ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジャズ・メッセンジャーズ/ニカズ・ドリーム

2024-05-07 19:02:35 | ジャズ(ハードバップ)

モダンジャズを代表するグループであるジャズ・メッセンジャーズですが、一般的にはブルーノートのイメージが強いと思います。実際、デビュー作の「カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ」、ファンキージャズの聖典「モーニン」、モードジャズの名盤「モザイク」はじめ20枚近くの作品を同レーベルから発表しており、特に日本ではCDで手に入りやすいこともあり、ブルーノート至上主義が顕著ですからね。ただ、彼らは別にブルーノートと専属契約を交わしていたわけでなく、実にさまざまなレーベルから作品を発表しています。中でも飛び切りの名盤が今日ご紹介するコロンビア盤「ニカズ・ドリーム」(原題はシンプルに「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」)です。コロンビアには他にも先日ご紹介した「ハード・バップ」を吹き込んでいますが、そちらがホレス・シルヴァーらがグループから脱退した後なのに対し、こちらはその半年以上前の1956年4月~5月録音で、シルヴァー(ピアノ)、ドナルド・バード(トランペット)、ハンク・モブレー(テナー)、ダグ・ワトキンス(ベース)が全員在籍しています。メンバーの豪華さの点で言ってもグループ史上屈指ですし、内容もそれに違わない充実の出来です。

CDにはボーナストラック(別テイク除く)が4曲収録されていますが、もともとは全7曲。一番の注目はアルバムタイトルにもなっているホレス・シルヴァー作"Nica's Dream"ですね。私自身はシルヴァーのブルーノート盤「ホレス・スコープ」でこの曲を先に知ったのですが、オリジナルはこちら。この後多くのジャズメンにカバーされるモダンジャズ屈指の名曲です。同じくシルヴァー作の”Ecaroh"(Horaceの逆さ読み)も最高です。こちらは1952年のブルーノート盤が初出ですが、ここではクインテットによる充実の演奏が聴けます。シルヴァー以外ではテナーのモブレーも3曲を提供しており、バードとモブレーの力強いユニゾンで始まるオープニングの”Infra-Rae"はじめ、熱血バップ"Carol's Interlude"、ブレイキーの怒濤のドラミングが主役の"Hank's Symphony"と熱演揃い。歌モノスタンダードも2曲収録されており、”It's You Or No One"はドライヴ感満点の演奏に、”The End Of A Love Affair"はメランコリックなミディアムチューンに料理されています。以上、これだけで十二分に満足なのですが、ボーナストラックの4曲も悪くない。特にモブレー作のメロディアスなバップ曲”Late Show"と”痛快なファンキーチューン"Deciphering The Message”は快心の出来と言って良いでしょう。

結局、このアルバムを残して、シルヴァーはグループを脱退。その際にバード、モブレー、ワトキンスも引き連れて行きます。ただ1人残ったブレイキーが新しいメンバーを集めてジャズ・メッセンジャーズとして活動を続けるのですが、本作品の収録曲のほとんどをシルヴァーとモブレーが作曲していることからわかるように、その打撃は相当なものだったことがわかります。実際、その後のジャズ・メッセンジャーズは2年余り”暗黒期”と呼ばれる雌伏の時期を過ごすことになるのですが、それらの時代の作品についても本ブログではぼちぼち紹介していきたいと思います。

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