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能登半島地震、志賀原発は大丈夫だった?中島岳志(政治学者、東京工業大学教授)

2024-02-01 10:00:00 | 中島岳志

1号機原子炉建屋の真下には、断層があることが分かっていました。

活断層かどうか、議論されてきました。

昨年の春、活断層ではないのではないかとみなされ、再稼働の議論がなされてきました。

その断層が動いてしまったというのが、専門家の見方です。

それはこれまで想定されてきませんでした。

想定外のことが起きて、大きな被害が出てしまい、立地的に不適切だったのではないかということが問題になっています。

今回の地震では、変圧器の配電が壊れて油が漏出したことがニュースになっていました。

そして、外部電力の一部消失が起きました。

これは実は大変な事態です。

なぜかというと、3.11の福島原発事故の原因は外部電力の消失だったからです。

このときは非常用の電源も水没してしまっていて、全て電源がなくなってしまって、そして、事故が起きました。

今回、幸いだったのは、電力の一部は消失したけど、すべて消失しなかったこと。

そして、3.11を受けて志賀原発は稼働を長期停止中であった、ということでした。

原発が動いていたら、ミッションが非常に多くなります。

止めるためには、色々な電力がいりますし、さらなる事故が重なるリスクがあります。

幸いにも今回、そういう作業をする必要がありませんでした。

停止中だったから大丈夫かというとそういうわけではなくて、使用済みの核燃料をずっと冷やし続ける必要があるるので、停止中でも電力は必要です。

外部電力がすべて失われていたら大変なことになっていました。

しかしながら、一時的に冷却ポンプが停止したという報道もされています。

さらに、使用済み核燃料プールの水が溢れたということも報道されています。

放射能漏れがやはりあったんじゃないのか、ということが気になります。

放射能漏れは何によって計測されているのかというと、モニタリングポストというのがあって、原発の外にいくつかずーっと配置がされていて常に放射能を計測しているのですが、これが地震で壊れてしまっているんですね。

ですから、原発の周囲の放射能の状況を今回計測できていないという実態があります。

この数値は非常に重要で、住民が放射能から避難する必要はあるのか、どの方向に避難するべきなのかといったことを判断するために一番重要な数値となるのですが、モニタリングポストがほとんど全て機能していないということがわかっています。

3.11のときもモニタリングポストが破壊され、放射能の状況が分からなかったため、放射能の高い地域に避難して多くの線量を被ばくしてしまったという事態も起きてしまい、それは教訓となっていたわけですが、それが活かされていないという結果となってしまいました。

なので、今回、本当に言えることは、停止中でよかった、再稼働していなくてよかった、ということです。

日本海側の津波はあっという間に到達します。

我が国は日本海側にずらーっと原発が並んでいますが、はたしてこれが政策としてよいのか議論されるべきだと思います。

昨年11月29日経団連は志賀原発を視察し、「一刻も早く再稼働ができるよう心から願っている」とコメントしています。

これに従って再稼働していなくてよかったなと思うわけです。

 

保守の政治家は原発賛成の方がとても多いです。

わたしは保守は非常に重要だという立場をとっているのですが、「中島さんは保守なのになんで原発反対なんですか?」と聞かれます。

わたしは、この「なのに」がおかしいと思っていて、保守だからこそ原発に反対だというのがわたしの考えです。

保守思想の起源はフランス革命でした。

フランス革命に反対した思想家たちの間から、保守思想は生まれてきました。

代表的なのは、イギリスのエドマンドバーク(フランス革命についての省察)という人でした。

彼は、フランス革命をしている人たちの人間観はおかしいのでは?と考えました。

エリートの人たちが描いた革命の青写真、これに基づいて一気に世の中を改造し革命を行えば、世の中は進歩して素晴らしい世界をみんなで作ることができるという設計主義・進歩主義をとっていたのが、フランス革命だったわけです。

どれだけ頭がよくたって、人間には限界があるんだから間違えるものだし、完全に全てを認識することは不可能です。

一部の人間がこれが正しいんだ!と声高に叫んでいる理論に依拠するのはよくありません。

長年の間、無名の人たちがずーっと形成してきた、歴史の風雪に耐えて残ってきたような経験値とか、良識とか、それが形に残ったものが伝統や慣習です。

それらを大事にします。

しかしながら世の中は変化していくものなので、伝統や慣習を大事にしながらも徐々に徐々にそれらに手を加えていく必要があります。

グラジュアルな改革、これが保守の本来の立場であります。

わたしは何かを主張します、でもそれは間違っているかもしれない、という人間に対する懐疑的な立場ですね。

自分は間違っているかもしれないということを自覚しながら進めていく。

他の人の意見を聞いて、あぁなるほどと思えば合意形成をしていくのが保守政治なので、一定のリベラルな態度をとる、というのが保守の王道のありかたでした。

ですから、100%安全な人工物などない、とするのが保守の考え方になります。

人間が作ったものにはやっぱりどこかに誤謬というものが含まれているので、どこかが壊れたり事故が起きたりするのは当然あり得るというふうにまずは考えるわけです。

なので、保守はそういうリスクとどのように付き合っていくかということを考えます。

で、原発のリスクですが、原発にもメリットはありますが、ひとたび事故を起こすととんでもない被害を出してしまうわけです。

3.11は大きな被害を出しましたが、当時の自民党の中核を担っていた人たちのお話を聞いてみると、東日本全体が住めなくなるような危機がありえたというような話が出てきてます。

そうなると、やはり原発というのはリスクがあまりにも大きすぎるわけです。

保守を大事にするがゆえに、わたしは、原発については慎重にならざるをえないわけです。

 

 



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