Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

イラク新大統領選出、核問題の行方は?

2005-06-26 14:29:42 | 国際
毎日新聞
イラン新大統領: 核問題解決に早くも暗雲 協調路線停滞か
2005年6月26日 1時42分

 24日のイラン大統領選で保守強硬派のアフマディネジャド・テヘラン市長が当選し、97年のハタミ現政権誕生から続いた改革の流れが途絶えた。世論のすう勢が改革志向で定着しつつあるにもかかわらず、改革が進まないことへの失望と国内経済への不満がうっ積して起きた揺り戻し現象といえる。しかし、国際的影響は大きい。「文明間の対話」を呼びかけたハタミ政権下での国際社会との協調外交が停滞することが予想され、核開発問題の行方に早くも暗雲が漂っている。

 ◇強硬姿勢強め、核交渉で緊張局面も

 イランの保守強硬派政権誕生で、焦点の核開発問題解決について「状況は厳しくなった」(外交筋)との悲観的見方が広がっている。

 イランは昨年11月、英仏独との交渉でウラン転換など関連作業を含めたウラン濃縮活動の一時停止で合意。同12月以降、英仏独はイランにウラン濃縮計画の放棄を求める交渉を継続している。

 イラン側の核交渉はハメネイ師ら保守指導層の専権事項だが、今回選挙で敗れたラフサンジャニ師は故ホメイニ師のイラン革命(79年)を支え、ハメネイ師に意見できる立場にいたとされる。金権腐敗のイメージから国民の不信が強かったラフサンジャニ師だが、英仏独との交渉団代表のローハニ最高安全保障委員会事務局長を陰で支え、核問題の「外交的落としどころを探る現実志向派」(消息筋)といわれる。

 一方、ハタミ大統領は核交渉を指揮する実質権限はなかったが、「国際協調派の窓口」としてのイメージが英仏独に忍耐強く交渉のテーブルにつかせた側面があった。

 英仏独3カ国は先月25日のジュネーブでの欧州連合(EU)とイランの外相級協議で、「7月末か8月初旬」に新たな政治・経済支援策を示すのと引き換えに、イランからウラン濃縮活動の凍結継続を取り付けた。新提案はアフマディネジャド氏の大統領就任のタイミングと重なる。

 アフマディネジャド氏はかねて「交渉団は(英仏独の)言い分を聞き、譲歩しすぎだ」と非難を繰り返してきた。それだけに、ハタミ大統領の退陣に加えて、ラフサンジャニ師が選挙敗北で影響力が低下すれば、今後、イランが強硬姿勢を強めるのは確実で、核交渉が緊張局面を迎えるのは不可避の情勢だ。

 米国のライス国務長官は今年3月、イランが核開発計画を放棄すれば、イランの世界貿易機関(WTO)加盟反対の撤回など経済的見返りを与えると発表した。同時に、EUもイランが濃縮活動を再開すれば国連安保理に付託することで米国と合意した。これは、「悪の枢軸」「圧政国家」と非難し、イランの原子力平和利用を認めない米国と、ハタミ政権下でイランとの関係を拡大したEUとのバランスの上で成立した対イラン外交交渉継続の確認だった。

 しかし、米国とイランの関係が一段と冷え込むことが確実とみられる中、EUが米国と一線を画す影響力を行使することが難しくなることが予想され、その場合、安保理付託の流れが一気に強まりそうだ。【テヘラン高橋宗男、ロンドン小松浩】

 ◇「第3極」接近も

 「有権者は米国の(対イラン)政策に対する明確な不満を示した。米政府はイラン有権者の声に耳を傾け、ごうまんな態度を取るべきではない」

 イラン外務省報道官はアフマディネジャド氏の大統領当選が確定した25日、そう強調して米国をけん制した。

 現職のハタミ大統領が97年8月の就任式で「すべての国と友好関係を築く」と述べたのとは対照的に、アフマディネジャド新政権は発足前から対米強硬路線を明確にした。

 ハタミ大統領は外交の基本を国際協調に置いた。欧州とは相次いで関係を改善。それ以前に関係が冷え込んでいた中国、日本との関係も回復した。「革命の輸出」を恐れていたサウジアラビアやヨルダンなどとの関係を改善。欧州、日本、アフリカなど活発な外遊を行い、国連では「文明間の対話」を提唱。イランのイスラム原理主義的なイメージを大きく変えた。

 しかし、アフマディネジャド氏には国際舞台での経験がなく、海外では保守強硬派大統領誕生に対して「大きな驚き」(英テレビ各局)との受け止め方が支配的だ。ハタミ大統領誕生の時のような歓迎ムードがなく、今後、国際社会とイランの外交は当面、停滞することは間違いない。

 現地ジャーナリストは「新政権は(対米関係悪化を念頭に)中国やインドなど第3極への接近を強めるだろう」と語り、石油などエネルギーの利害を軸に孤立を避ける後ろ向きの外交になると予測する。【テヘラン高橋宗男】

 ◇戸惑う日本政府

 イランとの友好関係を重視する日本政府は、国連安保理でのイラン制裁を目指す米国の強硬姿勢とは一線を画し、ハタミ大統領の改革路線を支援してきた。原油輸入の1割以上をイランに依存しているエネルギー安全保障上の理由からだ。

 このため今回大統領選では穏健派ラフサンジャニ師の当選とハタミ路線継続を望んでいたが、保守強硬派アフマディネジャド氏の登場に、外務省幹部は「実際の政策を見極めないと評価は難しい」と戸惑いを隠せない。25日発表した外務報道官談話は「新大統領が引き続き国内改革に努め、国際社会との関係を重視しつつ核問題への対応など諸施策を進めることを期待する」と呼びかける内容となった。

 日本としては、いくら友好重視とはいえ、北朝鮮の「核の脅威」を抱える立場もあり、イランの核兵器開発疑惑を軽視するわけにはいかない。新大統領がウラン濃縮再開に動けば、苦しい対応を迫られることになる。

 日本はイランのアザデガン油田開発について、米国から強く反対され板挟みに苦しんできた。今後、米国がイランへの締め付けをさらに強化することも予想されるため、新大統領が核問題で柔軟姿勢をとるよう、働きかけを強めていく構えだ。【平田崇浩】


産経新聞(共同配信)
核の強硬路線、米欧が懸念 イスラム色強化も警戒
2005年6月26日 00:18

 24日のイラン大統領選で国際的には無名だった保守強硬派のアハマディネジャド・テヘラン市長が当選、核問題での強硬姿勢や政権運営でイスラム色が強まることに米欧、アラブ諸国は一様に警戒感を示した。

 アハマディネジャド氏はこれまで核開発問題について「欧米の脅しに屈してはならない」と主張。これに対し、ブッシュ米政権は「平和利用を隠れみのにした核兵器開発計画」だとして国連安全保障理事会への付託も辞さないとしており、対決姿勢を強めることになりそうだ。

 核問題でイランと交渉してきた英国、フランス、ドイツの欧州3カ国も交渉の見通しが、決裂の可能性も含め「厳しくなった」(欧州外交筋)とみている。

 同じイスラム圏でありながら、イランとは一線を画すアラブ諸国は1979年のイスラム革命の「輸出」におびえた記憶を持ち、「イスラム革命の価値」を唱える新大統領の出方を警戒する。エジプト人記者は中東の衛星テレビで「米国の過激な政権がイランで過激な大統領を誕生させた」との見方を示した。

 女性参政権付与など「民主化」を進めるペルシャ湾岸諸国は、イランでの選挙結果に触発されたイスラム保守層の動きを警戒、改革に慎重になるとの予想も出ている。

 一方、ロシアのプーチン大統領は祝電を送り、原子力エネルギー分野での協力を継続する意向を表明した。(共同)

最新の画像もっと見る