阪神間で暮らす-2

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

抑止力とは便利な言葉だ ついに空母とミサイルの軍事同盟

2017-12-30 | いろいろ

より

*****
抑止力とは便利な言葉だ ついに空母とミサイルの軍事同盟

 読売新聞(26日付朝刊)の1面トップ記事にはア然だ。〈護衛艦「いずも」空母改修〉〈米軍機の発着想定〉などの見出しで、海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」を戦闘機の離着艦が可能な空母に改修する安倍政権の構想を報じたのだ。核・ミサイル開発に猛進する北朝鮮や海洋進出を強める中国を念頭に、米海兵隊が運用するステルス戦闘機F35Bへの補給を想定し、日米の一体化を加速させるという。

〈北朝鮮は弾道ミサイルによる在日米軍基地攻撃に言及しており、朝鮮半島有事では基地の滑走路が使用不能になる事態も想定される。また、中国は海洋進出を強めており、離島防衛力の強化は喫緊の課題だ〉と、その必要性を解説していたが、いずもの空母化はこの国の防衛政策を根底から覆す一大事だ。

 憲法9条に基づく専守防衛を掲げる日本は、攻撃型兵器を保有してこなかった。1988年4月に瓦力防衛庁長官(当時)が「大陸間弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機、あるいは攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されない」と国会答弁。以降、政府見解として定着した経緯がある。それを6年目に入った安倍政権がなし崩しにし、海自に空軍基地に匹敵する空母を保有させることで、日米同盟の軍事同盟化をさらに深めようとしている。こんな暴走を看過していいはずがない。

■ 海自はすでにヘリ空母4艦

 軍事評論家の前田哲男氏はこう言う。

「政府や自民党内で高まっている敵基地攻撃能力の保有につながるという議論がありますが、いずもの空母化はまったく次元が異なります。先制攻撃を可能にする軍事力を保持し、戦争のできる国への作り替えを意味しています。安倍政権のもと、この国は異次元の防衛政策の域へと突入してしまった。航空自衛隊への導入が検討されるF35Bの艦載もいずれ実施されるようになるでしょう。挑発的な軍事力の増強は北朝鮮や中国などの近隣諸国を刺激し、シーソーのように東アジアの軍拡エスカレーションを招く危険性がある。

〈自衛隊初の空母保有〉との解説もミスリードで、海自はすでにオスプレイなどが離着艦できるヘリ空母をいずもを含めた4艦も運用している。防衛省は『ヘリ搭載型護衛艦』と称していますが、世界的に権威がある英国の国際戦略研究所(IISS)が毎年発行する報告書『ミリタリーバランス』はヘリ空母に分類しています」

 小野寺防衛相は読売報道を受けて「いずも型護衛艦の改修に向けて具体的な検討は行っていない」としながらも、「防衛力のあり方については不断にさまざまな検討を行っていく」と含みを残した。

 米軍と一緒に戦える国を目指す安倍政権は特定秘密保護法、安保法、共謀罪法の戦争3法を強引に通し、国民監視強化や情報統制する態勢を整えた。安保法で集団的自衛権の行使を容認させると、安倍首相が「国難」と呼ぶ北朝鮮危機を理由に海自護衛艦による米艦防護や米イージス艦への給油を複数回行うなど、共同訓練を次々に実施。陸上配備型の弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の購入を閣議決定し、来年度予算案をまとめる間際になって日本海上空から北朝鮮内陸部を攻撃できる長距離巡航ミサイルの導入を駆け込みで決めた。北朝鮮や中国の脅威を口実にすれば、平和憲法をぶっ壊す悲願の改憲も許されかねない状況になりつつある。

 英豪と地位協定締結…まるで戦争前夜の新聞報道

 元内閣官房副長官補の柳沢協二氏が朝日新聞(25日付朝刊)で〈いまは冷戦時代と異なり、世界中の市場が密接に結びつき、相手国を破壊すれば自国の経済も大被害を受ける。こうした経済的『相互確証破壊』こそが戦争の抑止として機能しているのではないか〉と訴え、「在日米軍」などの著書がある長崎大客員教授の梅林宏道氏もこう話していた。

〈ものすごく押し返すのが大変なところまで日本は米軍と一体化した構造をつくってしまったと思う。それでも、われわれは二重基準の克服に向け、北東アジアを『非核の傘』でおおう構想の実現を目指すなど、軍事力に頼らない外交努力をしていくべきだ〉

 いずれも、まさに正論である。ところが、安倍は地球儀俯瞰とか言っておきながら、本来注力すべき外交や経済による抑止力を吹っ飛ばし、軍拡路線をヒタ走っている。

 それにしても、読売新聞をながめていると、この国は戦争前夜にあるのかと錯覚してしまう。いずも空母化を報じた前日(25日付朝刊)は、来年1月中旬に予定される日豪首脳会談で訪問部隊地位協定(VFA)の大枠合意見通しを報道。自衛隊や豪軍部隊が共同訓練などで相手国に一時滞在する際の円滑な活動の保障を目的としたものだという。英国とは外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の定例化を進め、VFA締結で共同訓練の拡充も画策していると伝えていた。日米英豪の軍事同盟化が着々と進められる一方、国民は「おかしい」と異を唱える感覚すらマヒさせられた感がある。二言目には「抑止力」でごまかし、その便利な言葉で思考停止に追い込む戦争政権の巧妙なペテンにかけられているからである。

「『抑止力』はマジックワードです。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認をうたう憲法9条に抵触する軍事政策の免罪符となり、あらゆる物事を正当化させてしまう」(前田哲男氏)

■ 規制事実を積み上げた先の壊憲

 ジャーナリストの田原総一朗氏は10月に外国特派員協会で行った会見で「憲法改正する必要がまったくなくなった」という安倍の発言を紹介していた。昨年9月の面談での会話の一部で、安倍は安保法をめぐり、「集団的自衛権の行使を決めたらアメリカはまったく何も言わなくなった。満足したのだろう」と口にしたという。安倍のひと言に凝縮されている通りで、安保法でこの国は何でもアリになってしまった。もはや、改憲なんて後付けに過ぎない。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。

「安倍首相の発言は一種の方便で、自民党憲法改正推進本部の動きをみても、諦めたとは思えません。憲法9条は日米安保条約に基づく政策の実行をたびたび阻み、壁にブチ当たった歴代政権は解釈変更の横道に逃げて無理筋を通してきた。日米同盟の信奉者にとって、9条は邪魔で仕方がない。しかし、衆参両議員の3分の2以上の発議、国民投票での過半数の賛成が必要な改憲手続きは容易に進められない。それまで解釈変更をフル活用して戦争国家化へ向けた既成事実をどんどん積み上げて世論を鈍化させ、現実に合わせる形で改憲賛成に誘導する。そんな青写真を描いているのでしょう。しかし、どんなに現実を変えようとも、9条が存在する限り、安倍首相が進める軍拡路線は常に整合性を問われ、国民は違憲訴訟を起こすこともできるのです」

 来月22日に始まる通常国会では、過去最大の97兆7128億円に膨れ上がった来年度予算案が審議される。防衛費も6年連続で増加し、過去最高の5兆1911億円に上る。数々のアベ友疑惑の追及はもとより、野党はここも徹底的に攻めなければ、安倍政権の助長に手を貸すことになる。
*****





コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。