
(※海ドラ「デクスター」に関してネタばれ☆があります。一応念のため、ご注意くださいm(_ _)m)
「デクスター」の1stシーズンを見ました♪
>>“冷凍庫キラー”と称された犯人による奇怪な連続殺人事件がマイアミで発生。デクスターの秘密を知るらしき殺人鬼は、まるで彼を挑発するかのように犯行を重ねていく。一体、“冷凍庫キラー”の正体とその目的とは……?
というのが1stシーズンのあらすじで、ドラマとして限りなく完璧というくらい、あらゆる意味で「すごくよく出来てる」と感じたというか。
そしてこの場合の「すごくよく出来てる」の意味は、何かこう上から目線の物言いではないのです(^^;)。何分、主人公が殺人衝動を内側に抱えているがゆえに、「あらゆる意味で黒
」という悪い人間を見つけて始末してゆくわけですが、でもやっぱりドラマであるがゆえに「かといって、やっぱ殺人はあかんやろ
」と普通はなってしまうと思んですよね。
ところがこの主人公の「正義の殺人者デクスター」、見てるこちらでも「うんうん、そんな奴は死んだほうがええやろ」という人間を選んで殺していますし、そのあたりの製作陣のシナリオや演出の手綱の締め具合っていうんでしょうか。そのあたりが実に見事で、ちゃんと殺人者であるデクスターに見ている側が共感できる形でお話のほうは進んでゆきます
また、デクスターが何故そのような殺人衝動を持つに至ったか、引き取ってくれた里親の警官が、警官なのに「殺人衝動を抑えられないこと自体」は仕方ないとして容認し、デクスターが今後どうすべきかについても指南しているのは何故か――最後まで見終わる頃にはきちんと納得できる構成になっているところもスゴいと思います
「冷凍庫キラー」という、血も涙もない連続殺人鬼が完全にも近い形で次々殺人を犯していくわけですが、デクスターは警察の鑑識課で血痕鑑識官として働いており、その血液の完全に抜かれた死体を見て感嘆する。「自分よりも上をいく殺し方じゃないか……!」と、そう思って。
また、そのことを通し、「冷凍庫キラー」が同じ殺人者として自分にメッセージを送ってきているとも気づくデクスター。そして、確かにデクスターは「警察の鑑識官」という表の顔を持つのと同時、裏の顔は「殺人者」であり、「自分は本当の意味では何も感じていない」という虚無感を心の内に抱え悩んでもいる。
果たして「冷凍庫キラー」も自分と同じなのかどうか……ドラマの途中でそのことにもはっきり答えが出ます。そして、確かに殺人者として「冷凍庫キラー」が自分の上をいっていること、それが何故なのかの理由についてまでも――視聴者が納得できる答えが出て終わるところまで、すべてが見事です
他に、マイアミ警察内における人間関係のいざこざの描き方などもリアルさがあってすごく面白いただ、特段人に薦めようと思わないのは……割と全体として笑えるコメディ要素も多いながら、描写的に「こういうの苦手
」という方もいらっしゃるんじゃないかなって思うからなんですよね(^^;)
なんていうか……「CSI」のシリーズが大ヒットしたのって、個人的にはストーリー展開がスピーディで描き方がスタイリッシュだったからなんじゃないかな、なんてありきたりなことを思うわけですけど(笑)、「デクスター」はそこに「殺人における不快さ」をプラスして描くことを忘れてない気がするんですよ。
殺人というものは決してスタイリッシュなものではないし、そうした描き方をしてもいけない……という、最後に違和感や気味の悪さ、不快さについてもあえて残す――といったところまで計算されてるように感じられるところ、それが「デクスター」というドラマが「よく出来てる」と感じると同時に、「ちょっと人を選ぶ作品だなあ」という意味で、人にはあんまし強く薦められない気のするところだったり
ちなみに今、シーズン2を視聴中なのですが、自分的感触としては1stに劣らずとても面白いです!!
それではまた~!!
↓いつも字幕で見てるんですけど、吹替版も超素敵!!
↓デクスターの次というのがなんですが、一応貼っておこうかと(^^;)
永遠の恋、不滅の愛。-【6】-
人が<カリブ海>と聞いて思い浮かべるのは、どのようなことだろうか。海賊、バミューダトライアングル、奴隷貿易、キューバ革命、フィデル・カストロやチェ・ゲバラ、レゲエにサルサ、ボブ・マーリーの「One Love」、タックスヘイヴン……正直、俺も西インド諸島へやって来るのはこれが初めてなため、何もわかってなどいなかった。
ただ、七千以上もあるという島のひとつ、オカドゥグ島について言えば――よくこんな崖ばかりの無骨な島に誰か人を招待しようと思ったものだなと、一目見て呆れてしまうほどひどい場所だったといえる。もし俺が十八世紀くらいに活躍した海賊の一味で、何かの裏切りの濡れ衣でも着せられ、こんな場所へひとり取り残されたとしよう。仮に食糧に出来そうな植物や動物の存在が確認できたにせよ、ロビンソン・クルーソーとは違い、俺はその日から一週間としないうちに自殺を決意したろうことはほぼ間違いない。そのくらい殺風景で『何もない』といったようにしか感じられない場所だった、このオカドゥグ島というところは。
ジェット機が着陸するという時にも、素人見にも滑走路が短いように感じられ、その時点で俺はパニックになりそうになったほどだ。それは他の良識ある機内の人々――ロドニーやフランチェスカ、のちにモーガン・ケリーと名前のわかる女性にしてからがそうで、唯一窓外の景色を変わらず楽しんでいたのはミカエラひとりだけだった。
「こんなところまで連れてきて、あたしたちを殺す気!?」
フランチェスカはシャネルのサングラスを床に叩きつける勢いだったし、モーガンは「飛行機で事故が多いのは離着陸時なのよっ」と叫び、ロドニーは「オレは帰るっ。女房に頭でもなんでも下げて家に帰るっ。それで、恐妻家としての楽しい老後をまっとうするんだあっ」などと、本音を吐露していたものである。
一方、シートベルトを締めるよう言い渡しにきたミロスは、珍しくポカーンとした顔をしていたものである。それから彼は一同を落ち着かせるように、ひとりひとりの肩あたりをがしっと掴み、それぞれの席に静かに着席させていった。モーガン・ケリーに対しては「あなたの情報は古い昔の話ですよ」と、にっこり笑って否定していたものである。「このジェット機を操縦しているのは自動車などと同じくロボットです。確かに、昔の民間旅客機などは飛行機の離陸時と着陸時は人が手動で行っていたという話ですからね。それ以外では概ねオートパイロットで操縦がされており、離陸して目的地を設定すれば……パイロットたちは天候その他異常がなければ、その後は着陸するまで大してやることはなかったそうです。ところが今ではこの離着陸時の操作についてもロボットのほうがヒトよりも安全に行えるようになったというわけで、私はすでに何十回となくカリブ海に浮かぶあちこちの島へ出かけていますが、ロボットの自動操縦に一度として命の危険を感じたことはありません」
このあと、ずっと窓にへばりついて、いかにも絶海の孤島といった風情のオカドゥグ島を眺めていたミカエラが、くるりと振り返ると無邪気にこう言った。他の四人の動揺などどこ吹く風といったように。
「ねえ、テディも一緒に見てっ。なーんか黒々&ゴツゴツした岩山ばかりって感じの醜い島だけれど、建物自体はとても素敵そうだわっ。ミロスの話じゃテニスコートも大きなプールもあるってお話だったでしょ?わたしたちきっとその気になれば、こんな島でも十分楽しめるんじゃなくって?」
五人の中で一番頭の弱そうなアーパー女が一番落ち着いて見えたせいだろう。ミカエラのこの言葉によって一同は冷静になり、それぞれの席にてようやくシートベルトを締めはじめていた。
ミロスの言葉通り、岩山の間を無理に切り開いてコンクリート製の滑走路を整備した――といったような場所に、ジェット機のほうは無事ランディングのほうを完了し、その着陸のほうは安全かつ滑らかとさえ言えるものだったである。
ロドニーもフランチェスカも無駄に取り乱してしまった決まり悪さからだろうか。その後、こちらもロボットが自動運転する地上車に乗り込むまで、暫くの間無言だったものである。車は二台のランドローバーに分乗して乗るといった形で、一台目にミロス、それにフランチェスカとロドニー、二台目に俺とミカエラ、それにこの時点では名も知らぬブロンドのひっつめ髪の中年女性といったところだった。
俺は黒のランドローバーの後部席にミカエラと乗り込んだため、自然、前の座席に座った中年女性のことを斜め後ろから観察できる位置に落ち着いていた。荷物のほうは先に小型輸送機に乗せ(言うまでもなく、これもまたロボットによる自動操縦である)、一足先に宿泊施設のほうへ届いているといったような具合だった。
「最初にイメージしてた場所と全然違うわねえ」と、ミカエラはゴツゴツした岩場を揺れながらランドローバーが進むうち、やはり少しだけがっかりしたようだった。気持ちはわからないでもない。俺にしても、そこに水着姿の美女たちがいるとまでは思わなかったにせよ、それでも美しい砂浜のビーチ、気だるげに揺れる椰子の木、カリビアン・ブルーの水面に輝く陽光――そうしたジャマイカやハイチ、バハマ諸島のような場所をイメージしていたから、こんな岩場ばかりの島にこれから三か月近くいることを思っただけでうんざりした。唯一、ジェット機から遠く眺めたホテルのような建物を見て、心が慰められなくもなかったが……。
ブロンドの中年女性のほうは俺ともミカエラとも一切接点なぞ持ちたくないといった面持ちで、ただ黙って尻の揺れに耐えているようだった。ミカエラなどは時折「きゃんっ」とか、「もうやっ」とか叫びつつ、隣の俺のほうに体を寄せてきたものだったが――俺としては機内でもそうであったように、(これは一体どこまでが演技なんだろうな)などと、冷静に考えるのみだったのである。
だってそうだろう?俺は今までの人生でただの一度としてモテたことなぞないとまで言うつもりはないが、それでも彼女のように可愛いタイプの女性に一目惚れされるといったタイプでは絶対ない。となれば、ミカエラには必ずなんらかの目的があるはずなのだ。とはいえ、彼女に腕を組まれて悪い気はしなかったし、どの程度の距離感でいるべきなのか、俺はこの時点ではまだ考えあぐねていたわけである。
と同時に、ランドローバーで移動中の二十分ほどの間、俺は斜め前にいるブロンド女性に話しかけようかどうか迷っていた。『ここはざっくばらんにお互い話したりしませんか?』との言葉が喉まで出かかっていたが、俺の被害妄想でなかったとすれば、彼女はミカエラに対しては『何よ、このバカ女』という視線で見ていた気がするし、俺に対しては『そんなバカ女にすり寄られてニタニタしているバカ男』といった、そんな評価だったように思えてならない。
結局俺は、のちにモーガン・ケリーと名前のわかる女性が発する『必要な時以外話しかけるな』という強いオーラの壁を突き破ってまで話しかけるような勇気もなく、ただミカエラが車が揺れるごと、どこか大袈裟に抱きついてこようとするのを押し戻すという、そんなことを終始繰り返していたわけである。
もっともこの、ロドニー言うところの『もしヒューマノイドだったとしたら残念なおばちゃん』は、最初に殺人疑惑事件が起きて以降、実はマイアミ警察の殺人課の警部であることがわかるのだが……。
* * * * * * *
オカドゥグ島はその外観自体は醜かったかもしれないが、屋敷――ではなく、どう見てもホテル――のほうはとても快適だった。唯一、ホテルからビーチまで歩いて三分か五分といったように隣接しているのでないのは残念だったが、理由についてはすぐ了承されたものである。誰かにそのように説明されたわけではないが、ここは豪華ホテルではなくあくまで研究施設であることが思い出されていたからだ。
しかもこのホテルのほうは内装や家具などがアンティークなそれによって統一されているせいで、伝統ある三ツ星ホテルといった雰囲気を強く醸しだしていたのだが、唯一外観のみ古ぼけていて建物自体にはあまり魅力がないように見える。それもおそらく、空の上からでも海上からでも――「あの素晴らしい場所はなんだろう」、「一体誰が所有者なのだろうか」などと、無用な関心を惹かないための用心なのではないだろうか。
フランチェスカなどは車から降りてホテルの前に立った時、「ジェット機の窓から見た時はそこそこ素敵そうに見えたのに、なんかただの古くさいホテルって感じね」と、さもがっかりしたように口にしていたものである。とはいえ、前庭にはハイビスカスやアマリリス、プルメリアに色とりどりの蘭の花など、熱帯地方に特有の植物が鬱陶しいまでに生い茂っており、俺はそれを見た時点で随分気分がよくなっていた。海岸まで出ていくには岩場を越えて十分はかかりそうだったが、それでも波の音自体はここまで聞こえてきており、このホテルのような七階建ての建物であれば――おそらく三階くらいからでも海を十分見晴るかせるに違いない。
唯一ネット環境がないというところだけ玉に瑕どころでなく大きな傷のように思われたが、そう覚悟してやって来たのでもあるし、禁断症状が出たような時には(デジタル・デトックス、デジタル・デトックス……)とでも、呪文のように唱えて耐える以外にないということになるだろう。
エントランスを通りすぎ、ロビーに足を踏み入れると、そこはちょうどホテルのレセプションのようになっていた。無論、我々は宿泊料を支払う必要などないはずであったが、すでにヒト型でない制服を着た単純労働用ロボットが荷物をカウンター前に運んでくれていたものである(その昔はこうしたホテルのボーイにチップを渡していたということだが、今はもうその文化も廃れてしまって久しい)。
ロビーには、棕櫚や胡蝶蘭の鉢植えの間にいくつもの絵が飾られていた。ゴッホやゴーギャン、ルノワール、マネやモネ、ベルト・モリゾなど、何故か印象派の画家の絵が多い。ロドニーはマネの『草上の昼食』の絵の前に立ち、フランチェスカはモネの『日傘をさす女』を何気なく見、ミカエラはゴッホの『ひまわり』を「わあ~、可愛い~!!」などと感嘆しながら見上げていた。俺はそんな彼らを廊下から見渡せるような立ち位置におり、『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』という、ゴーギャン畢生の大作を眺めていた。
モーガン・ケリーはロビーの前に並ぶ小テーブルの前で籐椅子に足を組んで座り、タバコをぷかぷか吹かしているところだった。おそらく絵画になぞまったく興味がないか、疲れているか、あとからいくらでも見れるのだからと思っているか、それとも他の招待客と距離を置きたいかのいずれかであったろうと思われる。
部屋のほうはすでに割り当てが決められており、とりあえずそのことについて文句を言う者はなかった。ただ、俺自身は二階の一室へ通された時点でテンションがだだ下がりではあった。最低でも三階以上がよかったし、自分よりも上の階へガイドロボットとともに上がっていくロドニーとフランチェスカとモーガン・ケリーが羨ましくもあったのだ。
「ねえテディ、喜んで!!わたしたち同じ階の隣同士よ」
(はあ!?)と、ターコイズブルーの海のような絨毯を踏みしめつつ、俺は頭が痛くなってきた。これはやはり何かの陰謀が最初から仕組まれているとしか思えない。
唯一の救いは、与えられた部屋のほうからでも海は見ることが出来、そこから爽やかな風と波音が入ってくることと、想像していたとおり室内が豪華なアンティーク品によって統一されていたことだった。ほとんど都会にある一流ホテルのスイートと言っても通るくらいだったのだから。
「君は隣のそっちの部屋だろ?なんでついてくるんだよっ」
流石に俺も切れ気味になってそう言った。これはここまでやって来るまでの間に俺が考えた可能性のひとつということなのだが――たとえばこんな話はどうだろうか?実はミカエラはミロスの愛人か何かで、彼から俺に張りついて様子をよく見張れとでも言われているのではないだろうか?
そんなふうに考えると俺の中では色々なことが腑に落ちたことから……隣同士の部屋だろうとなんだろうと、金輪際このアーパー女のことは用心して必要最低限話すまいと心に決めていた。とにかく他の招待客も全員が勢揃いし、事態がどのような方向へ流れていくかを見極めるまでは――それが最善策というものだった。
とはいえ、俺はこの時本気で部屋を替えてもらおうかと思ったほどだった。天蓋付きベッドのある広いベッドルームの他に、居間に相当するようなバルコニー付きの部屋、それに隣にもう一室、クローゼット付きの衣装部屋のようなところがあるのだが、こちらに隣の部屋へ続くドアがあり、アンティークな鎖と鍵によって出入りできないようになっている。そして、ミカエラはそのことに気づくなり隣側からドアをドンドン叩いていた。
「ねえっ、テディ、聞こえる~!?こんな鎖いらないのに、一体なんなのかしら。あとでミロスにでも頼んで外してもらいましょおねえ~!!」
「いや、いいっ!!ミカエラ、君は君でそっちでひとり静かに過ごしてくれっ。俺のことは一切構わなくていいからっ!!」
「そうお~?ミカエラ、しょぼ~ん……」
何故か俺はこの時良心が痛んだが、(結局これで良かったんだ)と自分を納得させることにした。これはあとからわかったことだが、この大きなクローゼットのある場所とミカエラの王女さまが眠るような寝室とは扉一枚を隔てて通じているのだった。そのことが翌日にわかって以降、俺は大切なものはここに置かないほうがいいのだろうと考えた。ミカエラが実はこの豪華ホテル側の人間で、俺の持ち物を何か盗むと本気で思っていたわけではない。ただ、そんな形で彼女のことを疑うのも嫌だったし、何分これだけ広い建物なのだ。俺が外に出ている間(たとえば海辺の散歩など)、何か大切なものをうっかり失くしたとしよう。その場合、可能性として高いのはホテル側の人間なりロボットなりが盗みに加担したと想像すべきではある。だが、ミカエラにそのように疑いがいくよう仕向けるということだって――彼らには十分可能なはずだった。
とにかく、オカドゥグ島に滞在中、俺はこんなふうに疑い深く色々なものや事柄、人々を観察して過ごした。そして時々、同じように観察者の目で全体を眺めるモーガン・ケリーの視線に気づくことがあったものだ。だが、俺はそのことについてはどうとも思わなかった。何故といって、彼女が百万ドルを本気で狙っているにせよそうでなかったにせよ、こんな絶海の孤島のような場所までわざわざやって来たということは――目的がなんであれ、多少なり鑑識眼のある注意深い人間であればそうするのが当然というものだったからだ。
>>続く。