吹く風の肌に心地よき残暑かな
褐色の皮剥き水湧く梨の玉
語り合う茶房の窓より虫の声
手にあまる房のぶどうの大き粒
車窓開け虫の音引き連れ家路つく
廃屋の叢集く虫の声
梨を剥く水たっぷりと手に重し
風力計秋風受けてクルクルと
幼子の手をとり散歩葛の道
信州の匂いぎっちり林檎来る
葛の花揺れて葉裏の白き色
校庭の二連の蜻蛉スイと飛ぶ
風のなか猫横たわる秋の朝
六地蔵供花の白菊清らかに
町内会秋の夜風に集い来る
葛の花むらさきの濃く咲き初めし
明るかり高きにくっきり葛の花
揺れる葉に葛の紫見え隠れ
集い来て斎食供養の施餓鬼かな
施餓鬼会や新盆の家前列に
施餓鬼会の読経の響き散華舞う
処暑となる吹く風どこか心地よく
田舎より箱の膨らむ秋野菜
気に入りの水筒下げて孫帰省
鰯雲白球空へとホームラン
老い母とひねもす家居の残暑かな
煙立つジュウジュウジュウと秋刀魚焼く
北の宿夕餉の膳にわんこ蕎麦
秋涼し木洩れ日川瀬にきらきらと
竹春や新郎新婦スクリーンに
とんぼうの大き眼ギョロと我を見る
花嫁の旅立ち寿ぐ竹の春
軒下で信号待ちする残暑かな
風通る日陰へ移動す残暑かな
秋暑し命を惜しみ蝉の鳴く
向日葵や句碑傍らの花時計
北上川ゆるり流れて秋の暮れ
鈴虫や雨音絶えて音の清ら
孫娘連日部活の夏休み
渓谷の水音爽けし旅の宿
幾筋も稲田に草燃す煙立ち
風呂で九九孫に教える秋の暮れ
みちのくの風吹く中に花すすき
花巻は賢治のふるさと天の川
孫作る誕生祝いの氷菓かな