8日、ウクライナでは驚くべき戦闘があった。東部ドネツ川で渡河作戦を行っていたロシア軍をウクライナ軍が砲爆撃、1個BTG(戦術大隊)を全滅させた。指揮官がいないのか知能が無いのかは分からないが、失敗を重ねても同じパターンで9回も渡河を試み、結果全滅したと云う。戦車など70台、兵員では1,000人規模を一気に失った。ロシア軍の士気の低さと時代遅れの兵器や戦術は非常識なレベルにあり、この為に人員の損耗は急速に進んでいる。いずれ命令拒否や逃亡で前線が崩壊するだろう。
ロシアは守備隊形に切り替え長期戦を目指す気配もあるが、それもおそらく失敗する。今後更に最新鋭の兵器を受け取るウクライナ軍、特にアメリカのM777榴弾砲はエクスカリバー誘導砲弾を発射でき、GPS誘導で30キロ先の目標に誤差2メートルで着弾する。塹壕戦に持ち込むことすらもできない。つまり、欧米の新鋭兵器に対抗する力は最初からロシアにはない、その客観的自己評価能力に欠けている奇妙な軍だ。
ロシアが敗走するのは時間の問題だが、プーチンの戦争がそれで終わることもない。敗勢になれば戦術核を使う可能性もゼロではないし、年単位で立て直しの時間を稼ぎ、再度キーウを狙う作戦もあり得る。人命を何とも思わぬ共産主義と歪んだロシア正教民族主義とが結びついた侵略への執念、それは存在する限り周辺国を脅かし続ける質にある。
民間人を狙った砲爆撃に加え、ロシア軍はウクライナから奪った膨大な穀物を海外で売り捌くべく、船でシリアに積み出してもいる。正に強盗国家だ。各国は船の入港を拒否しているがシリア、ベラルーシ、中国などは略奪品処分に加担する可能性が十分にある。いずれにせよウクライナの穀物が正常に流通しなければ、中東やアフリカでは大規模な飢饉の可能性が濃厚になる。
フィンランドとスゥェ-デンはNATO参加を決めた。ロシアの隣国であれば当然の判断だろう。ロシアは早速に電力とガス供給を止めると宣言した。各国をエネルギーと食糧で依存させておき、戦時にはそれを武器に敵対を牽制する、長年狙っていた戦略が実行されている。その意味で戦争はヨーロッパ全域に波及した。ロシアは北方領土の守備隊すらウクライナに移動させ、ヨーロッパ戦線の瓦解阻止に必死となっている。
東部戦線で督戦中にウクライナ軍の砲撃により再起不能の負傷説が出たゲラシモフ参謀総長、ロシア軍にとって最大行事になる9日の戦勝記念日には姿を見せなかった。つまり、負傷が事実であるか敗勢の責任を取らされ逮捕されたか、いずれかの可能性が高い。ロシアの追い詰められ方が相当のレベルに至っている証拠だろう。核の脅しを使う無頼、追い詰められる強盗国家ロシア。継戦能力を奪う大打撃を東部戦線で与えて停戦協議に引っ張り出すこと、戦争の止め方が他に何もない。
川口