ゲルマン神話に出てくる竜の一種。貪欲な人間が化けたもの。
ファーブニルは父を殺してその黄金を奪い、兄弟と分け合うことも拒否して独り占めした。だがその黄金には、持つものは必ず不幸になるという呪いがかけられていた。
ファーブニルは竜に変身して黄金を抱え込んでいたが、ある日弟レギンにけしかけられた英雄シグルズによって倒された。ファーブニルは死んでいくとき、黄金は災いと不幸をもたらすだろうとシグルズに予言した。
シグルズはレギンが自分を殺して黄金を奪おうとしているのを察知し、レギンを殺して黄金をものにする。だがそれ以後、愛する女性に憎まれ、数々の運命に翻弄されたあげく、暗殺される。
竜などの怪物を倒す英雄の話は各地にあるが、シグルズの印象は暗い。なぜなら彼は、黄金を目的として竜を殺したからである。ヘラクレスのように試練に打ち勝つためでも、スサノヲのように困っている人を助けるためでもない。
人から宝や幸福を盗もうとするものは、どんなに強い者でも必ずその反動を浴び、不幸に陥るのである。
貪欲と窃盗の象徴である。
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