百合鴎不忍池にゆるり飛ぶ
百合鴎杭の数だけ止まりけり
冬鳥の寄り来る池端昼餉時
照り返す水面の陽より鴨一羽
枯蓮の水面の影を鳥揺らし
冬うらら孫の手を引き動物園
春隣パンダ緑の笹を食む
猿二匹蚤取りし合い日向ぼこ
暖冬や水浴びしている猿がいる
冬日向孫の手の草山羊食みて
冬帽の幼ひよこに釘付けに
冬温し幼の膝にモルモット
雪吊や池の水面に映す影
冬鳥や双眼鏡手に動かざる
杜に棲む小鳥垣間見冬深む
清正の井の水手に汲む冬日かな
手に汲める湧水温き寒の水
県境川越え広がる冬木立
春めくや神宮の杜に雅楽の音
冬空へ日の本一の大鳥居
春を待つ参拝の列本殿に
春めくや巫女の手より受く菊の盃
春隣異国の人の詣でける
春を待つ絵馬のなかにも外国語
春めきて妻といっしょに代々木へと
全国の俳句大会冬の日に
春を待つ俳句大会今年また
日脚伸ぶ披講の声の朗々と
ステージの作者選者の春めける
春めきて入選の二句短冊に
冬空へ路上ライブの音響く
大寒やちらりと降れる初雪に
大寒に懐かしき友集い来て
同窓の友ら集える新年会
還暦の順を確かめ新年会
少年の面影よぎる新年会
亡き友の御霊も加わり新年会
あれこれと思い出溢れ新年会
青春の大望如何に新年会
退職の後の話や新年会
青年の気概変わらぬ新年会
再会を約する握手新年会
大寒や都会の夜の深々と
黒板に一月生れの子の似顔
子ども刷る白黒版画の雪だるま
版画絵の真白く大き雪だるま
版画絵に丸き目をした雪だるま
子ら歌う「北風こぞうのかんたろう」
時雨るるや雨脚白き通夜帰り
土間に入る囲炉裏の炭火赤々と
北風吹くや炉端に座して手をあぶる
自在鍵囲炉裏の火箸真っ直ぐに
炉の火燃ゆ自在鍵へと煙立つ
炉の火燃ゆ黒く煤けし自在鍵
自在鍵漆黒にして炉の真中
炉の火燃ゆ煤けし鉄瓶湯気白く
湯気のぼる珈琲手にして囲炉裏端
炉の火燃ゆもてなす心うれしくて
火を囲み弾む炉話赤裸々に