地名アラカルト

各地の難読地名や珍しい地名についての由来やエピソードなどについて調べてみたいと思います。

獺の付く地名

2014年04月30日 22時07分38秒 | Weblog
   
獺(かわうそ)は,別名「かわおそ」ともいう。イタチ科の水生哺乳類。姿はイタチに似ており,体長60~80cm,体色は茶褐色。とくにウナギやエビなどの魚介類を好み,カエルや水鳥を食べるという。かつては日本全国の各地の河川や沼,池に生息し,愛きょうのある顔をもった,住民にとって身近な動物であったことなどから,獺の付く地名は現在でも30ヵ所ほどある。
しかし、獺の付いた地名で,「かわうそ」と読む地名は少ない。
「かわうそ」以外の読み方を大きく分けると,三分類できる。

①「かわうそ」の「かわ」を短縮し,「うそ」と読む。
②「かわおそ」の「かわ」を短縮し,「おそ」と読む。uso→osoが音韻変化ではないかと思われる。(語源の一つに「川にいて人をオソフ<襲>ものであるから」)
③ 特殊な読み方

①の事例としては,下記の地名が挙げられ,東日本,西日本の両地方にみられ,地域的偏りはないようである。
字獺沢 (岩手県陸前高田市) うそざわ
獺野 (秋田県能代市)    うその
獺ケ口町 (福井県福井市)  うそがくちちょう         
獺河内 (福井県敦賀市)   うそごうち
獺越鼻 (岡山県玉野市)   うそごえばな
獺ノ口 (福岡県朝倉市)   うそのくち
獺野尾 (大分県日田市)   うそのお                 
獺越 (宮崎県延岡市)    うそごえ
獺越 (鹿児島県薩摩川内市) うそごえ

②の事例としては,下記の地名が挙げられ,①と同様地域的偏りはないようである。
獺沢 (福島県いわき市)   おそざわ
獺庭 (福島県相馬市)    おそにわ
獺郷 (神奈川県藤沢市)   おそごう           
 獺越 (和歌山県東牟婁郡那智勝浦町) おそごし
獺越 (島根県大田市)        おそごえ
獺越 (島根県邑智郡邑南町)     おそごえ
獺越 (山口県岩国市周東町)     おそごえ              
獺越 (山口県周南市)        おそごえ

③の事例としては,下記の地名。
獺台 (千葉県長生郡長生村) かおすだい  
獺ケ通 (新潟県新潟市南区) うすがどおり

ところで,獺の毛皮は極めて高価であったために乱獲されたこや,生息地の河川などの汚染や護岸の整備などから,各地で急速に減少し,ついに「日本かわうそ」は,平成24年8月「絶滅種」に指定された。動物園でも「日本かわうそ」は見ることが出来なくなった。

獺は詩文の上でも貢献している。獺は捕えた魚を自分の周囲に並べることから,詩文を作る時,多くの書籍を左右に並べてひろげることを獺祭(だっさい)という。正岡子規は自らを獺祭書屋(おく)主人と号し,『獺祭書屋俳話』の著があり,子規の忌日(9月19日)を「獺祭忌」と呼んでいる。
 「獺魚(うお)を祭る」(獺が魚を並べることを,祖先を祭るとみたてている語),「獺の祭」「獺祭魚」は,春の季語(陰暦七十二候の一つ,正月の16日から20日にあたる)となっている。
  ・獺の 祭見て来よ 瀬田のおく 芭蕉    ・獺の 祭りも過ぎぬ 朧月   子規