12時間Blog

映画とかマンガとかドラマとか

[映画] 人類資金

2013-10-23 | 映画
131022jinrui

「人類資金」を川崎TOHOシネマズにて観て来ました

テレビでは「クロコーチ」というドラマで40年以上前の ”三億円事件” が題材となり、今度は70年以上前を発端とした ”M資金詐欺” が題材となっている作品が映画として公開されるというのも、なんだか現代の世相を分析してるような人達にとっては面白い解釈が出来そうな流れになってる気がします

ただ「人類資金」という映画ですが、うーむ、何故こういう風になってしまうんだろう?、というのが見終わった際の最初の感想でした

それはこの作品で語られているストーリーやテーマに関してだけでなく、作品そのものの出来に関しても、という意味でもあるんですが…(-_-;)

(「ガンダムUC」にかかりっきりだったせい?で)七年ぶりとなる福井晴敏の長編小説を原作としているんですが、福井小説はメチャメチャ面白いのに映画化されるとどうしても中途半端な印象が目立つ、個々の要素は凄く面白くなりそうなのに全体的には微妙な感想にならざるを得ないという評価がすっかり定着してしまってる印象で、残念ながら「人類資金」もその評価を覆すには至らないカンジでした

個々の要素というのは本当に魅力的なんです……「人類資金」の原作小説の方はまだ未完というちょっと珍しい展開をしてるんですが(全七巻で月に一冊ずつ、四巻までが刊行されていてこれから映画の ”その後” の展開も描かれるそうです)、定番的に現出を繰り返す ”M資金詐欺” そのものへの興味、福井作品にお馴染みの自衛隊の秘密組織、枯れたおっさんと理想が具現化された少年キャラのコンビ、資本主義の南北問題・経済格差社会への問題提起等々、どれもこれもオレにとってはどストライクなネタばかりです(・∀・)

邦画史上初という国連総会議場での撮影、終戦間際のフィリピンからアメリカ・ロシア・タイ(劇中では架空の共和国)をまたいで展開が行き来するスケール感、豪勢な役者陣もかなり見応えがあって良かったんですけどねえ……結局はそのスケール感が仇となって2時間そこそこの時間内に収めるのがそもそも無理だったんじゃないか?、っていういつもの結論でお茶を濁すしか無いのが悔しい限りです


以下はネタバレを含む感想になります

滅び行く日本を救うために隠蔽されたM資金
 →人類普遍の幸福を追求する理想を掲げた一族が引き継ぐ
  →戦後70年を経ていつの間にかグローバル資本主義におけるマネーゲームの原資と化す
   →そんな一族に反乱を起こした自称 "M"

この映画の背景設定はこんなカンジで、まず、”人類普遍の幸福” みたいなモノを表現するのには物凄いハンデがあって(例えば民主党政権が理想論的に掲げていた政策が尽く頓挫するしかなかった空虚さを想起させます)、この様な壮大なテーマだと日本人の観客どころか世界中の人間をも納得させる説得力が必要になるわけで、これは想像を絶する演出の積み重ねが必要になりそうなんですが、残念ながら ”森山未來の役者としての気合いと入れ込みようには感銘を受けました~” というレベルで終わってしまっていました(阪本監督的には、”映画の落とし所” としてそれで十分だということみたいですが)

アクション映画として見られるのならば、少々強引なストーリー展開でもそれなりに娯楽作としての感動も味わえるかと思いますが、アクションの流れのリアリティみたいなのが完全に欠落してしまっている演出だった(個々の役者の身体のキレとかではなく、拳銃を相手に向けるシーンからカースタントまで、アクションの見せ場に関してどうしてそういう流れになるのかといった説得力を感じられるシーンが無かった)のが本当に残念でなりません(-_-;)

ではサスペンス要素としてはどうかというと、自称 "M" の考えとして、まずは世界的に情報の格差を無くそうっていう発想は結構好きです……ただ国連に妙な期待をかけすぎていたりするバランス感覚については、20世紀の名作マンガである「沈黙の艦隊」辺りとは比較にならないくらいお粗末に感じられてしまいました

「人類資金」と同様の、”世界平和” という絵空事にしか思えないテーマを掲げていた「沈黙の艦隊」を今でもオレが優れていると感じているのは、”軍事力” という世界の歴史を動かしている冷徹な原動力から逃げずに正面から描写しているという点で、この点だけを見ても「人類資金」は片手落ちという印象から逃れられません(まあ福井作品にそれを言うのは釈迦に説法もいい所ですが)

自称 "M" が画策した情報格差の是正というのも、「沈黙の艦隊」においては ”情報国家やまと” という表現で既に提唱されていましたが、あれから20年が経過して、インターネットというツールを通して ”情報の垂れ流し” という事態を人類は現実化しつつありますが相変わらず世界は争乱に満ちていて、貧富の格差も拡大する一方です

資本主義経済がいろんな局面で限界に来ている事なんて誰もがわかっていて、ではその代わりとなる社会システムは何か?
共産主義?社会主義?独裁?…どれもいつかは破綻するということは歴史が証明している


…みたいな感覚というのが大前提で、そこから更に一歩を踏み出した、完全な解決策なんて無理なのはわかってるけれども、希望や可能性を感じられる ”何か” を提示するのがこういうテーマを選んだエンターテインメント作品の宿命だと思うんですが、残念ながらオレにはそれは感じられませんでしたねえ

映画感想一覧


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« えええええええええええ… | トップ | [テレビ] 「ほこ×たて」打ち... »

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事