青天に真白き梨花の咲き初むる
転任の別れの握手三月尽
左官屋の軽き動きや春うらら
君の星何処にありやと春の夜
春の風流線型の幾重にも
菜の花や野菜並べし直売所
蒲公英や点る堤の常夜灯
転勤の新聞発表春便り
高吟す春の川風爽爽と
花明りそぞろに歩む道百選
耕せし畝のなかにも犬ふぐり
蕾より桃色淡き桜かな
水温むザリガニはさみを振り上げて
点滴の雫の遅々と春日永
散椿掃かれし山のあかあかと
種袋どれも満開の花写真
ハワイへと旅立つ孫ら春休み
桜見にちょっと近くの公園に
知らぬ道辛夷並木の花白く
陽光を透かして五弁の桜咲く
休みつつ老い歩を進む鳥曇
桜咲く一気盛んの気配して
校庭の角の日溜り黄水仙
芽吹く樹に羽音残して鳥発てり
杏咲く花いちもんめの子らの声
富士を背の桜の蕾あかあかと
板塀の屋根の瓦に落椿
芽吹きゆく梨園の彼方富士白く
東京の開花宣言春分に
春が来た雲悠々と流れ行く
窓開けて入り来る風に春の声
あかみ帯び桜の蕾光りおり
四代が煙のなかの彼岸かな
末黒野や青むかたまり遠近に
鶯や探鳥会の双眼鏡
春の野や子ら口ずさむ童歌
つくしん坊野球少年駆け行けり
青空へ囀り高き揚雲雀
春雨や雨後を確かめ種を撒く
肩組みてカメラにポーズ卒業子
赤飯に祝卒業の胡麻の文字
しばらくは身をまかせたき春の風
駆け寄りて諸手の握手卒業子
教室に最後の富士見る卒業子
春嵐去りて月星煌々と