マイクロ・ナノデバイス 

デバイス・プロセス技術のコラボレーション 参考資料:S.M.Sze半導体デバイス

リソグラフィ技術

2007-07-02 00:27:16 | プロセス -Process-
リソグラフィとはマスクの幾何学的模様をウエハー上にに塗布した感光性物質(レジスト)に転写する工程のことである。リソはギリシャ語の石版画(Lithos)が名前の由来であり石版(リト)に印刷する(グラフィ)というのが語源。 このパターンを用いてエッチング、イオン注入、電極の形成、素子分離等が行われる。

露光法
リソグラフィ装置の大部分は紫外線(波長0.2~0.4um)を用いている。パターンは現在最先端のArF液浸の装置では50nm以下レベルのライン&スペースパターンが転写される。製造過程においてのゴミは許されず高度に清浄化したクリーンルームを用いて製造が行われる。特にマスクにゴミがついてしまうとゴミが回路に転写されることになるのでゴミ問題は深刻である。

クリーンルームの清浄度を示す値としてメーター単位とフィート単位がある。
ゴミとしてカウントされるのは0.5um以上の粒子数の対数(底数10)。クラス100というと1フィート(30.48cm)の立方体当たり100個の0.5um以上のゴミがあるということ。1m^3にすると3500個になる。通常リソグラフィでは他のプロセスよりも高い清浄度が求められる。

露光機の性能は
1.解像度 : 転写できる最小寸法
2.重ね合わせ精度 :パターンを重ね合わせておく時の精度
3.スループット  :1時間当たりにどの程度の枚数を処理できるか
で決まる。
露光法には大きく分けて2つある。
等倍転写法、投影法である。
等倍転写ではウエハーとマスクを接触させる密着法とわずかに離す近接法がある。
密着法では高解像度~1umだがゴミが問題になる。
近接法(10um~50umくらい離す)ではゴミ問題は解決されるがパターン端で解説が生じて解像度が落ちる。

近接法では転写できる最小線幅(CD:Critical Dimension)は
CD=√(λg)
λは露光光の波長、gはマスクウエハー間の距離とレジストの膜厚の和である。
解像度を上げるためにはλとgを小さくすればいよいがgがゴミの寸法より小さくなるとマスクが欠陥になる。



現在主流なのはマスクとウエハーを離した投影法である。
解像度を高めるためにはマスクの一部ずつを露光していく。現在では光源の光を制限して走査(スキャン)するスキャン露光が用いられている。
メリットとしてはレンズの大きさを変えずに露光領域を大きく出来ること。収差の小さい領域(中心)を選べること。スキャン方向の収差とバラツキが平均化されることが上げられる。
投影法での解像度は
lm=k×λ/NA、NA=n×sinθで与えられる。
λは波長、NAはレンズの開口比(明るさ)、nは屈折率、シータはレンズの入射角の1/2である。
kは露光の困難さを表す無次元数でk=パターンサイズ/(λ/NA)であらわされる。



解像度を上げるためには…
1.波長λを小さくする λは最新のArFだと193nm
2.NAを大きくする=
  n屈折率の大きい物質を使う
     最新装置では空気より屈折率の高い水をマスクーウエハ間に導入している。
  
3.2光束干渉を利用する
  斜め入射にて0次光と1次光のみを用いる(-1次光を用いない)
  l=λ/NA → =(λ/2)/NA
  

2光束干渉
 
焦点深度は像のボケが一定になるデフォーカスの範囲である。
  DOF=k×λ/(NA)^2 
 DOFの面からはNAを大きくするよりは波長を短くしていく方が有効であることが分かるので微細化に向けて主流となっているのは波長の短い光源を用いることである。

g線:436nm
h線:405nm
i線:365nm
KrF:248nm
ArF:193nm

可視光の波長は
380nm~780nm

現在の量産されているメモリの最小ラインスペース幅は50nm程度。

マスク

ICで用いられるのはレチクルと呼ばれる拡大マスクである。回路パターンのCADデータを電子ビームを用いて電子露光する。
マスクはリソグラフィの工程分の数が必要になる。ArF、KrFの露光システムでは4倍、5倍サイズのマスクを用いて縮小投影される。マスクの欠陥はICの不良率に直結する。良品率の定義は
Y≒e^(-DA) Dは単位面積当たりの欠陥数、Aはチップ面積 
となる。
従来のマスクに工夫して解像度を増強する方法が用いられている。
最も一般的なのは位相マスク(phase-shifting Mask:PSM)である。通常のマスクでは電界分布はすべての窓で同位相であり回折と解像度の限界から隣り合った窓から出た光同士が干渉し合い、窓の中間で連続してしまう。PSMでは隣り合った窓の片方の位相を反転させて光を完全に分離できる。
この手法ではマスクに位相シフト膜をつける必要がある。最近ではマスク材に半透明膜を用いて半波長全体的にずらすことにより同様な効果を得ることが出来、ハーフトーンマスクと呼ばれており、スループットが高いのが特徴である。



OPEとOPC

OPE(Optical Proximity Effect)とは光近接効果のことで微細化に伴い生じる問題である。投影レンズ径に対して相対的に回折角が大きい場合、回折光の一部しかウエハーに達しないのでパターンに対する忠実性が低くなる。
これを防ぐためにあらかじめマスクに対し補正パターンを仕込んでおくのがOPC(Optical Proximity Crrection)である。OPCではモデルを元にシミュレーションを行い望みのパターンが得られるようにマスクパターンを作成する。

フォトレジスト  
フォトレジストは照射光に感光する化合物でありポジ型とネガ型がある。
ポジ型では光の当たったところが抜ける、ネガ型はその逆で光の当たったところが残る。ポジ型レジストの原料は感光性物質、ベース樹脂、有機溶剤の3成分からなっている。露光前は感光性物質は現像液に溶けないが光が当たると変質して溶けるようになる。
ネガ型のレジストは感光性物質と結合したポリマーである。光のエネルギーによりポリマーと架橋反応を引き起こす。この架橋反応によってポリマーの分子量は大きくなり、現像液に溶けにくくなる。ネガ型レジストの欠点は現像時に現像液を吸収して膨れ上がってしまうことでありそのために解像度が落ちる。ポジ、ネガ型の感光曲線の例を示す。



露光しなくとも一部は溶け出してしまう。ある閾値Erにて完全に溶解する。もう一つのパラメータγはコントラスト比と呼ばれ
γ=[ln(Et/El)]^(-1)   Elはレジスト残がゼロになる露光量である
で定義される。これが大きいほどレジスト抜けが良いことになる。
ネガ型ではγはElとEtを入れ替えてあらわす。

KrF,ArFの露光では感度が悪いために長時間の露光でレンズが劣化し、スループットも悪化する。このため化学増幅レジスト(Chemical-amplified Resist、CAR)が用いられている。CARは光学-酸発生基/ポリマー樹脂/溶媒からなりKrF、ArFの光によく反応する。




パターン転写
ウエハーはレジストが感光しないために黄色光で照明したクリーンルームで処理される。レジストの密着性を良くするためにウエハー表面を親水性から疎水性にする。この処理には6-メチル2-シクロキサン(HMDS)が用いられる。この処理の後、ウエハーを回転させながら0.5~1umのレジスト膜をコートする。
続いて軽く加熱し(90から120Cで1,2min)溶剤を飛ばす。現像は現像液に浸すのみである。密着性を良くするために露光後に過熱する場合もある。


次世代露光

1.電子線リソ
 利点 ○高解像度、パターンが制御できる。
    ○焦点深度が大きい
    ○マスクなしでもウエハに直接、描画出来る
 欠点 10枚/hとスループットが低い

  マスク作りの主流
2.EUVリソ (λ=10~14nm)
 利点 スループット変わらず

 欠点 EUVの光束が狭いので全面スキャンが必要になる

  反射率を高めるために多層コーティングが必要。

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