チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

五か月後の真実

2011-08-24 04:08:44 | インポート

 先月27日、衆議院厚生労働委員会での児玉龍彦東大教授の参考人陳述には驚かれた方も多いと思う。福島のメルトダウン以降、その深刻さの広報も、対策も怠ってきた政府を厳しく指弾する内容だった。

 児玉氏の東大アイソトープ研究所の試算によれば、原子炉から放出された放射能の総量は広島型原爆の実に29・6個分。原爆のそれが1年で1000分の一に減るのに対し、原子炉からのものは十分の一にしか減らない。これが岩手の稲わら、静岡のお茶までも汚染しているのに、首都圏にはそれらしい警報すら流さなかった。本当に、これは許されてよい内容なのだろうか?

 長期にわたって浴びることになる放射線の危険性は実は深刻なものだ。20年後には疫学的データーが揃うのだろうが、土に定着した放射線はDNAを破壊し、20年後あたりにはがん多発が避けられない。二重らせん構造のDNAは放射線による破壊にも安定的だが、細胞分裂の際には一重となるため、放射線での剪断に弱くなる。つまり、胎児と成長期の子供だ。

 政府は何もしなかった・・・、そのことは長く記憶されるだろう。細胞分裂の活発な乳幼児、妊婦の退避指示は首都圏にまで及ぼすべきだったはず、そう思う。

 とてつもない量の16日の放射能の霧、21日の降雨、その首都圏を襲った危機について「できるだけ」屋内退避、以上のシリアスな警告をせず、メルトダウンを隠し、直ちに健康に影響はないを繰り返していた。正に科学的洞察にも責任感にも欠けた、最低の統治であった。

 避難地域には信じ難い高濃度汚染地区がある。そして、やっと1都21県の汚染状況調査が上空から始まった。少しずつ真実を国民が知ることになる。初期にメルトダウンを洞察し、その結果を予測し対策していた者はほんの少数だった。大多数は政府の発表を信じ、深刻な対処などしていなかった。

 食品の汚染調査もわざわざ時代遅れの非効率な密閉式カウンターを使わずとも、島津の半導体ビジュアル検査機であればコンベアーに乗せ、大量に個別連続の検査ができる。何も知らない者による、滅茶苦茶な対応と呆然自失。福島で起こったことは、そのような悲劇であった。

 あの日、何処にいて何をしていたのか、首都圏退避を決断できなかった若者にはそれを記憶いただき、しかるべき検診を受け続けてもらうしかない。ヨウ素は甲状腺に、セシウムは腸管と膀胱に蓄積する。蓄積する総量が問題であり、その日の放射能の霧そのものが何ミリシーベルトだったのかはさほど関係ない。留意願いたい。

 パンドラの箱は原爆29・6個分と云う、信じ難い量の汚物を日本中に撒き散らした、それが事実だ。取り返しのつかない事故と失政、真実と向き合わねばならない。

                           

                             川口

 

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ハイパー円高

2011-08-21 22:57:35 | インポート

  週末、一時、ドル円レートは75円台に突入した。日本の製造にとってはトドメになりかねない、過去最高値の更新だ。欧米の経済が再度大型の後退期に入るのではないか、との懸念が払拭できず、ズルズルと比較安全通貨の円やスイス・フラン、イギリス・ポンドの値が上がっている。

 なぜこんな日本の経済状態でとは思うが、なにせレートは相対的なもの。相手が更に悪ければ、やはり値は上がってしまう。

 100円を切ったらアウト、それが日本の中小製造の本音の力量だろう。100万円売ったはずが入金は75万円、生産性を多少改善しようがこれでは追いつけるはずもない。

 円の魅力を如何に減らせるか、そんな政策が矢継ぎ早に打ち出される必要があるが、官邸は最早幕引き気分が充満し、機能マヒ状態も甚だしい。とにかく早く本格的な新政権が立ち上がり、国債の日銀引き受けによって大量の円を印刷すべきだ。円には希少価値があり過ぎる。

 アメリカの債務不履行懸念以来、アメリカ企業は次々に大型のリストラ策に踏切った。不履行は回避できても、この先に財政出動で景気刺激する手段を当局がまったく持ち合わせていないことが、最後的に確認されたからだ。来年にかけ、巨大な消費国が萎縮への階段をまたも降り始めるようなことになれば、ことは穏やかでは済まない。

 リーマン以降たった2年で東北大震災、続いてハイパー円高。大半の企業では生き死にの掛かった最後の選択を迫られていることだろう。自らをグローバル化するしかないものの、体力を失ってからの海外は厳しいからだ。ではどうするのか、、、。各企業には知恵の絞りようもなくなったドル円レートが重い。

 資本政策を含めた巨大なスケールでの日本製造の再編が起こる、もうそれは避けていられない。動かないことのリスク、それは日増しに肥大する。

                                

                              川口

 

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海江田

2011-08-15 02:17:00 | インポート

 余りに日本的な、と表現してもよいだろう海江田経産大臣の国会での号泣。あれは一体何なのか、時間をおいてもわからない。辞めそうで辞めないのは菅総理と同じだ、と追及されてのことだ。確執があり、軽蔑する当の相手と同様とされ、動揺したとのことだが・・・。

 決断力不足も甚だしく、菅と刺し違える時宜は逸し続けた。最早政治家としても人としても落第点の水準だ。退陣が秒読みになった首相より早く辞めたい、と今更に発言するのは、正に空気の読めない子供大人だ

 任命権者に散々コケにされこれに愚痴やあてこすりで反撃する。誰もが辞めればよいのにと思うが、辞めない。菅にせよ海江田にせよ、その小粒ぶりは際だっている。

 共にまともに社会で正業に就いたことのない方々だが、その思考スタイルは良く似ている。まるで国家や歴史に対する責任感はなく、場末の居酒屋で飲みつぶれるサラリーマンにはほど近い。げにも恐ろしい日本の政治の実態だ。

 この奇怪な政治状況の後、後釜候補たちの顔も淋しい限り、と云うことになる。リーダ不在・・・、この国難の時に確固たる国家観は無論、まともな人生観や世界観すら語れない面々が国会にたむろする。

 海江田万里。マスコミに露出し、お茶の間のおばさま世界からのし上がった。市川房江というおばちゃまの総帥に取り入った菅と、実はよくマインドもスタイルも似ている。天敵のような間柄だが、近親憎悪ということだろう。

 市民派、と云う曖昧なスタンスであるなら、国家のリーダーに登り詰めようとは考えないことだ。先ずもって世界の中の日本をどうするのか、日本とは何であるのか、その明確な国家観が不在のままの政治は、かくも迷惑なものだ。

 来月下旬、国連での首脳スピーチに菅は意欲を持ち、オバマとの会談もセットするよう外務省に指示していたという。当然、オバマからは色よい返事は来なかった。ようやく終わっている首相、ということに気が付いたのかもしれない。

 国益に対するダメージには全く関心が無い市民派、歴史に名を残すとんでもない首相になったことだけは間違いない。今更海江田が辞めようが残ろうが、それにはどんな意味も力学も働かない。二人は全くの同レベルな故に、度々衝突したと云うことだ。

                         

                           川口

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菅の退陣

2011-08-09 23:08:58 | インポート

 基軸通貨は無いに等しくなった。ドルの信任が失墜したことで金が暴騰し、世界同時株安が止まらない。

 アメリカの債務限度額拡張は与野党協議がまとまったが、巨額な財政赤字が拡大するという事実には何ら変りはない。ドルとアメリカ国債の信認低下がもたらすものは世界的な信用不安。つまり、リーマンの時と本質的に同じだ。大きな破綻にならないように祈るしかない。

 

  どんな花道もない、それが菅の退陣風景になるだろう。献金問題に至っては世も末だ。既存組織に潜入して奪取する、そんな戦術を持つ北朝鮮系の工作員達に牛耳られた「市民の党」なるものに、6千万円もの資金を提供していた。これが日本の総理大臣なのだというから呆れる。

 70年代、革命を標榜する左翼諸党派の中ではマヌーバー(陰謀)が政治の常道、という認識があった。マヌーバーで力を発揮できない者は、彼らの組織の中で出世することなどあり得なかった。

 彼等自身の組織を巨大化することは不可能でも、大きな組織に潜入し幹部になって占拠してしまえば良い、それが彼らの戦術だった。足腰が弱く、手足のない民主党や旧社会党の議員達の中には、無償で選挙活動する彼等に絡め捕られる者は実に多かった。

 学生時代にある選挙事務所でバイトをしたことがある。その最中、それが紛れもない日本の現実であることを目撃した。候補者自身の党とは関係ない、新左翼諸党派の人間で選挙事務所は混雑していた。その実態を公安調査庁は見て見ぬ振り、という体たらくであった。

 菅がどの程度「市民の党」に関与しているのかは知らない。ただ、金額からすれば主要なスポンサーであることは容易に推定できる。日本人拉致に関与し、赤軍よど号事件犯の支援組織でもある「市民の党」、北朝鮮による日本政治の中枢奪取とコントロールというマヌーバーに、まんまと乗せられた間抜けなド素人、それが菅と云う人間像だ。

 菅は全く無能だった震災後対策ではなく、この北朝鮮との関係追及を嫌がって首相の座を退くだろう。それほど、政治家として出鱈目なことだからだ。

 この国の戦後は、実はとてもノー天気では居られない状況に常に置かれていた。未だにスパイ防止法さえないこの国では、労組、官僚、大学、党派、宗教団体、マスコミなど、至る所が朝鮮総連などによる潜入奪取の対象となった。日本の組織とは言えないような反日組織なら、国内に幾らでもある。

 居座りの菅は近く辞めるだろう。それは退陣3条件が整うからでも、外交が完全に停止し日本無視が当然になったからでも、他の何かの理由でもない。「市民の党」問題での追及を避けるため、それが理由だ。怪しげな「市民運動」によくよく気をつけねばならない。

                           

                                                                             川口

 

 

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アイデンティティー

2011-08-05 14:20:52 | インポート

  人の幸と不幸とを分かつ最大の要因は、自身の能力や器を客観的に見据えることができるのか否かである。目標が能力的に実現できるのであれば夢になるが、逆立ちしても出来ないものであれば、それは愚昧な妄想ということでしかないからだ。

 カタカナ職業や文士、芸術家の周辺には膨大な不幸が集積しているのは、つまりはこのためだ。職業がカッコ良いものでなければならない、と云うあたりから彼の客観的な自己評価は崩れ始める。

 不当に卑屈であったり、過大評価であったり、自分の器量を正しく把握するのは大変に難しい。だが、とどのつまりはそれ次第だ。

  自身こそが自分を不幸に追い込む原動力であり、充足に誘う導師でもある。得手とする土俵以外に上がったのでは到底勝ち目がなく、たとえ勝てたとしても心の安らぎには遠い。カッコが良かろうが悪かろうが、実力通りに評価され、自身の力で解決可能なテーマに囲まれているのであれば、それは至福の日々になるだろう。

 如何に地位を登り詰めようとも、不適なものは不適だ。それは落ち着かない自身の心が証明してしまう。その点、人には例外など無い。何が幸で、何が不幸なのか、その答えは世間の評価とは些かも関係せず、ただ自身の心の内だけが知る問題である。

 職業身分制度と云う他ないような価値体系が、日本の戦後文化を規定した。不似合だろうがなんだろうが、偏差値の高い大学をめざし、高級官僚や医者になることで世間の羨望の対象になれば、それで良かった。自己喪失と引き換えにはなるが、当たり前のように世間の評価する方向を選べば、そう大きな間違いがない、という信仰だ。バブル期の訳のわからないカタカナ職業志向も似たようなもの。

 この浅薄な思想を再生産することは許されないと思う。不幸の源泉ともいえる代物だからだ。生ける者の歓びと充足とは何によってもたらされるのか、今一度自身の心の内に問いかけるべきだ。今居る場所が自身の客観的な実力以上でも、以下でも幸福ではない。増してや、虚偽の自己を実現する人生は無意味だ。

 馬鹿なことを望まないことだ。やりたいことをやる、と云う価値観も怪しい。本当は、人にはやるべきことが全ての者に有り、それを背負うだけのことだ。ただひたすらに自分を凝視し、自分の上に自身を正置したとき、誰にも居るべき場所と運命が見える。そんなものだと思う。

 高下駄を穿いた上に背伸びしたら、見苦しい上に、続けることは不可能だ。

                        

                                                                        

                            川口

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