日本から3頭も挑戦者が挑んだ年のなので、簡単ながら私的な感想を書いておきたいと思います。
まず全体的な総括としては、今年の凱旋門賞はトレヴのための凱旋門賞だったというのが納得のオチ。
トレヴのヘッド氏は昨年優勝後のインタビューでこう答えていました。
『日本馬については「オルフェもキズナも素晴らしかった。
日本馬はあと数年のうちに凱旋門賞を勝ちますね。
ただ、来年は無理。
トレヴがまだ現役ですから」と余裕の笑みだった。 』
見事に師は自身の発言を現実のものとしましたが、そこに至る道のりは決して平凡な道筋ではありませんでした。
昨年の衝撃的な勝利から一転、3戦未勝利で本番に臨むこととなった敗因は脚元の不安と腰の痛み。
しかしレース直前のインタビューではそれが改善されつつあったようで
『今年は脚元の不安、背中の痛みとふたつの問題があった。
でも馬は前走よりもどんどん良くなっている。
ここまで良くなるとは思っていなかった。
準備は整った』
と発言しています。
トレヴと陣営にとって今年は他馬との戦い以前に、自分達との闘いだったのでしょう。
ジャルネ騎手は昨年の優勝後、デットーリ騎手に手綱を譲りましたが、前走からコンビ復活しての勝利。
レース後に涙を流しましたが、今年精彩を欠いたトレヴの姿を見かねて自ら騎乗を志願したという話もあるようで、あの涙の理由も納得。
レースも勝つためにはこれしかないという覚悟が伝わる完璧な内容。
凱旋門賞4勝という最多記録を飾るに相応しい素晴らしい騎乗でした。
そんなわけでトレヴの周囲の話を知れば知るほど、馬自身の力は勿論のこと、トレヴの周囲が一体となって凱旋門賞という目標をしっかり見据えた結果が最高の形で現れたのだと私は思います。
翻って日本馬はどうでしょう。
ここまで外野に凱旋門賞を勝ちたかったという姿勢が伝わってくるものがあったでしょうか?
少なくとも私には伝わらなかったです。
まず騎手に関しては、『餅は餅屋』という言葉通り、現地の一流を確保しておきたかったと思わずにはいられませんでした。
今年の凱旋門賞は結果を見てもわかる通り、後方から競馬した馬にはチャンスはありませんでした。
展開が向かなかったと言えばそれまでですが、今年は他頭数でのレースだったため、そうなる確率は事前にかなり予想できたはずです。
それが揃いも揃って3頭すべて後ろから行くとは…
福永騎手は距離不安を考慮して内を突く選択をしたのならもっと前につけるしかない。
何故なら日本と違い、最終コーナーで向こうの騎手は絶対に内を開けないから。
そして仮柵が外れて内が有利というのは事前に周知の事実でもあったから。
川田騎手はあの位置取りで外を回した時点で勝ちを手放したといえる。
勝ちたいのならうちが有利な時点でその距離ロスがそれほど致命的だから。
横山騎手に至っては論外。
『馬は頑張っている』と毎度のコメントを出しているが、では自分はゴールドシップを勝たせるためにいかなる努力をしたのか問いたい。
本当に勝ちたいのなら池添騎手を降ろしたオルフェ陣営や、通年で現地に挑んだエルコンドルパサーのような勝つための執念がなくてはやはり無理だというのが今年の感想。
それはトレヴの勝因と日本馬の敗因を見れば火を見るよりも明らかだと思う。
直前で現地のレースを使った方がいいとか、そんな話ではなく、凱旋門賞を絶対に勝ちたいという姿勢がまず日本の関係者には必要だと改めて思い知らされたトレヴの勝利。
今回参加した3頭がトレヴに絶対に勝てなかったとは思えない。
少なくともトレヴの位置にハープか、ジャスタウェイがいれば、勝てたかどうかはともかく日本馬の結果は大きく違っていた可能性は高い。
そしてその位置を掴む可能性を少しでも引き上げるためには、やはり現地の一流騎手が望ましい。
日本の騎手にこだわるのなら、豊さんや蛯名騎手のように、事前に経験を積むべきだ。
また一部日本のマスコミ関係者には猛省を促したい。
実況でトレヴの名前どころか、直線で1,2,3着馬の名前を一度も口にしなかったフジTV。
日本馬の惨敗・完敗という言葉を並べるだけの見出し。
トレヴの牝馬としては1937年コリーダ以来77年ぶり、77、78年のアレッジト以来となる史上6頭目の連覇達成という大偉業を祝福しない姿勢も不愉快極まる。
日本馬による凱旋門賞制覇はもう夢物語ではなく、実現可能な目標であることは長年苦楽を共にしてきたファンは良く分かってる。
あとは勝つだけなのだ。
その勝つことが如何に実現するに難しい事かは理解していますが、だからこそ必死になって欲しい。
勝者と敗者を隔てるあと少しの差、それを決めるのは結局参加した者の覚悟の差だけにしか思えないから。