まあ、どうにかやってる淡野寧彦(TANNO Yasuhiko)の活動状況報告

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夏のフィールドワーク2017・第1弾

2017年08月25日 | 日記
早いもので2017年度の前学期が終わり,夏季休暇期間へ。
と言っても,仕事が休みになることはありません。
今年度は,2年目を迎えた社会共創学部とこれまで在籍していた
法文学部のそれぞれのフィールドワークに参加するという,
むしろハードな条件。第1弾は,社会共創学部での愛媛県上島町に
おける3泊4日(8月18~21日)のフィールドワークです。


こちらは愛媛県生名島の立石港付近にて。
上島町は弓削島,佐島,生名島,岩城島などの複数の島によって
構成されていますが,四国や本州と橋で直接には結ばれていません。
フェリーか高速船を利用することになりますが,その方法の1つが
この写真にある因島~生名島の航路,生名フェリー。
ですが,見ての通り,この2つの島の間は川でも流れている程度の距離。
港のそばで見ていると,フェリーは出港後,5分くらいで対岸の
港に到着しました。

上島町でのフィールドワークの内容は,文化遺産の保全と活用について。
このための方法として,まず,愛媛大学法文学部考古学研究室が
実施する発掘調査を体験させてもらいました。


佐島にある,宮ノ浦と書いて「みやんな」と読む場所には,古代および中世に
塩田が存在したと考えられる遺跡があり,その発掘調査が進められています。
2016年実施の「宮ノ浦遺跡第6次発掘調査」に関するホームページ(外部リンク)


淡野も人生38年目にして,初めての発掘作業に従事。
アロハ姿で軽快に作業しているように見えるかもしれませんが,
うっかり土器を傷つけたりしてしまわないかとびくびくもの。
少なくとも発掘作業自体では,大してお役に立てたとは思えません。


それでも,自分の掘っていた場所からそれなりの価値がありそうな
土器が出てきたようで,うれしいものです。

それにしても,発掘作業というのは本当に大変ですね
(某漫才ネタの「ザックザック,カキーン」のイメージは完全な誤解です)。
炎天下に,土を少しずつ削り出すように掘っていくという作業だけでなく,
価値の高い土器などを発見した場合は,すぐに掘り出したりせず,
出土した場所の東西南北かつ深度を1つ1つ細かに計測・記録し,
さらにその後は分布とその形状を図面に描く作業まであります。
これらを深さ5cmごとに進めていくそうですし,淡野が滞在したわずかな
期間では目にすることのなかった作業もあるでしょう。
朝は写真撮影のために日の出前から現場に向かうスタッフがいたり,
発掘現場での説明会の開催に向けて,宿舎に戻ってからも夜遅くまで
その準備に取り組んだりと,ものすごい作業量とパワーを感じました。
こうした作業の様子や成果は,下記のニュースなどでも取り上げられています。
愛媛新聞ONLINE「平安時代の土器確認 愛媛大と上島町・宮ノ浦遺跡を発掘調査」(外部リンク)



発掘現場から持ち帰った土器も,もちろん,ほったらかしにはされません。
土器に付着した土を1つ1つ手で水洗いしながら取り除くことで,
分析や接合作業などに結び付けることができます。
社会共創学部の学生4人と淡野の計5人が2時間かけて,ようやく
カゴ1つ分の土器を洗うことができました。
写っている土器は全体のほんの一部ですので,これもまた多くの労力を
必要とする作業です。


さてフィールドワーク4日間の最終日は,島の塩業の歴史を現代社会に
どう活用できるか,という視点から,主に弓削島において活動しました。
上の写真が,佐島の展望スペースから見た弓削島です。


古代の塩づくりの方法として,海水をまず濃い塩水(かん水)にしたうえで,
土器に入れて煮沸し,水分を飛ばして塩を得るというものがあります。
写真は,弓削島で塩を製造しているNPO法人において,この工程を体験
するために作成された設備です(火にかけている入れ物は,体験用に
新たに製造されたもので,当然ながらホンモノの土器ではありません)。
沸騰して水が蒸発していくと・・・

土器にどんどん白い結晶が付着していきます。無論,これが塩です。
塩だけを得るためには,この工程終了後,土器に付着した塩をこそげとる
作業が必要ですので,火にかけられて土器自体がもろくなっていることも
ありますが,土器を割って少しでも多くの塩を入手していたようです。
このことが,遺跡からははっきりとした形状で製塩土器が見つかりにくい
こととも関連しているのでしょう。


ありがたいことに,現代社会では単に塩を入手することについては苦労
しなくてすむ時代ですので,製塩体験に使った入れ物は,壊すことなく
持ち帰ることができます。ほっておくと,入れ物に付着した塩が空気中の
水分を吸収してぬるぬるしてしまうそうなので,乾燥剤とともにショー
ケースに入れて保管することにしました。ちなみに,入れ物の左側に
あるのはアラメという海藻で,藻塩法という製塩方法で利用されるもの,
そして中央の破片は,縄文時代の土器だそうです。
いずれも弓削島の海岸で拾いました。
研究室内の新たなディスプレイとして打合せテーブル上に飾っていますので,
お立ち寄りの際にはぜひご覧ください。

今年度のフィールドワークの内容をもとに,来年度は文化資源マネジメント
コースとしての活動をより本格的に実施できるよう,準備や検討を
進めていきたいと考えています。
今回のフィールドワークにご協力いただいた皆様に,厚く御礼申し上げます。


【おまけ】
本題とは全く関係ありませんが,ひょんなことから新たな音楽にも触れることができました。
とりあえず,「馬はいいよなー」は,買いました。