チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

広州恒大の清算

2024-01-30 14:29:24 | インポート

 香港の高等法院は昨日、中国不動産取引額2位の広州恒大に対し清算を命令する判決を出した。負債総額は50兆円以上、債務超過額は20兆円規模とされている。

 広州恒大の資産の大半は本土側に在り、今後は中国共産党の意向次第となり清算が順調に進むかどうかは不透明だ。だが資産売却によって債権者に何割かでも返済されなければ、香港を窓口とし中国が海外から大量の資金調達を行って投資に廻す、と云う従来のビジネスモデルは破綻することになる。詐術以外に新たな投資家を集める術がなくなるからだ。

 中国共産党が恒大の資産売却を妨害すれば今後の資金調達が不可能になり、だからと云って実質的に投げ売りになる資産売却を許可すれば、更に不動産市場の価格暴落を引き起こす。つまり、どちらに転んでも中国の大規模な転落は避けようがない。更には広州恒大はまだ序の口に過ぎず、今後取引高1位の碧珪園や本命の地方融資平台の破綻処理が控えてもいる。形だけでも司法が機能している「らしき風景」を作り出しておきたいのだろうが、ここまで来れば何を選択しようと悪手になる。

 無法を旨とする中国共産党、確かに強権で破産宣言や資産整理をさせないことならできる。だが、それは負債の解消とは何の関係もない。前払い契約の物件は完成させ、必ず消費者に引き渡せその金は融資する、が共産党の不動産業者への指示だ。つまり完工させても企業への新規入金はゼロであり、個人から国に債権者が移動するに過ぎない。完工すべき前払い物件は2,000万件もあり、さしもの国家財務も大幅に悪化する。今後処理を要する不良債権は兆の単位でなく、京の単位になると概算されてもいる。課題の先送りの結果、共産党主導の野放図な借金は国家の財布でもどうにもならい規模にまで膨張している。負担は投資家と国民に押し付ける、他の何かになる可能性は極端に低い。

 中国の急成長は野放図な借金の賜物であり、担保は根拠不明な共産党の暗黙の保障と無誤謬神話だった。無いことにされるはずのその党と国家の大失敗の後、では一体何を担保とするのだろう。最早世界からの投資が中国に集まることはない。踏み倒すことが分かっている相手に誰も金は貸さない。

 如何に共産党が強権を振り回そうと、経済は自律的運動理論によって落ち着くべきところに向って市場が動作する。だれもそれを人為的には阻止できない。上海市場や香港市場の株も暴落を続けているが、売買停止をしようが、買い支えようが、企業の中長期的価値自体はどうにもならない。下手に強権を繰り出せば、市場は貯め込んだエネルギーで激烈な反撃をすることになる。市場経済を下部構造にし、とてつもない急成長をしてきた中国。何故にそれが可能であったのか、いくら経済音痴の習近平でも今それが理解できなければただの愚人だ。

 

 

                                        川口

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