「にゅう」って、知ってる?
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ちいさなお山の名前。
南北に長い八ヶ岳連邦の中ほど、主脈を東に分けた尾根にあって。
僕は、以前、歩いたことがあった。
その山名はなんとも変わっていて。
地図によっては「にう」と書いたり、カタカナで「ニュウ」と書いたり。
漢字ではどう書くんだろう?
丹生?とか?
第一、「~山」とも「~岳」とも言わないなんて。
変な名前だ、と思っていた。
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白駒池の周りの苔むす森を歩いていると。
木道が、山の方へ分岐していて。
看板が目に飛び込んできた。
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← 乳(ニュウ) <クリックすると画像>
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えっ?
乳(ニュウ)?
…意外だった。
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「乳」かあ…。
ようやく漢字表記が判ったのだけれど。
なんだか釈然としない気持ち。
それでも、その時すっかり苔に夢中になっていた僕は、とにかく、先を歩いた。
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開けた池のほとりまで来て。
振り返って「にゅう=乳」の方を眺めてみる。
以前に登った、その山は。
苔の森から続く静かな森が、なだらかな斜面をなしていて。
その頂上付近だけは、ゴツゴツとした岩場が突き出ていた。
なだらかにふくらむ稜線に。
岩場がちょこんと突き出ている。
・・・なだらかなふくらみに、ちょこん・・・
…あ。
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山。
ゴツゴツと険しくて、天を突くような、いかにもカッコイイお山。
そんなお山には、往々にして「~岳」「~峰」「~嶺」なんていった、ガッツリした、名前が付いている。
峻厳。雄々しさ。
一方で。
たおやかでやさしい美しさをもったお山もある。
そうしたお山は、なだらかな稜線、ほの暗い森、柔らかな光、潤う水、輝く命たちを内包して、静かに佇んでいる。
柔和。ふくよかさ。
“美しいヒト”。
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あの山は、にゅう。
そうか。
優しいあのお山は、「にゅう」か。
名付け親は、きっと、山に入り、山を生きた、粗野かつロマンティストな、男衆だろうな…。
雄々しい山に挑むのも男なら。
優しいお山に抱かれる夢を見るのも、また、男なのかな。
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追記:
今回のお話は、僕の大切な趣味:山歩き中の物思い(妄想)。
「乳(にゅう)」の山の名について、正確な由来をご存知の方、どうぞお知らせ下さい。
コメント、お待ちしています。
追記2:
山歩き、登山をするひとの中には、「ピークハンター」とでもいうようなタイプの人がいる。
頂を極めることにこだわる。
山が険しければ険しいほど燃える、とか。
「今年こそ穂高をモノにするぞ」とか。
「100名山を制覇しました」とか。
「7大陸最高峰を征服」とか。
ひとそれぞれ、好き好きだから、もちろんそれもよし。
でも。
僕は、違うな。
険しいお山の登り下りも楽しいけれど。
お山の頂上から眺める景色は素晴らしいものだけれど。
時には山頂直下で引き返してもいい。
険しい山と対峙しようとも思わない。
自然を「征服」、だなんてゾッとしちゃう。
お山に。
森に、沢に、木々に、苔に。
しっとりと柔らかく、暗く湿った、その深みに分け入って。
山に抱かれて。
その恵みに預かって。
やさしいお山に遊んだり、やさしいお山に遊ばれたりするのも、僕は好きだな。
追記3:
参考図書
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追記4:
以前、通っていたクラブに、顔馴染みがいた。
彼はスリムでベイビィ・フェイスで。
いつもクールでナイス。
そして、いつも可愛いコを連れていた。
だいぶ年上だったけれど、なぜかウマが合って、いつも他愛のない話をした。
ある晩のこと。
僕が連れていた彼女がドリンクを取りに行った隙に。
僕の耳元で、彼は言った…
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「大柄な女はいいよ」 (巨女崇拝など)
山をチチとは。。。(笑)
でも
そんないい方(にゅう)するなんて 知らなかった。
ふ~ん そっか~~
>そんないい方(にゅう)するなんて
ズバリ「おっぱい」という名の山、ってんですから、スゴいですよね。
>山をチチとは。。。(笑)
まったく、男って。
ちょっとふくらんでれば、すぐ妄想(笑)。
でも。
お山は、雄々しさ・峻厳さと共に、女性的な美をも併せ持っている、というのは、深い事実だなあ。
してみると。
富士山の木花咲耶姫など、古来、女神を戴く山も多い、ってのも、なんだか、頷ける。
空に突き出た岩が雨を呼び。
深い森が命を育む。
山。
両性具有の美、かも。
『氷壁』を読んだ方は。
男らしさの美しさと滑稽さ、男の逞しさと女々しさを感じたりするかも。
…そんな辺りが、今回のこのお話です。
>男って お馬鹿さん。
そうした男のお馬鹿ぶりを笑ってくれる女性に、これまた男は弱いんだな。
コメント、ありがとうございました。