昨日に続いて夏風俗の浮世絵です。
鳥居清長も達者な絵師。 この絵はいいですね。 背景の不忍か池が二人を引き立てています。
川又 常正は初めて聞く名前です。 湯浴み前の男女の顔が素朴でいい。
役者絵などで人気を博した勝川春英の肉筆美人画
顔に特徴があります。
顔の部分をアップ。 切れ長の目、ぽっちゃりとした頬、春英独自の美人絵で妖艶さを感じます。
足元の猫。 しっかりとした描写です。 衣服の模様や体の線描も美しい。
昨日に続いて夏風俗の浮世絵です。
鳥居清長も達者な絵師。 この絵はいいですね。 背景の不忍か池が二人を引き立てています。
川又 常正は初めて聞く名前です。 湯浴み前の男女の顔が素朴でいい。
役者絵などで人気を博した勝川春英の肉筆美人画
顔に特徴があります。
顔の部分をアップ。 切れ長の目、ぽっちゃりとした頬、春英独自の美人絵で妖艶さを感じます。
足元の猫。 しっかりとした描写です。 衣服の模様や体の線描も美しい。
浮世絵コーナは、夏の風俗にちなんだ展示です。
まず、歌麿から
この絵の蚊帳の表現も見事ですが、全体のデザイン・色合いも素晴らしい。
「夏衣装当世美人」は呉服店の衣装の広告に使われたようです。 解説はブログ「又兵衛~~~~~深水」さんのものを参考にさせていただきました。
乗布(上布)は上質の麻でできた小袖で、高価な品であった。
次は、「伊豆蔵仕込みのもやう向キ」 伊豆蔵は日本橋の呉服問屋で、松阪商人・伊豆蔵吉右衛門の店。
もやうはなんでしょうね? 模様の意味かな?
「亀屋仕入れの大形向キ」 この絵は、京橋の尾張町に店があった亀屋の商品。
大形とは、大ぶりの模様の型染めで、染色技術のひとつ。
次は吉原の夏のイベントを題材にしていますが、絵の面白さはイマイチ。
英一蝶の記事で紹介した、朝妻舟が描かれています。
「花の廓 鹿嶌の壽」
東京国立近代美術館では、版画も充実していました。
まず、戸張 孤雁。 この東京国立近代美術館のシリーズでも、彫刻編で彼の老母像を紹介しましたが、版画もやっています。
輪郭線を描かない画法で、ふわっとした立体感がでて面白い。
木場風景は今は見られない光景ですが、映画「忍ぶ川」のシーンに残っています。
石井 柏亭は二科会や一水会の創立者でもあり、こうした創作版画や水彩画などに優れた作品を残している。
織田 一磨の美人画で、竹久夢二の美人画と似たものを感じますが、夢二とは同世代。 風俗的には似たものになるのでしょう。
さて、版画の特性に着目した、差異と反復の特集を紹介します。
伊藤深水の作品(試作)で、したの版画が第一回目の摺りです。
版木は同じですが、女性の表情など違った感じに見えます。
小原 祥邨の作品は、川蝉の有無で明確に違いますが、花に小禽の図は広重や北斎などもよく描く日本画のレパートリーですが、絵としては菖蒲のみのほうが味わいがあります。
恩地孝四郎の作品は、版の違いが良く分かりませんがそんな差異より、思い切ったデザイン、顔の表現が素晴らしい。
山本 鼎の作品。 陰影や色の濃度などに違いがあることが分かります。 くっきりした上の作品よりも、少しくすんだような下の作品がいい。
同じく山本鼎の作品。 遠くの山並みの表現に違いがあるのが分かります。 画家として微妙なところにもこだわるのは当然でしょうが、見る者にとっては、さほど気にならない。
東京国立博物館のシリーズに戻ります。
北斎の浮世絵「詩歌写真鏡 在原業平」
古今の詩歌からの絵解きが必要な、江戸の文化人向けの絵です。
とりわけ、この在原業平は、難しく、たどり着いたのが次の解説。
(三井記念美術館で開催中の「北斎展」(ホノルル美術館所蔵)の図録より)
「伊勢物語」は主人公が在原業平とされるが、その45段に「秋風吹くと雁に告げこせ」という歌がある。 「雁の使い」とは手紙の意であるが、・・・略・・・能の「砧」では、辺境の地に囚われの身になっている蘇武の夜寒を按じて、故国の妻子が高楼に登って砧を打ったという挿話が語られる。 本図はこの能を絵画化したもので、雁-蘇武-砧という複雑な連想がはたらいている。」
この絵は、分かりやすいし、面白い。 ゴーギャンのタヒチの絵と頭のなかで比べたりします。
前の絵もそうですが、当時高価だったベロ藍(プルシャンブルー)が効果的。
大阪の絵師 岳亭春信の作品もレベルが高い。
浮世絵のコーナでは、歌麿、北斎、広重などの好きな絵師の作品が並んでいました。
まず、歌麿から紹介。
当時、高輪は品川沖を望む高台にあり、この絵のような眺望のよい料亭が並んでいた。
歌麿の美人画は、艶かしい。
以前にも紹介したものですが、再度。
観光とタイアップした漁を、この当時からやっていたんですね。 月夜の設定ですが、灯りはどうしたのだろうか。
北斎の絵が1枚、漏れていました。
版画ではなくて、直筆の絵なので、紙の変色がでています。
おんぶされた子供に、通りかかりの女性が声をかけている光景でしょうか。
当時の風俗がよくわかります。
こちらは広重。 掛け軸になっていて、版画とは少し違って、しっとりとした印象がありました。
中央部の拡大図です。
動感が素晴らしい絵です。 作者不詳ですが、北斎のような気がします。
達者な豊国。 正月の風俗を捉えています。
歌麿の肉筆。
同じく歌麿。 ストーリーを感じさせてくれます。
落合芳幾は初めて聞く名前。 源氏物語を今様(当時の)にアレンジすることは、以前から行われていたんだ。
近代美術館が終わりましたので、再度、トーハク(24.1.2撮影)の作品紹介です。
浮世絵編で、まず北斎から。 代表作の「凱風晴々」は正月にアップしたので、その次に展示されていたものを。
なお、今回の浮世絵は、全般にブレがでていて見苦しいのをご容赦ください。 腕が悪いのですが、今回の展示コーナはいつもより照明も暗いようでした。
この頃の、男の子のヘアスタイルはこれが標準だったのですね。 こけし人形の頭はリアルだったのだ。
正月の展示なので、ちなんだ題材の絵になっています。
正月の初汐汲みの絵です。 たくましい母と子。
京の都から東国へ赴任する途中、富士山に見とれているところ。
旅人の頭の上の荷物が楽しい。
川瀬巴水の版画は、最近、町田市立版画国際美術館の記事でも紹介しましたが、近代美術館では、大きなショウケースに十点ほど東北の風景版画があり、壁面に花を描いた版画一点が展示されていました。
まず、1919年(大正8年)の旅みやげ第一集から。 なお、取材地はすべて東北から選ばれており、東北大震災への配慮と思われます。
陸奥 三島川
八戸市の三島神社の湧水が三島川となり生活用水となっていたようです。 今は三島川はなくなっているとか。
水を汲んで天秤桶で運ぶ女性、野菜でも洗っているのでしょうか子供連れの女性、少し頼りない満月、サイレンか何かの地域の放送柱、全体に弱々しい線ですが、暮れゆく風景と生活を見事に描いています。
松島 かつら島
松島湾に浮かぶかつら島、名勝の松原の清掃風景。 単に風景だけでなく人間の営みを加えているのが、巴水の美的感覚なのでしょう。私も同感。
松島の材木島
松島の代表的な名勝だったこの島、このように大きな穴が開いていたのですが、昭和44年に上の岩が崩れて、今は二つの島に。
巴水の作品には、夜や薄暮れを描いたものが多い。 これも月光に照らされた海面や島影が美しい。
夜の青葉城、月影に浮かぶ姿を捉えています。
雪や雨の風景も多い。 確かに雪や雨は人の心を鎮め、詩情豊かな風景をつくり出す。
日本的な詩情あふれる風景、家屋の破れ戸も、生活感を感じさせます。 海外で人気が高いのも分かります。
星降る夜の中尊寺といった感じでしょうか。 私も写真で、夜の風景を撮るのは好きです。(難しいのですが)
雪の光景。 雪の表現も簡単なようで難しいと思うのですが、これは牡丹雪かな。
最後に、ダリアを描いた作品。
展示の企画で、ダリア特集があり、そのなかの一点です。
2月11日(土) 町田市立国際版画美術館へ行ってきました。
特に企画展を目当てにしたものではなく、フラリと行った感じです。
初めていく美術館ですが、版画の谷中安規の作品が見れたらいい・・・というぐらいの軽い動機でした。
展示されていたのは
常設展示室 シリーズ<現代の作家>田中 陽子作品展
2011年新収蔵作品展
撮影は禁止でしたので、Webサイトから引用しています。
まず田中陽子の作品から
「人もよう とぶ人 はねる人」1987年 木版 田中陽子(1947-2008)
ボリューム感と躍動感がいいですね。 ただ、ウィンドに並べたような構図が私的には惜しい。
田中陽子の作風も変化しているなかで、人間と動きの描写が素晴らしいダンスシリーズは見応えがありました。
「黒いタイツ」 ・・・ この作品が一番のお気に入り。
「バレリーナ」
常設展示室の出口に黒布で覆われた箱があり、あけると豊原国周の浮世絵がありました。
明治時代の浮世絵。 展示していたのは下の作品とは違っていたと思います。
2011年新収蔵作品展では、川瀬巴水(1883-1957)の作品が印象に残りました。
「深川上の橋」 1920 木版 仙台堀川と大川(隅田川)の合流点にかかっていた橋ですが、今は埋め立てられて碑だけが残っています。
三菱深川別邸の図 月夜(大泉水) 1920 木版 三菱深川別邸は、現在の清澄庭園
三十間堀の暮雪 1920 木版 降雪の表現が凄いと思いました。
展示はなかったのですが、いい雰囲気の新版画をWebからアップしました。
川瀬 巴水の新版画は叙情味があって、海外でも人気が高いとか。
「雪の向島」
品川
幕末から明治前期の浮世絵師である月岡 芳年、歌川国芳門下で、国芳の雰囲気が感じられます。
私にとっては初めて聞く名前で、作品を見るのも初めてでした。
「風俗三十二相」は、さまざまな女性の風俗を描いたもので、官能的な匂いも感じられます。
それぞれの絵の題は「○○そう」といった副題が付けられています。
下の絵は
うるさそう 寛政年間 処女の風俗
いたそう 寛政年間 女郎の風俗 恋人の名前を刺青する光景です。
ひんがよささう 享和年間 官女之風俗
つめたさう 文化年間 めかけの風俗
しなやかさう 天保年間 傾城之風俗
おもたそう 天保年間 深川かるこの風俗
みたそう 天保年間 御小姓の風俗 御小姓:大奥で世話係をした旗本の娘。
この作品は、構図や色遣いなど、優れていると思いました。
かゆそう 嘉永年間 かこい者の風俗
かいたそう 嘉永年間 おかみさんの風俗
おきがつきそう 明治年間 西京仲居の風俗
くらそう 明治年間 細君の風俗
はずかしそう 明治年間 むすめの風俗
芳年の本作品を、最初見たとき、少し低俗な絵かな?と思ったのですが、細部にも手を抜かず美しく仕上げており、価値ある作品だと思いました。
今日12月14日は赤穂浪士討ち入りの日、前回は広重の忠臣蔵の特集でしたが、忠臣蔵にちなむ他の絵師の浮世絵をどうぞ。
五代目松本幸四郎は特徴ある容貌で、独特の味を感じさせます。
国芳も独特のぐにょぐにょとした描き方で面白い。
豊国には洗練を感じます。
見立てという手法で、いろんな場面に変形されますね。 それとこの絵の壁画のデザインが面白い。
さすがは歌麿。
豊国の作品。 これで夜討ねー・・・。 絵は素晴らしい。
夜討らしい絵がやっと出ました。
時節柄でしょうか、トーハクの浮世絵のコーナは忠臣蔵に関係するものがズラリ。
まずは、「仮名手本忠臣蔵」をベースにした広重の浮世絵を紹介します。
浄瑠璃や歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」は、当時(今もですが)、大人気の演目だったことがよくわかります。
二段目
三段目
四段目
五段目
六段目
七段目
八段目
九段目
十段目
夜討
夜討引取
浮世絵の紹介です。
歌麿の「屋根船四手網」 3枚組全体図.
部分拡大です。 江戸時代は佃島の漁師が四手網で白魚漁をしていたらしいのですが、この絵では、大きな魚も見えます。 当時の若い男女の遊興として漁を見て楽しんだのでしょう。
遊女の生活を時間ごとに描いたシリーズ 夜、8時 (青楼十二時は以前に早朝から午後の4枚を紹介)
夜10時
一筆斎文調は初めて聞く名前ですが、いいですね。
鳥居 清長も達者な絵描きです。
ガラッと変わって、北斎。 筆の力が素晴らしい。
最後は豊国。 表装も良かったので含めて見ていただきます。 炬燵での風情は今も昔も一緒ですね。
東京国立博物館での写真を整理していたら、7月24日に企画展「江戸のお化け」の写真が出てきました。
少し、時期を失していますがヒヤーとするお化けを紹介します。 この記事の後半に怖いあるいは気味悪い画像がありますので苦手な方は、狸のところで終えてください。
玉藻前(たまものまえ、玉藻の前、玉藻御前と紹介されることもある)は平安時代末期、鳥羽上皇に仕えた白面金毛九尾の狐が化けた伝説上の絶世の美女。 20歳前後の若い女性でありながら、大変な博識と美貌の持ち主であり、天下一の美女とも、国一番の賢女とも謳われた。 やがて安倍清明に正体を見破られ、失踪し那須野で軍勢に追われついに殺される。 しかし、狐は巨大な毒石に変化し、近づく人間や動物を殺した。 これが今も伝わる殺生石の伝承となっている。
狐に化かされる話は昔からあるようです。 国芳が描いているだけに迫力があります。
狐とくれば狸ですが、道八の陶器はこれまた迫力。
化物屋敷、これもまた国芳の絵筆がさえます。
葛飾北斎も妖怪物を多く描いています。
前に、国宝「餓鬼草子」をアップしましたが、変色でわかりずらかった。 今回は模本ですが、見やすくなっていました。
今年の正月に東京国立博物館(2011年1月9日)に行ったときの紹介作品は、本館のリニューアル記念もかねて、国宝などがずらりでした。 で、影に隠れる形で紹介できなかった名品がかなりありましたので、順次、採り上げています。
浮世絵 「浅草年の市」 喜多川歌麿(1753?~1806)筆
大判 錦絵 5枚続
上の図の中央部を少し近づいて撮ったもの。↓
浅草、雷門あたりの情景を捉えたものですが、正月飾りや衣服など当時の風俗がよくわかって面白いし、美人画としても素晴らしい。