写真:キモグリバエ/金沢市
悪と知って行う悪と、悪と知らないで行う悪とでは、どちらが依り悪なのだろうか。
単純な話で考えてみたい。
Aさんは高速道路で130kmで走行し、スピード違反で警察に捕まった。
Bさんも同じく130kmで走行し、スピード違反で捕まった。
彼らの言い分はこうだ。
Aさん「身内に不幸があって急いでいました。申し訳ありません。」
Bさん「制限速度が100kmとは知りませんでした。許してください。」
二人の言葉から真相を考えてみたい。
Aさんは制限速度が100kmであることを知っており、自分が速度超過をしているのを知っていた。
しかし、身内の不幸があり、一秒でも早く目的地まで行かねばならない事情があった。止むに止まれぬ状況だった。
Bさんの事情はこの文面からは推察できない。
単に130kmで走行していたという事、速度制限を知らなかった、という事だ。
では、この二人に悪の大小はあるのだろうか。
共通するのは速度超過30kmということである。彼らには後日、警察から罰金の支払通知書が届くことだろう。
この状況では、二人の悪の大きさは同じように見える。
違いは制限速度の有無を知っていたかどうかである。
Aさんは知っていた。Bさんは知らなかった。これが大きな問題である。
結論は、Bさんの悪がAさんより大きいのだ。
Aさんは速度制限を知っていたので、普段は制限速度を守っていたことだろう。
しかし、この時は「身内の不幸」という事情が発生したため、速度超過をした。内心、天使と悪魔の戦いだったことだろう。
Bさんは速度制限が有ることを知らずにたまたま130kmで走行していたら、たまたま警察に捕まった。
普段は制限速度100kmのところを160km、あるいは40kmで走っていたかもしれない。
高速道路の場合、この速度では速度違反である。重大な交通事故、交通渋滞を引き起こす可能性は高い。
知らないで行う悪とはこういうことなのだ。
知って行う悪はどこかに躊躇したり、心身構える事がある。Aさんも「警察に捕まりはしないか?」という罪悪感があっただろう。
知らないで行う悪は、欲望のまま行動するだけだ。Bさんには何の躊躇いもなくスピード超過をしている。
昨日、ハエが
「なぜ人間は 我々を攻撃するのだ?」
「我々は 何一つ 悪いコトをしていない!」と叫んだが、
ハエも知らないで悪を行なっているのである。
もし、ハエに心があって、自分たちが人間に不快感を与えている事、病原菌をまき散らしている事を知ったならば、
ハエは人間に遠慮して近づくのを止めただろう。殺虫剤で身内が殺される事も減るだろう。
よってハエは人間からみて悪の昆虫である。
だが、もう少し考えてみたい。人間の側にハエが集まったのは人間のせいである。
人間がゴミ箱を屋外に放置し、腐敗物やゴミをを近隣や道路に撒き散らしてきた。
それらは皆、ハエの食料であり繁栄のための育児場なのだ。
人間はハエの生態も知らずに繁栄してきた。
人間も悪なのである。