燈子の部屋

さまざまなことをシリアスかつコミカルかつエッセイ風に(?)綴る独り言的日記サイトです

二度目の入院

2015-04-28 18:29:35 | 介護
 昨日、母を、概ね無事に、入院させることができた。

 土日に何も言わずにいたのが功を奏したのか、わりとすんなり外出してくれた。
 進行は、ほぼシミュレーションの通り。
 ただ、ところどころに生じる待ち時間には、神経を擦り減らした。
 どうか母の気が変わりませんようにと、そればかり念じていた。

 撮ったCT画像は、ディスクに記録されていた。
 プリントされたものを受け取ると思っていた私は、いつの間にかアナクロに陥っている。
 私もスキャンしてもらえばよかったかもしれない。

 CT画像を見ると、海馬、側頭葉、前頭葉に少し委縮があるが、予想していたほどひどくはなかった。
 だが、認知症の検査を行うと、母は、引き算はなんとかできたものの、当日日付はついにわからず。
 壁に貼ってある大きな一年カレンダーを見ても答えは出なかった。
 また、三つの無関係な単語を覚え、あとで思い出して答えるという問題でも、一つも回答できなかった。
 つまり母は、軽度の認知症でもあることが判明した。

 入院して物忘れを治療しましょう、という話になると、母は猛然と反対し、マシンガントークが炸裂。
 精神保健指定医であるK先生を相手に「人権侵害で裁判を起こしますよ!」と息巻く。
 そんな言いがかりには慣れっこなのだろう、K先生は淡々と「医療保護入院に際してのお知らせ」を読み上げる。
 不謹慎だが、なんとなく、刑事ドラマの容疑者逮捕シーンを連想した。

 読み上げが終わると、待機していた介護士たちが診察室に入ってきた。
 母は「触らないでよ! 自分で歩けるわ」と言い、その人たちとともに病室のほうへと移動して行った。
 その場で鎮静剤を打つような事態にならなくてよかった。
 あんな姿はもう二度と見たくない。

 入院手続きを済ませ、しばらく待合室でボーっとしていると、先程の介護士の一人が通りかかった。
 聞いてみると、もう病室に行ってもよさそうだったので、そうすることにした。

 階段を上って目的階のインターホンを鳴らすと、聞き慣れた開錠音がした。
 看護室で母の持ち物を仕分けしていると、もうじき会議が始まるので先に話を、とK先生。
 母は、やはり抵抗したようで、「私は上杉謙信だ! 天罰が下るぞ!」などと言ったらしい。
 これにはさすがに驚いた。
 ご先祖様は米沢藩の武士だったと聞いているけれど、成代わり発言をしたことは今までになかったはず。

 いや、そういえば……
 夜中に、まるで男のような、妙に低い声で雑言を発していたことがあったな……
 あれは、謙信になりきっていたのか……(愕然)

 帰り際、母の姿をドアの窓越しに見た。
 ベッドに横たわって膝を立てていたが、お腹の辺りは、腹巻のような幅広い拘束帯で固定されていた。

 やむをえない、と思う。
 ああでもしなければ、互いに傷が増えるだけだろうから。
 落ち着いたら、外してもらえるだろう。

 今は、母の日に笑顔が見られることを願う。


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