21.11 日本語と英語で、使われている体の部分が異なる例
ほぼ同じ意をもつ日本語と英語の慣用句であって、両者で使われている体の部分が異なる例を示す。
(1) 足を洗う wash one's hands of something [someone]
洗う体の部分が日本語では「足」であるのに対し、英語では「手」になっている。21.10-(46)に示したように、悪事に手を染めることを英語では「dirty one's hands」、日本語では「手を汚す」という。悪事をやめてまじめな生活に入るとき、英語では汚した「手」を洗うのに対し、日本語では汚した「手」ではなく「足」を洗うところが面白い。
(2) 頭数を数える count nosess
「人数を数えること」を日本語では「頭」、英語では「鼻」を使って表現している。ただし、21.10-(4)に示したように、英語では「count heads」と、日本語と同じように「頭」を使うこともある。
(3) 頭のてっぺんからつま先まで from head to foot
「全身」を表すのに日本語の「頭」と「つま先」に対し、英語では「頭」と「足」を使っている。ただし、21.10-(6)に示したように、英語では「from head to toe」と、日本語と同じように「頭」と「つま先」を使うこともある。
(4) 頭を絞る rack one's brain(s)
「懸命に考えること」を日本語は「頭」、英語は「脳」を使ってたとえている。ただし、21.10-(50)に示したように、日本語では「脳みそを絞る」と、英語と同じように「脳」をつかうこともある。
(5) 頭をよぎる cross someone's mind
考えなどがちらりと横切るところは、日本語では「頭」、英語では「心」となっている。ところで、愛や悲しみなどの感情の宿る心は「heart」であるのに対し、理知的に考える心で、「頭」や「頭脳」と言い換えることもできるのが「mind」である。その意味で両者は近い表現であるといえる。
(6) 腕を試す try one's hand at something
「腕」と「手」の違い。「手」も「腕」も技量や技のことを指しており、発想は同じである。
(7) 顔色一つ変えない not bat an eye not turn a hair
「まったく動じないこと、平然としていること」を日本語は「顔」に対し、英語は「目」あるいは「髪」を使ってたとえている。
(8) 肩を並べて neck and neck
「肩」と「首」の違い。ただし、21.10-(17)に示したように、英語では「shoulder to shoulder」と、日本語と同じように「肩」を使うこともある。
(9) 気骨がある have a backborn
「自分の信念を守ってどんな障害にも屈しない強い意気」を、日本語は「骨」、英語は「背骨」を使ってたとえている。「骨」と「背骨」のわずかな違い。
(10) 牙をむく show one's teeth
「攻撃的な姿勢をみせる、威嚇すること」を日本語は「牙」、英語は「歯」を使ってたとえている。「牙」と「歯」のわずかな違い。
(11) 肝に銘じる take something to heart
「あることを決して忘れぬよう深く刻む体の部分」として日本語は「肝」、英語は「心臓(心)」を選んでいる。
(12) くしゃみが出る one's ears burn
「噂さをされた時」の体の部分の反応。人に噂さをされると、日本では「鼻」が、欧米では「耳」が反応するようである。人に噂さをされると耳がほてるという俗説はローマ時代からあり、右の耳がほてる時はよいうわさ、左の耳がほてる時は悪いうわさ、ともいう。
(13) 口がきけるようになる find one's tongue
「(特に驚いたり、おびえたり、恥ずかしがった後で)ようやく物が言えるようになること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。
(14) 口が軽い have a loose tongue
「(秘密などを)軽率にしゃべること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。
(15) 口が酸っぱくなるまで until one is blue in the face
「性根尽きるまで(話す)ということ」を日本語は「口」、英語は「顔」を使ってたとえている。くどくどといつまでも話していると日本人は「口が酸っぱくなる」のに対し、欧米人は「顔が青くなる」ようである。くどくどと聞かされたほうは「耳にタコができる」ことになる。
(16) 口が滑る a slip of the tongue
「うっかり秘密をもらすこと」のたとえ。日本語の「口」と英語の「舌」の違い。
(17) 口から出まかせに off the top of one's head
直訳は「 (自分の)頭のてっぺんから外れて」である。人がものを言う場合、頭で考え、口でしゃべる。「思いつくままよく考えもせずしゃべること」を表わすのに、日本語はしゃべる「口」を、英語は考える「頭」を選んでいるが、発想は似ている。
(18) 口先だけ pay [give] lip service to something [someone]
「口では調子のいいことを言うこと」を日本語は「口」、英語は「唇」を使ってたとえている。
(19) 口のきき方に気をつける watch one's tongue
「話し方に気をつけること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。
(20) くちばしが黄色い 尻が青い a green horn
両者とも「未熟であること」を色のついた体の部分を使ってたとえている点が一致している。日本語の「黄色」あるいは「青」に対し、英語は「緑」である。
(21) 口をつぐむ hold one's tongue
「黙っていること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。逆は21.10-(25)に示したように、「口を開く」であり、「open one's mouth」である。
(22) 首までつかる be up to the [one's] chin [ears, eyes, eyeballs]
「(借金・トラブルなどで)身動きできないこと、(悪事・悪習などに)どっぷりつかっていること」を、日本語の「首」に対し、英語は「あご」、「耳」、「目」あるいは「目玉」を使ってたとえている。ただし、21.10-(26)に示したように、英語では「be up to the [one's] neck」と日本語と同じ「首」を使うことが多い。
(23) 首を突っ込む poke one's nose in(to) something
「お節介をやくこと、余計な口出しをすること」を、日本語は「首」、英語は「鼻」を使ってたとえている。
(24) 首を横に振る shake one's head
「首」と「頭」の違い。英語の「head」は顔も含むので、両者はかなり近い表現であるといえる。
(25) 首を縦に振る nod one's head
前項と同様、日本語は「首」、英語は「頭」を使っている。
ほぼ同じ意をもつ日本語と英語の慣用句であって、両者で使われている体の部分が異なる例を示す。
(1) 足を洗う wash one's hands of something [someone]
洗う体の部分が日本語では「足」であるのに対し、英語では「手」になっている。21.10-(46)に示したように、悪事に手を染めることを英語では「dirty one's hands」、日本語では「手を汚す」という。悪事をやめてまじめな生活に入るとき、英語では汚した「手」を洗うのに対し、日本語では汚した「手」ではなく「足」を洗うところが面白い。
(2) 頭数を数える count nosess
「人数を数えること」を日本語では「頭」、英語では「鼻」を使って表現している。ただし、21.10-(4)に示したように、英語では「count heads」と、日本語と同じように「頭」を使うこともある。
(3) 頭のてっぺんからつま先まで from head to foot
「全身」を表すのに日本語の「頭」と「つま先」に対し、英語では「頭」と「足」を使っている。ただし、21.10-(6)に示したように、英語では「from head to toe」と、日本語と同じように「頭」と「つま先」を使うこともある。
(4) 頭を絞る rack one's brain(s)
「懸命に考えること」を日本語は「頭」、英語は「脳」を使ってたとえている。ただし、21.10-(50)に示したように、日本語では「脳みそを絞る」と、英語と同じように「脳」をつかうこともある。
(5) 頭をよぎる cross someone's mind
考えなどがちらりと横切るところは、日本語では「頭」、英語では「心」となっている。ところで、愛や悲しみなどの感情の宿る心は「heart」であるのに対し、理知的に考える心で、「頭」や「頭脳」と言い換えることもできるのが「mind」である。その意味で両者は近い表現であるといえる。
(6) 腕を試す try one's hand at something
「腕」と「手」の違い。「手」も「腕」も技量や技のことを指しており、発想は同じである。
(7) 顔色一つ変えない not bat an eye not turn a hair
「まったく動じないこと、平然としていること」を日本語は「顔」に対し、英語は「目」あるいは「髪」を使ってたとえている。
(8) 肩を並べて neck and neck
「肩」と「首」の違い。ただし、21.10-(17)に示したように、英語では「shoulder to shoulder」と、日本語と同じように「肩」を使うこともある。
(9) 気骨がある have a backborn
「自分の信念を守ってどんな障害にも屈しない強い意気」を、日本語は「骨」、英語は「背骨」を使ってたとえている。「骨」と「背骨」のわずかな違い。
(10) 牙をむく show one's teeth
「攻撃的な姿勢をみせる、威嚇すること」を日本語は「牙」、英語は「歯」を使ってたとえている。「牙」と「歯」のわずかな違い。
(11) 肝に銘じる take something to heart
「あることを決して忘れぬよう深く刻む体の部分」として日本語は「肝」、英語は「心臓(心)」を選んでいる。
(12) くしゃみが出る one's ears burn
「噂さをされた時」の体の部分の反応。人に噂さをされると、日本では「鼻」が、欧米では「耳」が反応するようである。人に噂さをされると耳がほてるという俗説はローマ時代からあり、右の耳がほてる時はよいうわさ、左の耳がほてる時は悪いうわさ、ともいう。
(13) 口がきけるようになる find one's tongue
「(特に驚いたり、おびえたり、恥ずかしがった後で)ようやく物が言えるようになること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。
(14) 口が軽い have a loose tongue
「(秘密などを)軽率にしゃべること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。
(15) 口が酸っぱくなるまで until one is blue in the face
「性根尽きるまで(話す)ということ」を日本語は「口」、英語は「顔」を使ってたとえている。くどくどといつまでも話していると日本人は「口が酸っぱくなる」のに対し、欧米人は「顔が青くなる」ようである。くどくどと聞かされたほうは「耳にタコができる」ことになる。
(16) 口が滑る a slip of the tongue
「うっかり秘密をもらすこと」のたとえ。日本語の「口」と英語の「舌」の違い。
(17) 口から出まかせに off the top of one's head
直訳は「 (自分の)頭のてっぺんから外れて」である。人がものを言う場合、頭で考え、口でしゃべる。「思いつくままよく考えもせずしゃべること」を表わすのに、日本語はしゃべる「口」を、英語は考える「頭」を選んでいるが、発想は似ている。
(18) 口先だけ pay [give] lip service to something [someone]
「口では調子のいいことを言うこと」を日本語は「口」、英語は「唇」を使ってたとえている。
(19) 口のきき方に気をつける watch one's tongue
「話し方に気をつけること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。
(20) くちばしが黄色い 尻が青い a green horn
両者とも「未熟であること」を色のついた体の部分を使ってたとえている点が一致している。日本語の「黄色」あるいは「青」に対し、英語は「緑」である。
(21) 口をつぐむ hold one's tongue
「黙っていること」を、日本語は「口」、英語は「舌」を使ってたとえている。逆は21.10-(25)に示したように、「口を開く」であり、「open one's mouth」である。
(22) 首までつかる be up to the [one's] chin [ears, eyes, eyeballs]
「(借金・トラブルなどで)身動きできないこと、(悪事・悪習などに)どっぷりつかっていること」を、日本語の「首」に対し、英語は「あご」、「耳」、「目」あるいは「目玉」を使ってたとえている。ただし、21.10-(26)に示したように、英語では「be up to the [one's] neck」と日本語と同じ「首」を使うことが多い。
(23) 首を突っ込む poke one's nose in(to) something
「お節介をやくこと、余計な口出しをすること」を、日本語は「首」、英語は「鼻」を使ってたとえている。
(24) 首を横に振る shake one's head
「首」と「頭」の違い。英語の「head」は顔も含むので、両者はかなり近い表現であるといえる。
(25) 首を縦に振る nod one's head
前項と同様、日本語は「首」、英語は「頭」を使っている。
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