Theta Sは残念ながらISOを上げた時のノイズ特性が良くなく、また星像もお世辞にも良好とは言えませんが、星空の撮影も可能です。 夜間に長時間かけてのタイムラプス撮影をするにはレンズが曇らないようにする夜露防止ヒーターが必須となりますが、この360度全周カメラでは一筋縄では行きません。
まず、形状からして普通の魚眼レンズの様にレンズの筒の部分がありませんから、通常のヒーター・ベルトを巻きつけるなんて方法は使えません。 第一片方のレンズは全周方向に180度視野があるので、レンズの近くに何かを付けてしまったら大きく視野に写り込んでしまいます。
そこで発想を変えて、Theta全体を暖めてしまう事を考えました。 良く見ると本体から突き出た半球形の魚眼レンズの本体に接する部分がわずかに曇りガラスのようになっています。 つまり、この高さより出なければ視野には入らない訳です。 とにかく市販のヒーターは諦めて、これ以上サイズが小さく出来ないもの、と言う事で、直接ニクロム線を巻きつけることにしました。
夜露防止ヒーターの電力(熱量)はせいぜい3~5W程度です。 レンズが外気温より1度でも高くできれば論理的に結露はしないので、ほんのり暖かくなる程度で十分なのです。 ニクロム線は一番細い物を使いますが、ホームセンターなどで入手できます。 まず、Thetaに2,3回巻きつける長さに切ってテスターで抵抗値を測ります。 約6オームありました。 6オームですと5Vを加えるとオームの法則(電流=電圧/抵抗)で約0.8Aの電流が流れます。 すると 5V X 0.8A = 4W で調度4Wのヒーターとして働いてくれそうです。
ニクロム線は半田付けができませんから、圧着チューブを使ってリード線と接続します。 ニクロム線を大切なThetaに巻きつけて熱でニクロム線がThetaの表面を溶かして食い込んでしまうような気がしますが、わずか数Wの電力ではやろうと思ってもそうは出来ません。(笑)
問題はこのニクロム線をどうやって固定するかです。 ニクロム線を固定するにはマジックベルトやラバーベルトなどを使いたいところです。 ベルトには固定だけでなく、外気に熱が直接拡散するのを防ぐ断熱の機能が求められます。
手に入るもっとも薄いマジックベルトで試してみました。 リード線はThetaの側面を這わせなければなりません。(この側面の厚さはThetaの死角ですので写り込みません) 結果は見事失敗でした。 しっかりとベルトが写り込んでしまいました。
そこで最後の手段、直接テープで固定する方法を試しました。 テープにはプロの撮影現場で良く使用されているシュア・テープを使います。 紙の様に指でちぎって貼れて、強固に固定できます。 また簡単に剥がれて剥がれた跡が全く残らない優れものです。 若干の断熱保温効果も期待できそうです。 下の写真の左側が失敗したマジック・バンド、右側が見事成功したテープ巻きの実験の様子です。
テープは適当にベタベタと貼り付けただけです。 (もっと綺麗に貼れますね) 当然ニクロム線同士がタッチしてショートカットしないように気をつけて、クロスする部分にはテープをちぎって貼り付けて絶縁してあげます。 格好も気にしないでエイヤッ!といきなり貼り付けた物でしたが結果はお見事大成功!! 右の写真の通り、自撮棒を持っている左手の周りには何も写っていません。 (帽子をかぶって撮影すれば良かった・・・)
ご覧の通り、0.79A x 5.06V = 約4Wのヒーターです。
このヒーターで星空撮影に挑みましたが、性能はバッチリです。 傍に置いたトランジスタラジオやバッテリーなどが夜露でびしょびしょに濡れているのに、Thetaには全く結露していません。 寒さで凍えた手でTheta本体を触るとなるほど生暖かく感じます。
このヒーターの最大の欠点は取り付け取り外しが簡単にできない事でしょう。(笑)
しかし、取り付けたままでも写りこまないのですから、私はこの適当に貼り付けた状態のままで昼間も撮影しています。 当然まったく問題ありません。 皆さんが製作される時には丁寧に見栄え良くテープで固定して下さいね。
※ ご紹介した内容で製作・使用された場合、Thetaへの悪影響、ニクロム線の跡が本体表面に付いたなどの可能性については弊社は責任を取りかねますので、あくまでも自己責任で御願い致します。
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