昨夜、サントリーホールで「Ryuichi Sakamato Playing the Orchestra 2013」を友人と聴いてきました。
演奏者は、坂本龍一(ピアノ)・ 栗田博文(指揮) ・ 東京フィルハーモニー交響楽団(オーケストラ)、曲目は以下のとおり:
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YMO時代からのお馴染みの曲や、「戦場のメリークリスマス」・「ラスト・エンペラー」・「シェルタリング・スカイ」などの映画音楽作品から、「八重の桜」などの最新作までと、坂本氏の多岐にわたる音楽活動そのものの内容でした。古い曲も、オーケストラ用に改めて書き下ろされています。
坂本氏のコンサートは初めてでしたが、NHKのEテレでこの春に放送された「スコラ 音楽の学校」シリーズを観ていた私としては、興味津々で臨みました。普段クラシック音楽を中心に演奏しているオーケストラを率いての演奏会で、氏がどんなオーケストレーションの手法と実演を見せてくれるのか、本当に楽しみでした。
また、サントリーホールの大ホールではいろいろな演奏を聴いていますが、P席(2階席のバックステージ)の最前列ほぼ中央、指揮者のほぼ対面というのは初体験で、とても興味深いひとときを過ごすことができました。特に、アンコールの2曲は坂本氏の指揮だったので、氏の表情を正面から観ることができ、もう大感激でした(*^▽^*)v
ご覧のとおりの2部構成で、坂本氏としては、休憩をはさんだ演奏会も、バックステージに観客がいるのも未経験だったようで、戸惑いながら、照れながらの演奏でした。
まずは座席と楽器の話から......
ステージの後ろなので、音響がよくないのは承知のことでした。ストレートに音が伝わらず、音がずれて聞こえたり、響きがあまり伴わないので、時にはシャープに聞こえ、また時には膜がかかったような音にも聞こえ...ユニークな体験でした。
でも、演奏者の、特に打楽器奏者の動きが手にとるようにわかり、とても面白かったです。特に、純粋なクラシック演奏とは違うので、打楽器の種類が多く、ドラムも入っていました。また、最初の曲だけ、坂本氏はチェンパロでの演奏でした。全体で60名くらいの編成だったと思います。
次に、演奏全体の感想を......
各曲ごとに坂本氏が表現したいことが明確に伝わってきたところが、まずすごいと思いました。私がその内容を受け取れているかどうかは別にして、少なくとも、曲ごとの氏の明確な意図の存在と、曲によってそれが異なるということが、ひしひしと伝わってきたという意味です。別の表現をすれば、音の紡ぎ方が実に多彩なのですが、1曲の中では欲張らないといえばよいのでしょうか、1曲の中ではテーマを絞って集中的に表現している、とでもいえばいいでしょうか...うまく言えないのですが...(^_^; ですから、全体としてはメリハリを感じました。
それから、ややもすれば眠気を誘われるような、単調なリズムや旋律の繰り返しが、伴奏の重奏低音や主旋律に用いられているにも拘わらず、聴衆のテンションや緊張感を終始保つ工夫がいろいろな手法で随所に施されていることにも驚きました。氏ならではの技術と、音楽への多面的な造詣の深さならではと思います。やはりエンターテイナーなんですねぇ。と同時に、ご本人がオーケストレーションを楽しんでいるのでは?とも思いました。
実は、プログラムは事前に配られていなかったので、それほど氏の曲に詳しくない私は、先入観を持たずに聴くことができたのです。たとえば...
1曲目の「kizuna」は、静かに繰り返し打ち寄せる波の音をバックに、水面に降り注ぐ月の光が心象風景を静かに描き出しているように私には感じられたのですが、オーケストラを見ていると、バイオリン→ビオラ→チェロというように、演奏楽器群が次々移っていくことで、最後消え入るように終わるまで、聴衆のテンションが保たれていたのです。
また、2曲目の「still life」 だったと思うのですが、何かが近づいてきて去って行ったような感覚になるような構成で、やはり聴き手のテンションが途切れることがないのです。情景音楽と表現してしまうとちょっと違うと思うのですが、アルバート・ケテルビーの「ペルシャの市場にて」を、聴きながら思い出していました。
聴衆のテンションを保つ手法はまだまだありました。
・これでもかというくらいの、不協和音の執拗な連続だったり...
・「Amore」で見られたように、ピアノで奏でられる“一人ポリリズム”?(左右の手の刻む拍子が違っていました)だったり...
・木琴のたった1音による伴奏としてのリズム演奏が、シンコペーションの長い連続だったり...
実にさまざまな手法で、聴衆のテンションを保ち、興味を引きつけ続けるのです。
また、曲によって活躍する楽器が変わるのも、その手法の一つと言えるのかもしれません。ときには、ファゴットの重奏低音が印象的だったり、オーボエが、フルートが、ある曲の一部で、それぞれきらめきを放ったりするのです。
そして、多彩な楽器使いにも驚きました。一つの楽器をいろいろな使い方で見せてくれました。管楽器の音色を敢えて出さずに、息を吹き込むだけで表現したり、ピアノの弦を道具で押えてみたり、はたまた、仕組みはよくわからなかったのですが、鉄琴の鍵盤と鍵盤をつないでいるコード?をバイオリンの弦のようなもので縦に引いて音を出したり...実に多彩でした。
余談ですが、吹き口がカール?しているフルート(たぶんフルート...)があるのですね。初めて見ました。
第一部の最後は「after all」でしたが、私には静かな希望が感じられる曲でしたし、第二部の最初の「Borelish」(ラベルの『ボレロ』のオリジナル編曲)は、とてもモダンでおしゃれなボレロでした。
どの曲も聴いて、観て、飽きることがありませんでしたし、後半の映画やドラマの作品がオーケストラとともに見事に盛り上がったことは、言うまでもありません。「ラスト・エンペラー」や「戦メリ」で大音量になったときは、バックステージにいることを忘れるくらいの響きでした。
坂本氏の音楽のみならず、シャイで謙虚な人柄にますます惹かれるようになった一夜でした(*^_^*)
す、すみません、また冗長になりました。私の主観的な、でも素朴な感想を書き連ねました。素人ならではの、坂本氏の音楽をあまり知らない人間ならではの、あまり先入観の入らない感想と大らかに考えていただき、読み流してください。最後までおつき合いくださり、ありがとうございましたm(_o_)m
ステキなレポートで、
すぐにでも聴きに行きたくなりましたよ
バックヤードの席にも座ってみたいな。
好き勝手なこと書いてしまい、的も外れてるかもしれないし、恥ずかしいけど、自分の記録、日記だからね。
それをステキなレポートと言ってくださり、面映いです(*^▽^*)
今回のシートは、ほんとにユニークな体験でした。演奏者側で聴ける、観られるというのは、滅多にない体験ですものね。
ピーチさんも、たまにはコンサート聴けるゆとりができるといいですね。でも、まずは今の目標に向かってがんばって~!