) 人形 鹿児島 寿蔵

2013年04月01日 | アート 人形

鹿児島 寿蔵の人形作品です。   2010年にこの「延寿雛」と次の作品「地久」を紹介しており、当時の私は緻密で大胆と感じました。

気になる作家でしたが、特に調べてはいませんでした。  今回、寿蔵について調べると、人間国宝である人形師と共にアララギ派の

歌人でもあり、宮中の歌会始めの撰者にもなっている。 

人形と短歌の二つの道を究めた芸術家だった。 

紙塑人形も、寿蔵が独創で作り上げた技法※

※「紙塑人形」とは、和紙の原料である楮などの繊維を分離したものと種々の材料を臼で長時間搗き手でこね上げ
本体にし、独自に染色した「寿染和紙」を幾重にも貼り重ね、さらに気の遠くなるような工程を経て作り出される。
細かな衣装の模様まで指でちぎった和紙を貼り表現される。
柔らかな光沢、質感、優美にして堅牢、和紙のもつ力を究極までに高めた人形である。
(福岡県人会 会報(抜粋) 2011年5月号より引用)

この作品名の地久とは、舞楽の曲名 。   延寿雛もそうですが、赤と緑の色が鮮烈。

寿蔵の和歌作品で人形を歌ったものがあります。 

紙塑のわざは夢にあらざる夢なりき 求め求めて求めえし夢  (第十四歌集『海と花』)

 

 

「大森みやげ」はとりわけ完成度の高い作品。   切手の図柄にもなっています。(日本美術切手に本作と「地久」が選ばれています)

 なお、大森みやげとは、江戸時代、川崎大師参詣の帰りに、大森の名産品麦わら細工を土産に買って帰ることが流行したことに因む。

 

 この作品は可愛らしい。  頭にのっている二羽の鳥が仲睦まじく、その鳥と少女が仲良しのようだ。

ここでも、赤を中心とした色合いが絶妙。

 

 次の「さぬのちがみのおとめ」は、恥ずかしながら、?と思った題名でしたが、調べると万葉集 巻15の詠み人で、昔、読んだ記憶がありました。

狭野茅上娘子(きぬのちがみのおとめ)とその夫、中臣朝臣宅守とのあいだで交わされた贈答歌63首・・・夫が越前の国へ流罪となり、離れ離れになる思いを歌ったもので、一部を紹介すると

◆ あしびきの 山路越えむと する君を 心に持ちて 安けくもなし

◆ 君が行く 道の長路を 繰り畳ね 焼き亡ぼさむ 天の火もがも

◆ 逢はむ日の 形見にせよと 手弱女の 思ひ乱れて 縫へる衣ぞ
  

燃え上がるような恋心、身も心も夫に捧げた狭野茅上娘子の歌は、現代人の私の心を打ちます。

さすがに、超一流の歌人でもある寿蔵が、つくるわけだ。

 


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