光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

東京国立博物館  富嶽三十六景 3

2011年01月16日 | アート 浮世絵・版画

《隅田川 関屋乃里》
隅田川上流の堤を疾駆する3人の侍。 赤富士と赤松、赤茶の服を着た侍、先頭の赤茶の馬、 色使いに工夫が見える。
高札場の札の文字など細かいところも描き込んでいるが、馬の脚の描きかたがワンパターンなのが残念。



《相州 江ノ島》
干潮時に現われる砂洲を渡って江ノ島神社にいく参拝客。 砂洲の波打ち際の、光輝く海の表現がいい。 奇をてらったところが無く自然な表現。



 《相州 梅澤左》
梅澤は大磯と小田原の中間にあった場所。 梅澤左の左は庄か在の間違いだといわれています。
鶴だけがいて、吉祥図との解説が多い。 私は、鶴の羽毛の白黒と富士の白雪と黒い山麓のデザイン的対比も考えていると思います。



《東海道江尻 田子の浦略図》 
万葉の和歌でも有名な田子の浦から見た富士。 
漁をする舟、浜で塩田作業をする人々が蟻のように細かく描かれています。
富士の稜線の弧と、浜の弧、そして舟の弧が響きあう構図になっており、素晴らしい。



《身延川裏不二》 
実際には、身延川沿いでこのように富士が見えるところは無いようです。 
誇張や演出の世界ですが、川の描きかたにもそれはいえて、北斎独特のデザイン感覚です。
また、馬の脚の描きかたになって恐縮ですが、同じパターンです。ただし、馬が近接しており、同じパターンのほうがすっきりしていいかなと思います。



《甲州伊沢 暁》 
甲州街道の石和宿。 暗いうちから旅立つ人々。 当時の人たちは早起きだったのがわかる。 富士も未だシルエット状態。
ここでも、稜線の弧と木橋の弧、手前の山の弧が、構図上の安定をもたらしている。



《諸人登山》 
最後になります。 山梨県立博物館の本図への解説を転載させていただいて終わります。



金剛杖を使って登るもの、疲れて腰を下ろすもの、岩室で体を休めるものなど、富士山頂付近の富士講の人々が描かれている。しらみはじめた空に朝焼けの雲がたなびいている。御来光はまもなくである。「冨嶽三十六景」が信仰の山である富士を主題としていることを改めて強く意識させる一枚である。

※富士山頂
…富士山の山頂は、火口を内陣(御鉢)、その周囲の高所を八葉と称し、大日堂ほかの祠を巡る、お鉢廻りの信者で賑わった。本図には、大日堂に至る駒ケ岳付近の参道に設けられた梯子の様子が描かれている。



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