阪神間で暮らす-2

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

官房機密費「支出先文書は5年で廃棄」「9割が領収書不要」の実態

2018-06-22 | いろいろ

より

*****
官房機密費「支出先文書は5年で廃棄」「9割が領収書不要」の実態

本来と異なる使途に流用されている…?
NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長 三木 由希子



 機密費の使途はわからない

 2018年1月19日、最高裁は、内閣官房機密費(以下、「機密費」)の支出に関する行政文書の一部の公開を命じる判決を出した。

 それまで総額(2018年度予算では約12億円)しかわからなかった機密費のごく一端が、情報公開されることになった。

 機密費は、官房長官の判断で使用されており、情報収集や非公式に合意や協力を得るための相手方への対価、慶弔費等に支出されている。

 今回公開が命じられた範囲には、具体的な使途は含まれていない。

 公開されたのは、月ごとの総額の収支や払出した総額だ。具体的な使途がわかる情報は、内閣官房の行う業務への支障になるとともに、外交・安全保障上の不利益を被るとして、非公開とすべきと最高裁は判断した。

 機密費の使途が公式に公開されたことはこれまで一度もないが、政界工作や世論工作にも用いられていると言われている。過去には何度か、金銭の渡った先が話題になっている。

 例えば、2000年には政治評論家に機密費から金銭が渡っていたと週刊誌で暴露された。また、2002年に日本共産党は、入手した機密費の金銭出納帳とされる文書を公表した。それによると、与野党の政治家に機密費から金銭が渡っていたことが記録されていた(https://www.jcp.or.jp/activ/activ45-kimituhi/)。

 2010年には、1998年の沖縄県知事選で、保守系新人候補者に3億円が機密費から渡っていたことを、当時副官房長官だった鈴木宗男氏がTBSのインタビューで証言した。

 この知事選では、現職知事が落選し、保守系候補者が当選しているため、機密費が影響したのではないかと言われている。

 このような断片的に伝わってくる機密費の使途は、本来の支出可能な使途の範囲を超えて流用していた疑いが指摘されている。

 さらには、政策や選挙結果、世論が左右されているのではないかと強く疑われるが、この先、情報公開請求によっては公開しなくてもよいという最高裁のお墨付きを政府はもらったことになる。

 しかも、情報を非公開にできるだけでなく、実は機密費の使途を記録した行政文書は、5年間保存の後、廃棄していることが筆者の情報公開請求の結果わかった。

 機密費の使途等が記録された行政文書は、内閣官房の保有している「その他内閣庶務関係」という名称のファイルで保管されていた。

 この名称で行政文書ファイル管理簿を検索すると、保存期間が5年、保存期間満了後の措置に「廃棄」とあるため、5年保存で廃棄されることがわかったのだ。

  

 3つの支出目的

 実は、筆者は3年前から、機密費の使途に関する行政文書の保存期間が何年であるのか、保存期間が満了したら廃棄か国立公文書館へ移管するのかを把握しようと試みてきた。

 前述の通り、機密費が政策形成や意思決定に重大な影響を与える使われ方をしていると思われるからだ。

 機密費は、正式には報償費という。1947年度から予算に計上されており、「内閣官房の行う事務を円滑かつ効果的に遂行するため、当面の任務と状況に応じて機動的に使用することを目的とした経費」(平成30年1月19日最高裁判決)とされている。

 支出目的別に「政策推進費」「調査情報対策費」「活動関係費」に分けられている。それぞれの支出目的は、次のように内部ルールで定められている。

 まず、政策推進費は、施策の円滑かつ効果的な推進のため、内閣官房長官の高度な政策的判断で機動的に使用する経費だ。

 内閣の重要政策の企画立案や総合調整に使用され、重要政策の関係者等に非公式に交渉や協力依頼等の活動を行う際に合意や協力を得るために支払う対価等として用いられる。

 調査情報対策費は、施策の円滑かつ効果的な推進のため、必要な情報を得るために必要な情報収集等の対価や会合の経費にあてられている。

 活動関係費は、政策推進、情報収集等の活動が円滑に行われ、目的が達成されるように支援するための経費とされている。重要政策の関係者等との交渉、協力依頼、情報収集等の活動に必要な経費、相手方への謝礼、慶弔費等に使用されている。

 機密費が、少なくとも内閣の重要政策やそのほかの施策を進めるための対価として用いられていること自体は、政府も認めている。

 どこにどのような案件で支出したのか自体が、内閣の重要政策に関する意思決定に至る過程に影響を与えるので、支出先は政府の意思決定や判断を跡付け、説明責任を果たすために重要な情報だ。

 また、機密費は官房長官の判断で支出されていくので、政治的な責任を伴っている。

 前述の沖縄県知事選に機密費を使ったとすると、本来の目的外に流用している可能性が高いが、使途を秘密にすることで、予算の目的外流用もわからないという構造になっている。

 その一方で、最高裁の判決や機密費の使用方法を考えると、すぐに情報公開させることもなかなか難しい現実がある。

 そうすると、長期保存して将来的な検証に委ねることが、今の段階で唯一、機密費が政策に与えた影響や、不適切な流用により選挙や世論に影響を与えたか否かを図る方法になるだろう。


 機密費の9割が政策推進費

 しかし、機密費は使途を非公開としているだけでなく、5年で支出に関する行政文書そのものもなくなることがわかった。

 それに加えて、実はもう一つ問題がある。それは、使途が行政文書として保存されているかどうかも疑わしいという問題だ。

 おそらく、筆者が確認した行政文書ファイルに含まれる機密費の使途は、「調査情報対策費」と「活動関係費」に関する文書だろう。

 この二つの経費は、事務補助者(おそらく職員)が、支払決定書に基づき支払いを行っているからだ。これは、行政文書として残る。

 しかし、「政策推進費」は、官房長官が自ら直接相手方に支払っている。手持ちがなくなると国庫から払い出されて官房長官の手元に補充され、一説よると官房長官室の金庫に保管されているという。

 この支払いには領収書が必要なく、官房長官が個人で管理しているため行政職員が関与していない。

 最高裁判決で公開された情報から、機密費の約90%がこの政策推進費の支出であることがわかっている(2018年3月21日 毎日新聞「官房機密費 9割が領収書不要 政府、支出文書を初開示」)。

 過去に流出したとされる機密費の使途を記録した文書等には、ノートに支出先を書き込んだ子どものお小遣い帳のようなものがあり、官房長官が個人で記録を作っているようではある。

 方法は別にして、少なくとも内閣の重要政策の推進のために使っているので、誰にいくら支払ったのかなどは、官房長官の手元に必ず記録が残っているはずだ。

 しかし、「政策推進費」は、行政職員にその使途情報が渡らないよう管理がされているので、記録は高度な政治レベルで抱えておくもの、という慣行の中で扱われてきている。

 行政文書として管理するとなると、そうもいかなくなるので、何か記録があっても、それを組織的に管理する行政文書として扱うかは別問題になるし、政治的に決断しない限り残ることはないだろう。


 作成と保管の双方に課題あり

 また、政権交代が一定期間ごとに起こらない日本の政治状況であるものの、政権交代があったときに政界工作や世論工作の記録でもある政策推進費の使途をそのまま引き継ぐことは考えにくい。

 例えば、2009年9月の民主党への政権交代が決まった後、当時の河村官房長官が2億5千万円を政策推進費から払い出していたことが、今回公開された情報からわかっているが(前掲毎日新聞)、このようなお金の使途の情報が次の政権の手に渡ることもないだろう。

  

 しかし、政権交代が決まっている段階で多額の機密費を払い出していることまでは、わかるようになった。

 土壇場で多額が払い出されたなら、本来の使途と異なるものに流用されたのではないかという疑念が出てくる。

 機密費問題は、高度な政治的判断で支出がされるのだから秘密でやむを得ないという考え方が根強い。

 しかし、使用の目的が内閣の重要政策の推進のための対価として交渉や協力依頼に用いる以上、重要政策の形成過程、決定過程の記録として重要な意味を持っている。

 公文書管理法は、意思決定過程を合理付に跡付け検証できるよう文書の作成を義務付けている。作成された文書は、検証できるように保管されてなければ意味がない。機密費は、この作成と保管の双方に課題があることになる。

 政治的問題で難しいと言っているだけでは、課題に向き合ったことにならない。

 さしあたり、5年で廃棄する機密費文書はいったん廃棄を凍結し、機密費の使途をどう記録し、保管し、引き継いでいくのかを議論する必要がある。

 現在、森友文書改ざんと交渉記録の廃棄問題、防衛省日報問題を受けて、昨年度に続き公文書管理法について、見直しの議論が与党・政府で行われ、6月11日から公文書管理委員会での議論がはじまる。

 改ざん問題から罰則の導入や電子決裁に推進、監視機能の強化などの必要性が、一つの社会的議論の方向になっている。

 その一方で、まったく同じ問題はそうそう起こらないので、一連の問題を想定した強化策にとどまると、小手先の改善になってしまう。少なくとも、一連問題は行政の問題であると同時に、政治レベルの指導性や説明責任の問題が大きかった。

 しかし、政治レベルの説明責任を徹底する方向に議論が動いていない。官房機密費問題や、以前に取り上げた佐川前国税庁長官の日程表一日廃棄問題など、タブーなしに公文書管理の問題を議論すべきだ。
*****




コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。