負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

本の外側にある真実

2004年06月15日 | 詞花日暦
コンピュータは書籍の敵ではない。
五世紀の歴史を持つ印刷文化の子供である
――J・H・マレー(MIT教授)

 一九六○年代、ジャネット・H・マレーは、マサチューセット工科大学大学院の進学資金を得るため、IBMでプログラマの訓練を受けた。コンピュータを自在に動かすプログムの作成は、まるで冷蔵庫の内奥深くにいる野生の獣とコミュニケートする魅力があった。それでも彼女の関心は小説を離れず、文学により深い真実があると思いつづけた。
 ビクトリア時代の女性を研究しながら、あるとき、この時代の偉大な小説には時代を表す真実が欠けていることに気づく。大切なことは本の外側に残されていると。彼女があらためて興味を向けたのは、コンピュータだった。「コンピュータは情報の断片があふれるだけと非難されるが、まだ飼いならされていないその機能こそ」重要だと気づく。
 インターネットが普及した現在、無名の個人が発信する情報がネット上にあふれる。がらくたに似た情報が大多数を占めると、非難されることがおおい。だが、一見無意味に見えるそれらの情報こそ、現在という時代の真実を語る「本の外側」の貴重な真実である。