1999年1月20日水玄舎 特装本Aセット22/50
AセットとBセットの2種類があり、それぞれにオリジナル銅版画3点が添付されている。もちろんAとBでは異なる作品が添付されている。価格は数万円だと思う。もう忘れている。何故、数万円だと思うのかというと、それは、おいらがAとBの両方のセットを所持しているからだ。
これは武田史子さんの銅版画のカタログ(目録)に3点のオリジナル版画がついているのだ。
カタログレゾネはコレクターにとってはバイブルみたいなものだ。何年に何部製作されているか、エディション・ナンバーの付かない作品(AP版、EC版、PP版など)は何部あるのかなどの情報が網羅されている。
カタログレゾネ【(フ) catalogue raisonne】〔説明付きの目録の意〕
ある美術家の全作品を時代別,主題別などに分類・整理した目録。また,ある美術館所蔵の全作品を時代別・作家別などに分類・整理した目録。全作品目録。三省堂 『ハイブリッド新辞林』
例えば、本の装丁に使われた『アランフェスの庭』は、イメージ・サイズが42.7cm×24.5cmで技法はエッチング・アクアチント、EDは30部、1991年製作雁皮紙に1版1色1度刷だと言うことが分かる。今気づいたがこのカタログレゾネにはAP版などの記載が無い。レゾネとしては不完全だ。だが武田史子さんの最初のカタログレゾネには違いない。
他の、例えば柄澤齊さんのカタログレゾネは、AP版などの記載がある。
AP版だけではなく何と言う本の装丁や挿画に使われたかなども分かる。「レゾネの何ページに載っていた」と言えばそれだけで作品の真作が保証されたようなものだ。
だが中にはサルバドール・ダリのような場合がある。
彼の作品はレゾネに載っていても1960年代半ばまでの作品には贋作の可能性が付きまとう。ダリ自身が自分の生徒の作品にサインなどしている場合があるのだ。ダリの作品には真贋問題が付きまとう。
話を武田史子銅版画作品集に戻す。
レゾネとしての価値は劣るものの、銅版画を買わなくても自宅で眺めている分には問題ない。おいらはこの作品集を見て『密かな穫り(みのり)』をシートで購入した。AP版だったけれど。
一般的にはAP版などは正規のエディションが付いている作品よりも価値が下がるとされている。
が、まれにはAP版などの方が高い値段で取り引きされる(限りなく0に近い)。
武田史子作品では『密かな穫り』の他に、初期の代表作『道しるべⅠ』もAPで入手している。
一体どのくらい正規エディションの付かない作品が存在するのか。作家や作品によって異なるようだ。多くて精気エディションの30%位だろうか。AP版=アーティスト・プルーフはそもそも非売品で作家の手元に置かれていなければいけない作品なのにどうした訳か流出して流通に乗る。