メディアでよく見る著名人の死を悼んで泣いたのは初めてのことだ。
直前まで力強く演説していた姿から、凶弾に倒れる生々しい映像も、心が痛かった。
時を巻き戻せないものか。タイムマシンがあったらなあ。かなわないことと分かっていても、何度となく思ってしまう。
「安倍元総理が撃たれた」と速報で文字が流れた時、かすり傷程度であれば良いなと思っていた。ところが、続報の心肺停止という情報が流れ、容態がはっきりしないまま時間が流れた。
心肺停止で回復した人をほぼ知らない。駄目だろうと思いながら、「午後5時3分死亡」とニュースが流れると、悲しさでいっぱいになった。
人の命のあまりに儚く、また、命を奪われるという理不尽さに、無念の気持ちが涙となって溢れた。
翌朝、むくんだ顔のまま、ジョギングに出発した。いつものルートを走りながら、頭の中は相変わらず悲しさでいっぱいだった。
クールダウンで歩きながら、高架橋に差しかかるとセキレイの声。目を上げると、この前と同じ場所にキセキレイがいた。少し、気持ちが癒やされた。
交通量の多い道路を渡ると、今度は歩道上にオニヤンマ。どうしたのか。
子供の頃には良く見かけたけど、すばしこくて近くで観察することなど出来なかった。
でも、このオニヤンマは、こうしてスマホで写そうとしても動かない。瀕死なのかな？と思っていると、シャッターボタンを押すか押さないうちに飛び立った。
「写真、ちゃんと取れたかな？」と確認してみたら、かろうじて写っていた。良かった。
歩道に休んでいた事から察すると、あまり元気ではなかったかも知れないけれど。
落ち込み気味の心も、こんな風に自然とふれあうことで、少し上向いていく。
そして今日は月曜日。どんどん日にちが過ぎていく。それとともに、悲しみが薄らいでいく。
今日の買い物帰り、天神山緑地で痩せたキツネを見かけた。
（写真上部中央にキツネの半身が見える）
キツネが入って行った場所を見てみると、木の根元で何か食べている。カリコリと骨っぽい音。かわいそうだけど、野ネズミでも食べられちゃったかな。
スマホを向けても、その場でずっと食べ続けていた。
また、キツネに会えて嬉しかった。
こうして自然に触れながら、心が平穏に戻っていく。
