孫に手を引かれて上る春の土手
学び舎の大空数多な五月鯉
柿若葉煉瓦倉庫と相和して
みどりの日公園の土に箒の目
老い母の曾孫と生けしあやめかな
棚隠し上へ下へと藤の花
黒々とせし畑中に柿若葉
歓迎の宴の窓辺に八重桜
春の宴口大き鯛の活きづくり
くろぐろと幹あおあおと桜若葉
森の樹々それぞれの色に若葉して
並木道濡れし水木の花きよら
カラフルな子らの自転車チューリップ
元禄と刻みし石仏松の花
牡丹の咲き初む万花の王たりと
蒲公英や風吹くなかに野の祠
青空に白き腹見せ鯉幟
灯篭の辺り明るき躑躅かな
苔生せし古刹の老樹や松の芯
蹲の水澄み花のひとひらを
苧環や古刹の庭のゆかしかり
高きまで花咲く我が家の月桂樹
うたた寝の幼の握る鯉幟
筍や御代は竹の筒の中
手拍子に真顔で入場入学児
合奏の重なる音色八重桜
春の歌身振り手振りの一年生
若草や園児頬張るメロンパン
校庭の隅に明るき夏蜜柑
鐘楼の三州瓦に桜蘂
東京にゴビの砂漠の黄砂降る
開きたる句帳の白さ春の蝶
立ち漕ぎで上る坂道土筆坊
黄の花に二匹の蝶のいそがしく
学び舎の畑耕す春の子ら
大鉢の極楽鳥花花盛り
春耕の畝より昇る水蒸気
副都心幾何学模様の春の空
天めざし太く伸び行く松の芯
小枝にもたわわに咲きし八重桜
横断や小さき手挙ぐ入学子
病院の狭き花壇にチューリップ
春暁や新聞配るバイク音
歯ブラシで磨く児童や雪柳
窓辺寄りコーヒーを手に春惜しむ