社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

盗聴の拡大や室内盗聴の導入

2014-04-29 16:21:00 | ノンジャンル
 4月30日に「新しい捜査手法の在り方」を検討している法制審議会特別部会が開催される。そこでは、今までの検討結果を事務局試案として提出するそうだ。すでに、2月14日に開催された23回会議で配布された「作業分科会のおける検討結果(制度設計に関するたたき台)」で一定の方向性が示されており、それより悪くなることはない。
 ここでは、盗聴の拡大と室内盗聴の導入について検討を加えてる。
 昨年1月29日に開催された第19回会議で、「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」がとりまとめられた。そこでは、証拠収集手段の多様化を図り、「近時解明に困難を極めている組織犯罪にも適切に対処できるようにするとともに、公判廷での的確な事実認定に資する客観的な証拠をより広範囲に収集できるようにするため、通信傍受の対象を拡大し、その手続きの合理化・効率化を図るほか、一定の場面に限定した会話傍受についても検討を行う」とし、「通信傍受法の成立時と対比して、携帯電話を含む通信手段が著しい発展を遂げ、国民生活はもとより犯罪の遂行に当たっても大きな役割を果たすようになっている。そして、振り込め詐欺のように,通信傍受法の施行後に新たに発生した犯罪事象が社会問題化し、これに対する有効な対策を講じる必要があるほか、強盗や窃盗などについても犯罪の組織化が進んでいると指摘される。通信傍受は、これらの犯罪を解明するに当たっての極めて有効な手法となり得ることから、通信傍受の対象犯罪を拡大して、振り込め詐欺や組織窃盗など、通信傍受の必要性・有用性が高い犯罪をも含むものとすることについて、具体的な検討を行う。
 その具体的な在り方については、犯罪者が捜査機関による取締り状況に対応してその手口を進化させていくものであること等にも留意しつつ、例えば、略取・誘拐、通信を媒介にして行われる犯罪など、通信傍受の活用が必要な犯罪をきめ細かく抽出する方法により検討を進める。それと同時に、詐欺や窃盗一般を対象犯罪とするのは広範に過ぎるので、振り込め詐欺や組織窃盗など実際に問題となる犯行態様に対応できる要件により絞込みをかけるべきとの意見や、最高裁判例(最三小決平成11年12月16日刑集53巻9号1327頁)が通信傍受法制定前の検証令状による電話傍受の要件に関し、「重大な犯罪に係る被疑事件」と判示している点も考慮する必要があるとの意見もあったことから、こうした指摘も踏まえて検討を進める」とし、盗聴の拡大をすでに容認していた。
 また、室内盗聴についても、「会話傍受については、①振り込め詐欺の拠点となっている事務所等、②対立抗争等の場合における暴力団事務所や暴力団幹部の使用車両、③コントロールド・デリバリーが実施される場合における配送物の3つの場面を念頭に置き、指摘される懸念をも踏まえて、その採否も含めた具体的な検討を行う」としていた。
 これに対して、「たたき台」では、より詳細に検討し、対象とする犯罪を列挙するようになった。それは、次の通りである。
 第1 対象犯罪の拡大  考えられる制度の概要
1 通信傍受の対象犯罪に以下の罪を加えるものとする。
(1)① 刑法第108条(現住建造物等放火)の罪及びその未遂罪
  ② 刑法第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
③ 刑法第204条(傷害)及び第205条(傷害致死)の罪
④ 刑法第220条(逮捕及び監禁)及び第221条(逮捕等致死傷)の罪
⑤ 刑法第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐、身代金目的等所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
⑥ 刑法第235条(窃盗)、第236条第1項(強盗)及び第240条(強盗致死傷)の罪並びにこれらの罪の未遂罪
⑦ 刑法第246条第1項(詐欺)、第246条の2(電子計算機使用詐欺)及び第249条第1項(恐喝)の罪並びにこれらの罪の未遂罪
(2) 爆発物取締罰則第1条(爆発物の使用)及び第2条(使用の未遂)の罪
(3) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」とい う。)第10条第1項(犯罪収益等隠匿)及び第2項(未遂罪)の罪
 さらに、対象犯罪に追加することが考えられる犯罪として、次のようなものを想定している。
1 組織を背景とした犯罪
(1) 児童ポルノ関連犯罪
(2) ヤミ金関連犯罪
(3) 人身取引関連犯罪
2 暴力団関連犯罪
(1) 一般国民が標的となり得る犯罪
(2) 賭博関連犯罪
3 テロ関連犯罪
4 その他
 これらの犯罪に広げることについては、あまり多くの反対意見が出されなかった。日弁連は、最初からある程度の拡大には賛成する姿勢を示し、「基本構想」に賛成したからである。ただし、室内盗聴には、絶対反対の姿勢を今でも堅持している。
 このような流れの中で出される「事務局試案」はどのようなものであろうか。
 それについては、至急検討し、私見を発表するであろう。