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同盟国は「子分」だから外交の必要はないと見せつけられた  (抄) Plus

2017-11-13 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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同盟国は「子分」だから外交の必要はないと見せつけられた

 トランプ大統領の初のアジア歴訪によって日本、韓国、中国に対する米国の本音を見せつけられた思いがする。同盟国である日本と韓国は米国製兵器を買わせる対象でしかなく、敵と認める中国だけが「外交」の対象とされた。つまり同盟国は「子分」だから外交の対象にならない。

 今回のアジア歴訪は米国にとって北朝鮮の核開発をどのように抑え込むかが第一の課題だとされた。トランプ大統領はこれまでしきりに軍事オプションに言及し、一方で政権幹部は外交交渉の可能性をちらつかせ、両面作戦で北朝鮮の譲歩を引き出そうとしてきた。

 各国首脳の中でトランプ大統領の軍事オプションを支持するのは日本の安倍総理ただ一人である。韓国や中国は各国と同様にあくまでも話し合いで解決する道を模索している。当たり前の話で米軍が北朝鮮を軍事攻撃すれば韓国経済は壊滅的打撃を受け、中国も日本も深刻な打撃を免れない。

 しかし軍産複合体に支持基盤を置くトランプ大統領は米軍の演習の回数を増やし、軍事予算を増額しなければならない立場にある。軍事オプションの可能性を繰り返し発信しないわけにはいかない。ただし本当に軍事オプションが可能かと言えば簡単でないことは皆分かっている。

 トランプ大統領に気に入られることだけが目的の安倍総理はトランプ大統領の言うことにはすべてイエスである。従って軍事オプションも支持するし、トランプ大統領の意向を忖度し米国軍需産業が作る兵器購入も重要な選択肢に入る。

 日本の税金の使い道に占める軍事費の割合は上昇する。それを批判させないためには国民に北朝鮮危機を深刻に受け止めさせる必要がある。ミサイルが発射されれば戦争の前線である韓国もやらない空襲警報を鳴らし避難訓練をさせるのは、国民に身体で恐怖感を味わせるためだとフーテンは考える。

 これを見ればトランプ大統領は「国民の安全を守るため米国製兵器を買ってそれで北朝鮮のミサイルを撃ち落とせ」となる。「日本国民も安全になり米国軍需産業も儲かるから日米ウィンウィンになる」というわけだ。断る理由は見つからない。つまり北朝鮮の核・ミサイル実験は現状では米国の利益になりそれは最大限に利用される。

 しかし米国内では迎撃ミサイルの性能について「18回の実験で10回しか当たらない」と報道され、北朝鮮危機を煽って当たるかどうかわからない兵器を米国が売り込むことに批判的な報道もある。昔は日本でも自民党内にそうした批判があったが、どういうわけか最近では全く聞かれなくなった。

 米国製兵器の購入は最初の訪問国である日本での共同記者会見でトランプ大統領から持ち出され安倍総理が購入を約束した。同じことは翌日の韓国でも繰り返され、韓国も兵器購入を約束した。米国から見れば日本と韓国は同盟国だがそれは限りなく「子分」に近い。本音では主権国家と見ていないところがある。

 歴代米国大統領は日本と韓国に対し一応主権国家と認める素振りをしたが、トランプは本音の人だから建前にこだわらない。今回の歴訪で初めて大統領専用機が到着したのは日本の主権の及ばない横田基地であった。そこは米国領であるから米軍兵士の熱烈な歓迎を受けるところからトランプ大統領の日本での日程は始まった。

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別Webより  Plus

 日本の横田基地から韓国に向かった大統領専用機が到着したのはソウル郊外の在韓米軍空軍基地である。そこから韓国が9割以上の支援をして建設された海外で最大の米軍基地キャンプ・ハンフリーに大統領は向い、そこでも米軍兵士の歓迎を受けるところから韓国での日程が始まった。

 軍産複合体に支持基盤を持つ大統領らしいと言えばそれまでだが、軍事的に米国に隷属する国の中の米国領にその第一歩をしるす大統領の姿を見て、フーテンは主権を無視されているようで耐えられない思いがした。

 そしてトランプ大統領は今回の歴訪の最大の目的地である中国を訪れる。北朝鮮の核開発を止めるには中国とロシアの協力がなければ何もできないことを分かっているからだ。また中国に対して米国は巨額の貿易赤字を抱えており、大統領選挙中には制裁の対象国にすると息巻いたこともある。

 それを見透かすように中国の習近平国家主席は「国賓以上」のもてなしを演出し、世界遺産の故宮を貸し切って中国の伝統文化を見せつけ、オバマ前大統領とは段違いの待遇をすることでトランプ大統領の心をくすぐり、28兆円に上る商談を成立させて、ついにトランプ大統領に「貿易赤字の責任はこれまでの米国政権にある」と言わしめた。

 そして北朝鮮への圧力を促すトランプ大統領に一歩も引かず、これまで通り国連の制裁決議を徹底していく考えを表明して終わったのである。

 先日行われた19回中国共産党大会で習近平主席は2035年に中国のGDPが米国を抜き世界の30%を占めるようにし、2050年には軍事力を世界最強にするなどの目標を掲げたが、この米中首脳会談の結果を見ると米国と中国が世界を主導するG2構想に向けた「外交」の力を感じる。

 中国に圧力をかけるために始められたアジア歴訪は中国が圧力をかわす形で終わった。中国の「一帯一路」構想をけん制するためにトランプ大統領と安倍総理の日米首脳会談で提唱された「自由で開かれたインド太平洋戦略」がどこかに消えてしまった感じさえする。

 かつて日本が米国に経済的脅威を感じさせ、米国が日本を旧ソ連以上の「敵」と看做していた時期がある。その頃、米国の「日本叩き」は激しかったが、当時の米国には日本を叩く一方で日本に対する畏敬の念も感じられた。

 米国は叩かれても叩かれても立ち上がって挑戦してくる人間が好きである。戦わずにすがってくるだけの人間は便利だから利用するが腹の中では軽蔑する。かつての日本は軍事的には従属していたが経済で米国を圧倒する勢いがあり、だから米国はありとあらゆる手段を使って日本を叩きのめそうとした。

 その頃の日本には「外交」があったと思う。理不尽な米国の要求をかわす術を持っていた。しかし今回のトランプ大統領と安倍総理の「濃密な関係」に国家対国家の「外交」を感じることは出来ない。

 トランプファミリーと安倍ファミリーの「社交」が展開されていただけである。それが国家のありようとしてどうなのか、フーテンは大いに疑問に感じる。
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