チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

吉村妃鞠のこと

2023-12-09 00:01:39 | インポート

 辻井伸行のような天才は暫くは日本に出ないと思っていたら、驚くべきことにバイオリンの演奏では吉村妃鞠と云う才能が花開いている。まだ12歳だが既に40を超える世界のコンクールで全て優勝し、11歳でアメリカの最難関音楽大学カーティス音楽院に合格して現在フィアデルフィアに居る。

 妃鞠の演奏は表現し難い。音楽の神が居るとすれば、それが妃鞠の体を借りているのだろう。到底子供の演奏とは思えない情感の表現力には引き込まれざるを得ない。なぜこんな才能が存在するのか意味不明だ。欲のない表現は形而上学の世界に近く、心と云うより魂を揺さぶられる。つまり、表現し難い問答無用の感動を呼ぶ。

 6才の時には既にオーケストラと協奏曲を演奏していたと云う。パガニーニもチャイコフスキーもビバルディーも完璧に弾きこなし、難解なバッハの無伴奏で聴衆を魅了できる。信じ難い。天才とは誰よりも努力する人、と云うことにはなるのだろうが1日に5,6時間、気が付けば更に数時間も練習することがあるらしい。更に驚異的なのは他の科目も優秀であり、ステージでは完璧な振る舞いでオーケストラをリードする。これを天才と云わなければ何と云えばいいのだろう。

 クラシックに縁遠い方も一度ユーチューブで妃鞠のバイオリンを聞いてみることをお勧めする。疑いもない天恵、美の形而上学を納得いただけると思う。それにしても驚くべき才能を次々に産む日本の不思議、そんなものと出会えるなら長生きも悪くない。馬鹿馬鹿しさに耐えることだけが人生、と云うわけでもなさそうだ。

 

 

                        川口

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三中全会

2023-12-08 02:18:50 | インポート

 中国共産党の最高位会議である三中全会、それが開かれる気配がなく明らかに異常事態だ。本来であれば10月に全ての中央委員とその候補を集めて開催されるべきものだった。理由は習近平の施政方針そのものの不在、取り分け現在の経済破綻状態に対して無策を晒すことになるのを避けていると思われる。

 改革開放の真逆の毛沢東主義への回帰。それは不動産バブルの崩壊、外資の逃避、大量の失業者、金融危機、へと必然的に墜落していくことになった。その打開策は、当然イデオロギー優先主義で中国を破壊した習近平自身の自己否定になる。独裁者のメンタリティーとは国を犠牲にしてでも自己を守ると云うものであり、自己否定の場になりかねない三中全会など開けないのだ。

 巷間云われる以上に中国経済は行き詰まっている。コロナ後の急回復、反動を期待した向きには気の毒な墜落ぶりである。この3QのGDPは公式発表でもゼロ成長、実態は明らかなマイナス成長になっている。反欧米、反日を掲げる毛沢東路線への回帰を云うのであれば、保護された国営企業のみで何ができるのかを試してみればいいだろう。中国の急成長は第一に外資が成し遂げたものだ。

 中国人富裕層の国外脱出と資本逃避が止まらない。中国を見切り、捨てているのは誰よりも中国人と云うことになる。外貨準備高も急速に低下し、大量の資金が海外に移転されている。その通貨の暴落阻止に米国国債の売却で元を買い支えている姿も明瞭だ。そもそも計画経済を標榜する共産主義独裁が市場経済の下部構造を制御する、そんな漫画のようなことが原理的にいつまでも継続できるはずがない。それこそ持続可能性がない。資産を持ち、賢明な国民ほどさっさと国を捨てていくことになる。

 中国の特色ある社会主義とは欧米や日本からの技術窃取によって成り立っていたに過ぎない。自力で創造する力など過去も現在も中国にはない。情報閉鎖とねじ曲がった愛国教育の成果とは個々人の創造能力の壊滅をしか意味しないからだ。自由な議論ができない研究室から何か斬新なものが飛び出すはずがない。今後もノーベル賞不毛の地で在り続けるだろう。

 三中全会の遅れは、待てば経済が好転するかもしれない、との淡い期待を経済音痴の共産党指導部が持っているからかもしれぬ。だが、この先は待てば待つほど破綻は深刻化する。未処理のままで巨大な不良債権を積み上げれば、それは社会から信用と云う言葉を奪い、市場取引の全てを委縮させていく。どうせ分からないだろうが、それが市場経済の原理原則と云うものだ。

 

 

                            川口

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地獄の中東

2023-11-27 16:38:31 | インポート

 イスラエル・ハマス戦争は4日間の休戦に入っている。240人とされる人質の内、ハマスが50人を解放し、イスラエルが収監中のパレスチナ人150名を解放する、との条件だと云う。

 ハマスはイスラエルと云う国家とユダヤ人をこの世から消し去ること、それだけを目的にしたテロ組織であり、そもそもが話し合いは不可能な組織だ。イスラエルも従ってハマスを完全殲滅することを目標に戦争を決意した。かように戦争は恐怖を土台にする。相互に相手の絶滅を望んでいるのであり、何らかの妥協点を求めるが故の軍事行動ではない。

 パレスチナの唯一の解決策は二国家共存であり、これを是とするオスロ合意まで漕ぎつけた過去もあった。だが、この貴重な合意は双方の過激派によって葬り去られ、どちらかの絶滅以外には落ち着く場所も無くなってしまった。オスロ合意の立役者たち、イスラエルのペレスは暗殺され、PLOのアラファトも既に他界した。

 余りに長い憎悪の積み重なりによって、逆に戦争が無ければ存在価値を失う人々や組織が多数生まれることになった。テロ組織の来歴とはそんなものだ。他に何をしてよいかもわからず、そもそも生産労働を知らない人々。究極の自己中とは、着地すべき肯定的世界が見いだせないままの成長を意味する。更には平和こそが収入の脅威と感じる組織、そんなものが相互に民衆を盾にして戦争を繰り広げている。

 最早パレスチナに平和は訪れない。ハマスやイランは、イスラムの敵であるはずの宗教否定を本旨とする共産主義者とも緊密に連携する。武器はほとんどがロシア製や北朝鮮製だ。欧米流の民主主義を共通の敵とし、その敵が同じであれば共に破壊を目指すものとしての連帯が可能らしい。イランはイスラム革命後に数十万人の共産主義者を処刑し、ロシア以下の共産主義者もアフガンやチェチェンなどで数百万規模でイスラム原理主義者を殺害している。つまりは戦争の為の仮初めの連携と云うわけだ。共通の敵が無くなれば互いに必ず殺し合う関係に戻るはず。これでは戦争の終わりなどない。それが中東と云う地獄の姿だ。

 イスラエル・ハマス戦争が停戦に至るのであれば、それは知恵ある解決策の故でなく、ただ戦争に疲れ切ったからであり、ひとまず休憩と云う質でしかない。ペレスやアラファトの偉大さを反芻せずにいられない

 

                           川口

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それからの香港

2023-11-10 15:39:44 | インポート

 香港の自由が圧殺され、雨傘運動も時代革命も姿を消した。それからの香港、中国にとっては長年金の卵を産む鶏であった場所の本土化が意味するものは、何の意味もない凡庸な港に成り下がることだった。外資は自由な金融・貿易センターである香港に事務所を置き、本土の広東省に工場を開設し活動する、それが当たり前のパターンであった。ある日突然意味不明な国内法を作ってはとんでもない規制を掛ける中国、そんな本土に本拠地を置くのは余りにリスクが高かったためだ。

 安く豊富な労働力は世界にデフレをばら撒くことになる、それが中国の改革開放が周辺国に与えるものだった。コスト的に対抗するには同じ中国の労働力を活用するしかない、そんな強迫感が圧倒的な速度で世界の工場にと中国を変貌させた。膨大な外資による投資資金の流入、だがそれも香港と云う自由な窓口があったからこそである。今後世界は中国撤退を急速に進めることになる、当たり前にすぎる未来だ。

 2020年は香港で新規株式公開により資金調達された額は520億US$だったが今年はまだ35億US$にすぎない。1日の証券取引高は40%も減少している。資本市場のセンターとしての香港の命運が尽きていることの証拠だ。今後中国に進出ラッシュが起こる可能性はまったくない。その理由が一片も見当たらない。

 大企業の追っかけをせざるを得なかった日本の中小企業、馬鹿げた贖罪意識も手伝って3万もの企業が中国に進出した。新規の進出は止まったものの、呆れるような数だ。目立たぬように引き揚げる、今や全ての進出企業経営者にとって重いテーマだろう。ロシアでは撤退企業の資産は全て没収された。強盗の庭先を借りるビジネスの運命だ。

 台湾有事では人質も同然になるはずの出張者の不安、文革期のような極端な愛国教育、全体主義教育が始まった共産中国では杞憂とは云えない。駐在の社命が降りれば退社を希望する社員が増えていると云う。香港の自由の圧殺、それが意味すると予測されたものは今確実に顕在化している。

 

 

                             川口

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李克強の死

2023-10-30 15:50:45 | インポート

 中国の元首相・李克強の突然の死によって様々に憶測が飛ぶことになった。果たして本当に心臓病だったのかに始まり、陰謀説がまことしやかに流れている。李氏の故郷や上海では所縁の場所に膨大な花が手向けられるなどし、庶民の大きな人気を思わせた。だが、何故かこの動きは突然に終息している。国営報道機関もぱったりと死去のニュースを扱わなくなった。何らかの習近平の意思が弔問に影響していることは疑いもない。

 李は経済通の秀才で学識に富む現実主義者だった。一方の習近平は文化大革命によって高等教育を受ける機会を逃し、紅二代の特権の故に党の権力階段を上がって来た。こんな二人が息の合った関係になるはずもなく、常に厳しい権力闘争が繰り返されてきた。習近平が最早中国からは貧困が無くなったと云えば、翌週には李が中国は未だに6億人が貧困層にある、と反論した。無学な独裁者にとってこの経済通からの反撃は妄想対現実、イデオロギー対実質、独裁対民主の対決として描かれる、との恐怖があったろう。その臆病な独裁者の劣等感がことの本質であり、故に理は常に李克強にあると云う世論を極端に恐れていたはずだ。

 中国の経済は習の民間より国営企業を優遇する、民間は共産党の指導下に活動する、との大方針の下に壊滅的な停滞期に突入している。土地や企業などの生産手段は国家が所有する、というマルクス宗教の単純な教条しか知らず、無教養なだけの習近平の長期政権、彼に市場経済など制御できるはずもない。ご自慢の一帯一路すら誰の目にも破綻が見えており、債務の罠の裏側で、回収できない不良債権が中国側にも積み上がる危機的な構図だ。縮小する成長率の下で既にその絵に限界が来ており、地方政府や民間と合わせた不良債権は1京円を超えると観測される破滅的な内容だ。さしもの中国経済もこれだけ愚策が続けば、一気に破綻に舵を切ることになる。所詮は利得の欲をばら撒いた一帯一路、金のない中国にはいずれ誰もが背を向けることになるだろう。

 共産党の本質を目くらましする為には極めて重要だったはずの香港の自由を圧殺した愚策、自閉の習近平の唯一の窓を自ら閉じてしまった。彼の無学無見識はゼロ・コロナや核汚染水ヒステリーで明らか、まるで科学と云う言葉を知らない幼児の判断のようだ。中国の敵は外部ではなく、その頭目である。ロシアにとっての最悪の敵がプーチンであるのと同様。

 

 

                              川口

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タイ人の人質

2023-10-27 16:09:02 | インポート

 今回のイスラエルーハマス戦争ではタイ人の移民労働者が33名もハマスに殺され、54人が人質としてガザに誘拐された。人質は全体で220人とされており、内外国人は25ヶ国の135名、タイ人比率の高さには驚かされる。ハマスは国籍に一切関係なく虐殺し誘拐している。正にテロ組織だ。

 イスラエルに居住するタイ人の移民労働者は30,000人とされ、この事態で帰国する者も多いが、一部では雇用主がパスポートを没収し、移動を妨害するケースがあると云う。イスラエルに限らず、中東産油国など豊かな国では労働を移民に頼っているところが多く、移民の帰国は事業の存続問題に直結する。

 タイのセター首相はイスラエルに対しタイ人の安全な帰国支援を要請しているが、このテロ被害の規模はもっと国際社会に喧伝すべき内容だ。殺され誘拐された人数は余りに多く、仮に日本であればとてつもない騒ぎになっていることだろう。いくら温厚なタイ人でも静かにしていて良い場合ではない。ハマスが如何にイスラエルの非道な占領政策を攻撃しテロの理由にしようと、実際に殺し誘拐しているのは無辜の民衆どころか関係ない外国人である。

 イスラエルはハマス殲滅の地上戦開始を遅延させているが、先ずもってハマスにこの人質解放をさせねばならない。占領政策があったから今日がある、ガザは子供が多数死傷した、といったハマスの宣伝戦に時間を与えるのが軍事的には如何にマイナスでも、ここはイスラエルに自重して欲しい場面だ。テロはあくまでもテロ、壊滅の機会は受けに回らぬ限りいつかは来る。先ずは人質を手放させる、それが優先することはやむを得ない。タイ人達の無事を祈る。

 

                           

                                  川口

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ヒズボラ

2023-10-19 17:54:23 | インポート

 ガザが焦点化しているが、世界にとって危険な領域はレバノン国境だ。レバノンの武装組織ヒズボラとイスラエルとの衝突になればガザの比ではない。ヒズボラはイランの支援を受けるハマスと異なり、イランの革命防衛隊直轄と云っても良く、イランが供給したミサイル13万発を保有しているとされる。イスラエル全体を廃墟にすることが可能であり、そうなればアメリカも参戦しない訳がない。つまり、イスラエルーレバノン国境はイランとアメリカとの直接の国境に等しい意味合いを持つ。

 現在、ヒズボラとイスラエルの小競り合いは次第にエスカレートしつつあり、イスラエルは国境付近の町に全員避難を勧告した。かなり怪しい気配だ。ガザの病院での爆発で500人が死亡したとされるが、どうやら開示された証拠ではハマスの共闘者であるイスラム聖戦が発射したミサイルが誤って墜落した可能性が高い。何より平坦な駐車場に落ちたのに爆弾に特有の漏斗痕が見当たらない。不発弾などの燃料爆発だった証拠だ。

 だがテロ組織はこれを格好の情報戦のネタとし、イスラエルの爆撃による住民虐殺、とのハマスの宣伝によりイスラム世界には反イスラエルの憎悪が拡大している。弱者、被害者のポジションを取れば情報戦では有利になる。かつての日本赤軍のように軽佻浮薄、自己顕示欲の故に大量殺人に至る輩を集めることも、被害者ポジションからならば可能になる。だが今回の事実はハマスによる民間人へのテロ、拉致誘拐であり、自分たちによる誤爆である。他の何かではない。

 明日にもレバノン国境が本格的な戦場になる可能性はある。狂信的なイスラム原理主義を掲げ、徹底した反米洗脳を受けた強大なテロ宗教組織ヒズボラ、これにブレーキを掛けられる国は今やいない。中東を破壊し尽くすだけなら彼等にもできる。ただし破壊後の責任ある統治には何のプランもない、それがテロ組織、日本を含む過激派の際立った特徴だ。無論イスラエルは勝ってもガザを占領統治する気はまったくなく、PLOもエジプトも武装テロ組織が乱立する巣窟などは管理する気がない。ハマスやヒズボラは統治能力などないテロ組織だ。つまりアフガニスタン並みの失敗地区が極貧の200万人と共に廃墟として残り、誰も統治の責任を果たそうとはしない。それがこの戦争の結果になる。戦略目的の無い憎しみの戦争、そんなガザに勝者があるはずもない。

 イスラエルとハマス双方の非道が積み重なった地域での戦火、そして一方ではウクライナ戦争の関心が低下し、世界の非難から逃れられるプーチン。更にはこの事態で中東産油国のルートは揺らぎ、一気に石油価格が暴騰、瀕死のロシア経済にカンフル剤が入ることになる。プーチンが最大の受益者になることは確実だ。憎悪が渦巻く世界ならば邪悪が入り込む隙間なら幾らでもある。ハマスでも足りなければヒズボラとイランを煽り立てる、そんなもう一つのロシア主導の戦争になる蓋然性は極めて高い。

 

                              

                                  川口

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燎原の火

2023-10-16 14:02:31 | インポート

 イスラエル対ハマスの戦争、イスラエルによるガザ本格侵攻が目前とされている。始まれば大きな人道危機は避けられず、その回避策も思いつくものがない。ハマスは国家ではなく、国家対国家の枠組みの停戦協議もあり得ないことになる。そもそもハマスの指導部はカタールやイランの安全地帯に居てガザの人道危機には無関心だ。また後ろ盾のイランは、ガザ侵攻となればイランの参戦もあり得る、と早々に欧米の恫喝を始めている。イランの背後には更にロシアが在り、ウクライナとの2正面作戦となれば欧米の圧力を分散でき、プーチンの顔色は良くなっているはず。

 朝鮮半島や台湾海峡を含め更に各所で発火すればアメリカは手も足も出なくなる。ロシア、イラン、中国、北朝鮮の枢軸にとってイスラエルでの戦乱は望ましいものであり、事態を本気で収める意思などはない。これが始まりかもしれない。世界の秩序は驚くような速度で溶解を始めており、三次世界大戦も空想ごとではなくなっている。中東の戦争は剥き出しの憎しみが衝突し、蓄積した場所だ。唖然とするような残虐行為、どんな国際法も守る気のないテロ組織がガザから世界に拡散すれば発火の火種は大火になりかねず、封鎖領域での殲滅以外に選択肢はあり得ない。ハマスの流入をエジプトを始めとするアラブ世界ですら拒否している。

 ファタファはハマスはパレスチナを代表していないと言明し、民間人の南部退避の人道廻廊もハマスによって攻撃されている。イスラエル対パレスチナではなく、テロ対イスラエルの構図であることはあらゆる角度で検証が可能だ。ヘイトによる戦乱、侵攻が始まれば事態は何処で止まるのか、今回ばかりは予測不能だ。

 

 

                         川口

 

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ハマスの大義?

2023-10-10 16:21:12 | インポート

 ハマスの根拠地であるガザ地区は東京の60%程度の面積にパレスチナ人220万人が居住している。イスラエルはその地区の制圧に向け30万人の予備役を招集、本格的なテロへの報復が始まるのはこれから、と云うことになる。ハマスの戦闘員だけをターゲットにする、などと云うことはこの面積と人口密度、反攻の大戦力を前提にすれば不可能なことだ。更に多大な民間の出血が避けられそうもない。歴史を紀元前にまで遡れば、どちらがどうなどと軽々に云えるものではなく、歴史を云う都度ただ悲劇が繰り返されることになる。何が正義かを歴史を絡めて政治テーマにするのは、余りに危険なスタンスになる理由だ。

 イスラエル軍はガザの全面封鎖を実施する。水、電力、食料などガザの基本的なインフラはイスラエルからの供給であり、雇用の大半もイスラエルが提供している。ガザにとって封鎖が何を意味するのかは自明だ。今ですら80%の市民が国連などの支援によって支えられている地域だ。ハマスは220万人の民衆を道ずれにすることを厭わなかった。その時点でパレスチナの大義を云うことを控えるべきだ。大義なるものでなぜパレスチナが救われるのか、論理破綻が著しい。

 ハマスがガザに連れ去った人質の中には11人のアメリカ人も含まれる。日本とは異なり、アメリカは拉致されたままの自国民を見捨てると云うことはしない。シールズやグリンベレーなど特殊部隊を駆使して戦場に参加し、救出に全力を挙げることになる。そこから先の展開でイランとアメリカの直接的な衝突が起これば中東全体に戦火は拡大する。第三次世界大戦は目と鼻の先に近接している状態、そのことは認識しておくべきだろう。

 アラブの盟主サウジアラビアとイスラエルとの国交回復は目前だった。その和平プロセスが進めば、過激が売りのハマスは主要な後援者を失う。和平こそがハマスの存立を脅かす敵なのだ。自暴自棄の無差別攻撃を開始した主要な動機はそんなところだろう。

 そんなハマスはパレスチナ人を代表する勢力ではなく、ガザでも大規模な反ハマスのデモが起きるが、それを恐怖政治によって押さえ込んできた。行政は西岸の多数派のファタハが責任を負っており、ハマスと対立的だ。ハマスは統治意思のない、単なる無責任なテロ集団であることをパレスチナ人自身が良く知っている。日本のマスコミはパレスチナには同情的だ。だが、それとハマスのテロとはまったく次元が異なる話だ。そこを混同すれば、日本は世界から孤立することになる。テロは何処まで行ってもテロだから。

 

 

                             川口

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パンドラの箱

2023-10-09 21:12:58 | インポート

 ハマスのイスラエル攻撃によって、ウクライナ支援に集中できていた欧米の対処は不透明さが増すことになる。長引く消耗戦は膨大な弾薬を必要とし、当事国以外でも支援備蓄品に不足が目立っている。各国の選挙でも巨額な支援の財政負担に対する疑問が野党などから提起され、支援疲れが次第に顕在化している最中のことだ。弾薬の世界的不足は、中東は無論、朝鮮半島、台湾海峡での備えを無視し、全てをウクライナに注ぎ込むことなどできない、そんな現在の世界の不安定な事情を示している。

 兵器・兵員・弾薬の枯渇はロシアも同様であり、北朝鮮とイランのテロ支援国家を頼りにするしかない。中東でハマスが第二戦線を開けば世界の意識はウクライナを離れ、北朝鮮からの武器流入も目立たなくなる。一方の欧米はハマスにイランの影が濃厚であれば、テロの封じ込めのためには軍事資源を投入せざるを得なくなる。更には台湾から世界の目が逸れるのは間違いなく、経済が瓦解中の中国にとっては外患転嫁の絶好の機会が与えられることになる。独裁主義国家群にとって、ウクライナ以外で第二戦線が開かれるのは悪い話ではない理由が沢山ある。

 ハマスは700人を超えるイスラエル人を既に殺害し、12名のタイ人を始め、アメリカ人、中国人などを殺害している。またドイツ人を含む民間人150名以上をガザに拉致し人質にした。イスラエルには2,500人の日本人も居住しているが、今日も激しい戦闘が続いている。イスラエルは全土に戒厳令を布告し、30万人の予備役を招集した。意味することは、狭い戦域の紛争で収まらないこと、背後に様々な戦略意図を持った国々が関与する中東の戦争であること、今や仲介の力を持った大国が見当たらないこと、それらのことを覚悟せねばならない。開けてはならないパンドラの箱をハマスが開けた。

 

 

                            川口

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