母に留守を任せる

　海外旅行は隔年にするはずが、今週、二泊三日で済州島に行ってきた。
　夫の「やっぱり年に一度は行きたいなあ」というしみじみとした口ぶりに、大いに賛同したのだ。
　そんなわけで、夫の仕事（と私の体調）の都合により、休暇の日程が先に決まったのだが──。

　今月初め、ショートステイ先を片っ端から当たってみたが、どこも空いていなかった。
　三か月前から予約開始という施設もあるくらいだから、これは当然といえば当然である。
　せめてデイケアだけでも……と聞いてみたが、原則として継続利用が前提とのこと。
　その上、予約で一杯だったり、配車の都合がつかなかったりで、こちらもダメ。

　うわあ、どうしよう……！

　一瞬パニックになりかけた。
　が、落ち着いてよく考えると、母は要介護２とはいえ、身の回りのことは一通りできる。
　我が家という新しい環境に慣れ、力仕事や高所の物を取る時以外、介助をほとんど必要としない。
　薬の自己管理は万全だし、血圧は低めで安定している。
　唯一心配なのは、バスルームでの転倒だが、夫が泥酔して転ぶ確率のほうが高そうなくらい。
　火の用心以外、特に憂慮すべきことはなく、火気厳禁にすれば安心だ。
　そうすると、問題は食事の支度だけとなる。

　母は大のパン党なので、朝食と昼食には各種パンとお惣菜を多めに用意しておくことにした。
　夕食は、民間のお弁当宅配サービスを利用することに。
　必要なのは三日分だが、五日単位での注文なのは仕方がない。
　自治体にも宅配サービスがあるけれど、こちらは水曜の配達がないのでやめた。
　飲料については、ペットボトルは開けにくい場合があるので、紙パックにした。
　これで食事には困らないだろう。
　韓国には時差がないので、電話で安否を確かめるのも容易だ。

　冷静に考えれば、そう、何も慌てることはなかったのである。
　不安というものは、リスクを正確に捉えていない場合に増大する。
　落ち着け！　私！