Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

ある中国人の投稿

2005-04-18 17:17:43 | 国際
中国の反日デモは極めて憂慮すべき事態に陥った。

長年対中外交を導いてきたチャイナスクールの力が後退し、我国外務省も中国政府に対し、初めて強い姿勢で臨む外交に転じたかに見える。しかしながら、それで中国側が易々と弱腰に転ずるわけがなかろう。これからは鋭い対立が続き、いわば睨み合いといった状況に陥るのではないか。

それにしても、両国間の経済関係が今後どのように変化していくのか、極めて心配である。日本企業の対中投資という観点からは、中国のカントリーリスクは急速に高まってきていると見るべきだろう。経営者の感覚からすると、これからの追加的対中投資はやや控える方向へと転じていくのではあるまいか。

日本ではこのところ、中小企業各社の対中投資が活発であった。けれども、中小企業の場合、現地事業が騒擾に巻き込まれたときの有効な収拾策を準備できていないことが多い。受けたダメージはそのまま経営危機に繋がってしまうのが実情だろう。

反日を煽っているインターネットサイトのひとつとして有名な「中国918愛国論壇」は次に示すような、「日本の報道関係者へ」と題する読者からの投稿を掲載した。内容はジャーナリストに宛てたものであるが、ジャーナリストのみならず、私たちは日本人として中国人のこのような主張を熟読玩味し、そして、これからの日中関係のあり方を深く考えていくべきではなかろうか。

しかしながら、この投稿の中で言われているような、「今回の一連の抗議デモは日本の民衆に向けたものではないことをはっきりさせたい。これはあくまでも中国の人々の民意を反映したものであって、日本政府の歴史に対する歪曲した見解と右翼の歴史教科書改竄に対する被害者の子孫たちとしての怒りを表すものである」ということは、私たち日本人として素直に是認できることではない。

一方、「我々は確かにこれまでいろんな愛国教育を受けてきた。国を愛しながら、自分たちの知識を祖国に貢献し、そして持っている知恵を世界の平和と発展に貢献するようにと教育されて」きたことは事実だろうとは思う。けれども、その「愛国教育」とは、具体的にいったいどのような内容のものであったのか、私たち日本人としてはいま、そこのところに深い疑惑の眼差しを向けているのだ。

私たち日本人としては、江沢民以来続けられてきた「愛国教育」とは、若い人々に強烈な隣国憎悪をもたらす内容だったのではないか、という疑いを抱かざるを得ない。もしそうだとしたら、それは近代国家のやる行為として、到底許すことのできないものである。

このあたりに、両国間に横たわっている障壁を克服していかなければならない鍵が潜んでいるのではなかろうか。



中国918愛国論壇 投稿欄から

日本の報道関係者へ:

最近、中国国内で日本に対する抗議デモは非常に激しいものになっていることはみなさんご周知でしょう。この一連のデモは国際社会においても大きな反響を及んでいます。今日はそのために、皆さんに公開手紙を出すことにしました。皆さまはジャーナリストという神聖な職業を勤めていることを前提に、あくまでも事件の真実性に基づいた報道を視聴者或いは読者に正確に提供して頂きたいと願っております。

さて、扶桑(註記;日本の別名)とわが中国は一衣帯水の関係であり、数千年にわたる歴史の淵源を持っていながら、もともと良き隣国同士だったものが今日の反目した局面に至っては真に心痛ましいものがあります。

まず、今回の一連の抗議デモは日本の民衆に向けたものではないことをはっきりさせたい。これはあくまでも中国の人々の民意を反映したものであって、日本政府の歴史に対する歪曲した見解と右翼の歴史教科書改竄に対する被害者の子孫たちとしての怒りを表すものである。釣魚島問題は両国間の認識が違いがあって議論すれば限が尽かないから、ここでの言及は避けたいと思う。しかし、日本の右翼団体は歴史を改竄し、誤った歴史観を後世に日本人に植え付けようとしているのは明白な事実だ。南京大虐殺の被害者数はいくらだったにしても、戦争を直接指揮したのは天皇にしろ、軍部にしろ、日本の中国に対する侵略行為は自らが起こした国家犯罪として、永遠に抹殺できない事実。強制従軍慰安婦問題も被害者及びその子孫にとっては、時間には決して癒されぬ深い傷。我々が起こした一連の行動はまさに真実を知らない日本の人々、または真実を知りながらそれに直視できず、敢えて隠そうとする政治家や右翼たちに知らせるためです。

我々は確かにこれまでいろんな愛国教育を受けてきた。国を愛しながら、自分たちの知識を祖国に貢献し、そして持っている知恵を世界の平和と発展に貢献するようにと教育されてきました。日本を敵に見なす教育は受けたことない。中日の友好と友情こそが中国の教育であり、われわれの念願です。今度のデモに関しても中国のメディアや政府に煽動されたものではない。これは我々が我々による我々の意思を日本国民に伝える意思表明の一環です。それでも煽動者があるとしたら、それは日本の右翼の言動に他ならない。

デモの進行中に一部の人は興奮のあまり器物の損害するなど行き過ぎた行動をとったことは非常に残念であり、われわれの初心に反する。今では、デモの主催者たちがそういう行動を制止しようと努めているところです。それから、説明したいのは日本製品の不買運動です。この不買運動はわれわれの最終的目的ではなく、日本が取っている誤った行為をより反省させるための手段の一つに過ぎません。われわれ両国は地理的にも、経済的にも決して互いに敵視してはならない。お互いに必要としているなら、敢えて格好つけるようなことは必要ない。反省すべきことを心から反省し、謝るべきことを心から謝って中国人に伝えばそれが中日友好の新しい始まりになる。

ここで大切な役割を果たすのはジャーナリストのみなさまです。事件の成り行きとそれに絡んだ中国人の感情を正確に日本国民に伝え、事実を忠実に報道することが関係打開の道につながります。勝手な憶測に基づいた報道は今の状況を悪循環させるばかり。真実み基づいた報道を通して、日本の右翼に彼ら恥じるべき蛮行と暴言は決して許されないことを知らせていただきたい。そして、日本政府にはきちんと歴史問題と向き合い、然るべき措置を取るように教えていただきたい。過去の犯罪を反省して謝るのはヒトにとっての本分ではなかろうかと考えています。日本が起こしたあの残虐な侵略行為における中国の被害規模を考えてください。いくら謝っても、謝り過ぎだということは有り得ないと思う。

一つ安心をしてもよろしい。かつて周恩来総理が放棄した戦争賠償を、我々は今になって払えとは言わない。あれだけ多く亡くなった命は金に換算できるものではない。日本にはそんな金を払えないとも知っておりますから、ほしいとも思いません。
歴史在此沈思
2005年4月14日

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