人付き合い

英国作家アガサ・クリスティーの作品に、
「ミス・マープル物」といわれるシリーズがある。
ミス・マープルは、言うなればおばあちゃんのイデアみたいな人で、
バラを栽培し、編物をしながら噂話に花を咲かせる平和な日々を送っている。
だが、猫のように好奇心旺盛で、いざという時には行動力も発揮する。
彼女の一番の強みは、その驚異的なプロファイリング能力にある。
事件に登場する人物たちを即座に分類し、犯人を推理するのだ。
表面上は意外な感のある犯人も、ミス・マープルの頭の中では、
これ以上ないほどはっきりと犯人であることを示しているらしい。

私も日常生活で「ああ、この人は誰々に似ているなあ」と思うことがある。
これはプロファイリングではなく、カテゴライジングというのだろうけれど。
最初は、その人の持つ雰囲気と、わずかに交わした会話からそう思うのだが、
親しくなるにつれてますます「似ているなあ」と思ったりする。
もちろん「それほど似てないな」と思う時もあるのだが、自分が歳を取るにつれて、
最初に感じた印象がだいたいその通りであることが多くなってきた（ような気がする）。

ある程度推測できると、人付き合いはかなり楽になる。
もっとも、所詮は「似ている」だけであって「そっくり」ではないのだけど。

　*　*　*

時折、不安に思うのだが、今のこどもたちは、
リアルな人付き合いができているのだろうか？

ネットやケータイで濃すぎるほどのメッセージのやり取りはあると思う。
でも、そこで交わされる会話は、あくまでネットやケータイ特有の言葉だ。
テレビ電話といえども、雰囲気や気配や間合いといった細やかなものまでは
伝えてくれないのでは？（使ったことがないのであくまで憶測だけれど）
それに何より、付き合う相手の年代や性向が限られてしまうように思う。

小さいうちから様々な年代の様々な人――つまり、多様な考え方――と
数多く接することが大切だと思うのだが、今時は難しいだろうか。

家業がお店だったりすると、自然と人付き合いは多くなると思うけれど、
サラリーマン家庭では、ともすれば学校と塾だけになってしまうだろう。
習い事やボランティア活動など、もっと多様な人たちと交流する機会を
持たせてあげたいなあと思う。

当のこどもたちはどう思っているかな？


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