タイムラプスいろいろ

タイムラプス映像への飽くなき追求


タイムラプス・フォトグラファー 岡 浩一郎
www.skypix.jp

映像作品のBGMを自然から収録する

2020年05月03日 | 日記

今まで数多くのタイムラプス作品を制作して来ましたが、BGMは風景とマッチする音楽を探して来て出来る限りシンクロするように編集して作品を完成させて来ました。曲想と描きたい風景がマッチすると作品としての訴求力は大きく拡大し観る者の感情に深く刻まれます。映像作品の中でも特に動画は視覚と聴覚の合体したものであり、これは効果的なBGMを伴った作品の音声をカットして観てみればその物足りなさに驚くことからもすぐにわかります。

しかしこのBGMについては全く葛藤がない訳ではありません。

第一に音楽は「自分で作れない」と言う致命的な問題点です。ミュージシャンと呼ばれる方々はDTM(MIDIなどで音源を自由に操り自らの曲想で演奏して作曲する)でオリジナルのBGMを創作できますが、そうでない限り「他人様が作曲した数多くの音源の中から探し出して妥協する」と言う事になります。100%自分の意にぴったり合ったものに出会うのは不可能であり、どこかで妥協するしかありません。また公開するとなると必ずしも多くないフリーの音源から探さなければならないと言う厳しい制約があったり、ライセンス料を払うとなると選択肢は益々狭くなってしまいます。

第二に撮影現場で自然と向かい合っている時にはそこには音楽は流れていません。それなのにそこではその環境と景観に感動するからこそ撮影しようと思うわけです。このことは逆に言うとBGMをつけてしまうと、実際に撮影現場で五感に受ける空気のような感動を塗りつぶしてしまっているのではないかと思う事です。それでも良いBGMをつけて観た者が感動できればそれはそれで良いと思います。しかし私には何か大切な物を殺してしまっているのではないかとの思いがいつもありました。

例えば最近撮影したパラオの作品ではタイムラプスの他にビデオも多用しましたが、実にマッチしたBGMに出会いました。どうしてもこれだ!との思いが捨てられず高いライセンス料を支払って曲の使用権を購入しました。結果はとても満足すべき物でした。本当にこの曲を作って下さった作曲者には感謝の気持ちが一杯です。しかし、です。いくら良くてもあの時あの場で感じた世界一美しいと言われる珊瑚礁での潮の囁きや潮の香り木々のざわめきも何も聞こえてこないことにとてつもない違和感と距離感を感じるのです。わかりやすく表現すると、自分はここ日本にいてそこからパラオを覗いているのです。これはもどかしいです。自分がパラオにいてそこでパラオを見ている・感じているそんな作品であって欲しいのです。

私は「自然の中に自然の音楽が流れているんだ」とその時初めて気が付きました。

これがきっかけで今、収音に関心を高め、色々な録音機材に手を出し始める事になったのです。

前記事でビデオ撮影機材としてガンマイクやフィールド・マイクミサー等を調達した事をご紹介しました。ビデオ撮影時はどのようなマイクの使い方をするにしても最終はミキシング後ビデオカメラにブチ込めばいいので、それだけでなんとかなるのですが、タイムラプス撮影やビデオでのスロー撮影など非リアルタイム系の映像は別途録音する必要があります。そこでPCMレコーダーを導入することにしました。PCMレコーダーも会議の記録録音用から業務用の音楽録音用のものまでピンキリですが、ミキサーなどの外部機器との接続の為のXLR端子があり、24ビット192KHzでの録音ができる、操作性が良く練られ考えられているTASCAMのDR-100MKlllを調達しました。

 

      (写真は同社HPより転載)

 

このPCMレコーダーは内蔵リチウムバッテリーと単三アルカリ乾電池2本との併用(切替)が可能、内蔵マイクはLチャンネルとRチャンネルにそれぞれ無指向性と単一指向性マイク2本ずつあり、外部ライン入力と3つを自由に切替する事が可能です。遠征時など他の外部機器の使用が難しい時、これはありがたいです。

外部ライン入力のXRL端子にはファントム電源スイッチがあり、ファントム電源を必要とするコンデンサーマイクを直接接続することも可能です。S/N比は109dB、リミッターやフィルター類も充実しています。その他直接スピーカー内蔵でその場ですぐに録音内容が確認できたり、現場での必要とされるあらゆる細かい機能が用意されていてすっかり気に入ってしまいました。細かいことですがストラップが取り付けられるようになっているのを見て、さすが永い間ユーザーの声を取り入れて練り上げられて来たTASCAM製品だと思いました。

 

 

 

 

 


ビデオ機材の投入~ビデオの世界へ

2020年05月01日 | 日記

昨年末のパラオの遠征撮影は私自身にとってひとつの大きな転機であったと思います。 国内全国各地、スペイン、ミャンマーへの遠征撮影、また長野県小海町の密着1年間の撮影などを通し、タイムラプスはある意味本当に撮り尽くしたとの達成感があった事が手伝い、パラオではタイムラプスやドローン・ビデオに加え、セスナからの空撮ビデオやスノーケリングでの水中撮影と言った初めての試みに夢中になりました。

その結果、出来上がった作品は今までの私の作品の中では斬新なものとなりました。そしてそこには新しい表現の基軸が生まれていることに気が付きました。「ヒーリングとリラクゼーション」です。今までタイムラプスを通して私が向かい合ってきた自然は私に何を語っていたのか、初めて気が付いたのかもしれません。それを浮き彫りにして、分からせてくれたのがビデオ映像だったのではないかと思います。

タイミングとは面白いもので、そう思っていた矢先、長野県小海町から今年はビデオで「小海の人」をテーマにビデオを撮影してもらえないかとのお話を頂きました。渡りに舟ではないですが、これも「天の声」だと思い、ビデオ機材に手を出し始めることになりました。実は最初はNIKON Z7を使ってビデオ撮影をしようと考えて周辺機器を整備し始めたのですが、ここの所テレビ局からのタイムラプス撮影依頼が多く、ロケ現場でのビデオ撮影部隊と一緒になったりしてカメラマンや音声さんたちの機材や撮影を頻繁に拝見するに至り、気持ちが大きく変わりました。やる以上は本格的に取り組もうと考えるようになったのです。

いきなり新品機材にはさすがに手が出せないので、中古機材も探しました。

まずはビデオカメラです。肩乗せ式のカメラは高性能ですが、本体はもとよりレンズは目の玉が飛び出るほど高価なシネレンズを使っているし、またワンマン・オペで振り回せるものではありません。その下の現場取材などで良く使われるクラスのものにしました。 SONY製の4K60Pと決めてましたので、FDR-AX1を選択しました。 4K60Pでビットレートは150Mbpsとなかなか頼りになりそうな仕様です。NDフィルター内蔵で、レンズはF1.6~3.4、fは35mmカメラ換算で31.5mm~630mmと文句なしです。

 

さっそく7インチの外部モニターを購入しましたが、本体の液晶とは雲泥の差で見やすくなりました。明るくクリアーで細部まで明瞭に生々しくモニターできます。長いホットシュー延長アングルを取り付けて一番前にはLEDライト、またモニターの手前側にはワイヤレス受信機(後述)を取り付けてあります。 外部マイクホルダーにはステレオ・マイク(SONY ECM-MS2)とガンマイク(SONY ECM-VG1)のどちらかを取り付けるようにマイクを2本購入しました。

写真はガンマイクECM-VG1が取り付けられた所です。

 

ビデオカメラマンの井出達ができたところで、私としてはどうしても音声さんが気になります。ロケ現場で3m近くも延びるロッドの先にガンマイクをぶら下げて耳にはヘッドフォン、首から下げたバッグにはマイクミキサーの井出達です。幸いな事に学生時代の同級生で永年音声さんを務めて」いた友人がいますので色々教えて貰う事ができました。

ロッドの先に取り付けるガンマイクは日本ではゼンハイザーが伝説のマイクとなっているが、実際の所これで十分だと勧められたのがSONY ECM-670でした。ロッドは最長3mの3段伸縮のカーボン製で、マイクホルダーには人気の高いRode製にしました。 このホルダーはロッドから外すとそれ自体がグリップ付きのフォルダーになっているので手持ちマイクで収録する時は重宝しそうです。

 

ビデオカメラから離れて集音するとなるとビデオカメラに音声を送り込む前に音源をミキシングしたりレベル調整したりする為にマイクミキサーが必要になります。運よく大変程度の良いSHUREのFP33を手に入れることができました。これは頼りになりそうです。

 

SONYのワイヤレス送受信機です。これはミキサー側に送信機、前掲のビデオカメラの写真の様にカメラ側に受信機を取り付けて、ミキサー出力をカメラに送り込む時に大変便利です。またワンマンオペの時は遠隔マイク(ガンマイクなど)からワイヤレスで音を飛ばして撮影するなどのオペレーションも可能です。もちろんミキサー側に受信機をつけて、送信機はピンマイクと共にインタビューワーに持たせるなど色々な使い途があります。

 

とりあえずこのビデオカメラの簡単なテスト撮影をしてみました。4Kに拡大してご覧下さい。

 

 

まずは最初にど~んと枝垂れ桜の全体像ですがそのクリアーさには目を見張るものがあります。(4K 60P 150Mbpsビットレート) 今までDSLRで撮影した4Kビデオと画質にかなりの差を感じました。

最初に軽くパンをしましたが、60Pのおかげでこの程度のパンなら絵飛びはほとんど抑えられています。

続いて思いっきり最大ズームにしています。 ここでの注目はオートフォーカスの追従性です。そもそも桜の枝なんて細いし沢山の枝が複雑に前後にも入り組んでいてオートフォーカスは苦手な対象ですが・・・素晴らしい追従性です。そもそもが焦点移動のないビデオズームレンズであることに加えてビデオカメラ特有のAF能力が相まっています。迷いがないですね。

そのあとは思い切ってパンとかで移動させています。絵は思いっきり飛びます。この時は35mm換算で630mmの望遠ですから。(笑)それでもあえてこの望遠(35mmカメラ換算630mm)で移動を止めた時の反応を見ています。

カメラも振らないし、ズームも変化させないで風景を固定撮影するのであればDSLRでも不自由はしませんが、画面にビデオとして変化をつけようとしたらやはりビデオカメラの独壇場ですね。

 

唯一の問題は、一人で海外遠征撮影の時にこのカメラを持って行くのはかなり辛いです。(笑)

 

なお、ビデオ撮影の体制を整えましたが、もちろんタイムラプスとの統合作品を展望しての事です。 タイムラプスだけの映像作品はさすがに撮り尽くした感があり、この機会に新たな世界に拡げたいと考えています。