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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

テリー・ギブス/フーテナニー・マイ・ウェイ

2025-04-23 19:04:09 | ジャズ(その他)

本日は少し変わったところで白人ヴァイブ奏者テリー・ギブスによるフォークソング集をご紹介します。ギブスについては以前インパルス盤「テイク・イット・フロム・ミー」を取り上げました。日本ではそこまでメジャーではないですがアメリカではかなり知名度があり、生涯で50枚以上のアルバムを残しています。50年代はサヴォイやエマーシーを中心に多くのリーダー作を発表していますが、本作「フーテナニー・マイ・ウェイ」は1963年にタイム・レコードに吹き込んだものです。

タイトルにあるフーテナニー(hootenanny)とは聴衆も一緒に歌うフォークコンサートのことで、1973年生まれの私は正直全く知らない言葉でしたが、日本でもフォークソングブームの昭和40年代にはあちこちで行われていたそうです。ただし、本作に収録されているフォークソングはボブ・ディランやピーター、ポール&マリーのようなコンテンポラリー・フォークではなく、19世紀から歌い継がれているようなトラディショナル・フォークが中心です。

メンバーはテリー・ギブス(ヴァイブ)、アル・エプスタイン(テナー&フルート)、ジミー・レイニー(ギター)、アリス・マクレオード(ピアノ)、ウィリアム・ウッド(ベース)、アル・ベルディング(ドラム)と言う顔ぶれです。正直誰やねん!と言う人が多いですが、あえて言うならジミー・レイニーは白人ギタリストとしてそこそこ有名(過去ブログ参照)です。また、アリス・マクレオードはこの2年後の1965年にジョン・コルトレーンと結婚し、アリス・コルトレーンと改名しましたのでそちらの名前だと知っている人が多いかもしれません。ちなみにアリスはコルトレーン作品にも何枚かピアニストとして参加しており、そこでの演奏は完全にフリージャズですが、本作では普通のジャズピアノを弾いています。その他、アル・エプスタインはおそらく白人でベニー・グッドマン楽団出身のマルチリード奏者。本作ではテナーまたはフルートを吹いていますが、もっぱら伴奏のみでソロを取る場面は一度もありません。ベースとドラムは全く知らない人です。

全10曲。全てが作者不詳のトラディショナル・ソングですが、知っている曲と知らない曲が半々と言ったところですかね。オープニングトラックは"Joshua Fit The Battle Of Jericho"。「エリコの戦い」の邦題で知られる黒人霊歌で、ジャズだとコールマン・ホーキンスのライブ盤が圧倒的に有名です。ソロはギブス→アリス・マクレオードの順でこれ以降ほとんどの曲が同じパターンです。2曲目は"John Henry"。あまり知らない曲ですがこれも黒人霊歌で19世紀の鉄道建設工事で活躍した伝説の黒人ヒーローを歌った曲のようです。3曲目"When Johnny Comes Marching Home(ジョニーが凱旋するとき)"は南北戦争で歌われた行進曲で映画などでもよく使われるので日本人でも皆知っている曲と思います。ジャズだとジミー・スミスが「クレイジー!ベイビー」で演奏していました。この曲ではジミー・レイニーのギターソロも聴けます。4曲目"Michael(漕げよマイケル)"も黒人霊歌で日本でも音楽の教科書で使われるなどすっかりおなじみの曲です。ただ、本作のバージョンは少しアレンジが違ってアップテンポの曲調で別の曲のように聞こえます。この曲もレイニーのソロありです。5曲目"Polly Wolly Doodle"は童謡だそうで、確かに口ずさみやすい曲です。私は聞いたことないですが日本語でも「ほがらか村長さん」と言う童謡になっているそうです。

続いてB面。6曲目”Tom Dooley"は19世紀のフォークソングらしいですが、キングストン・トリオが1958年に歌って全米1位になった曲です。7曲目"Greensleeves"も超有名曲ですが、こちらはアメリカではなくイングランド民謡で、クラシックの世界ではヴォーン=ウィリアムズが「グリーンリーヴス幻想曲」を作曲しました。ジャズでもコルトレーン、ジミー・スミス、ウェス・モンゴメリー等カバー多数です。8曲目"Boll Weevil"は綿花につくワタミゾウムシと言う害虫のことで、黒人労働者の間でブルースとして歌い継がれ、1961年にはR&B歌手のブルック・ベントンが全米2位の大ヒットを放っています。この曲は本作中収録時間が一番長く(6分弱)、ギブスだけでなくアリス・マクレオードが2分半にわたって迫力あるピアノソロをたっぷり披露します。後のアリス・コルトレーン時代とは全く違いますが、個人的には本作の演奏の方が断然良いと思います。9曲目"Down By The Riverside"もポピュラーな黒人霊歌。ゴスペルでも定番ですし、ドド・グリーンはじめジャズバージョンも多いです。最後の"Sam Hall"は良く知らない曲ですが、原曲はイングランド民謡とのこと。ジャズとトラディショナルソングの組み合わせだとジョニー・グリフィン「ケリー・ダンサーズ」が有名ですが、本作も地味ながら充実の内容と思います。

 

 


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