筑後川の日本人。

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混沌とした日本の思想界、「なんとなく保守」という現状を憂うる

2014-09-23 16:54:02 | 初心者のブログ作成
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成26年(2014)9月21日(日曜日)
     通巻第4342号  日曜版
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(日曜版につき読書特集)
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 ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ◎BOOKREVIEW◆ 
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 保守主義を理論化する必要あり、祖国再建の青写真を急ごう
   混沌とした日本の思想界、「なんとなく保守」という現状を憂うる

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小川栄太郎『最後の勝機』(PHP研究所)
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 副題に「救国政権の下で、日本国民は何を考え、どう戦うべきか」とある。
しかし「危機は勝機」とは昔から言われてきた箴言、いま日本が抱える問題は尖閣、靖国、TPP、原発、歴史認識であり、この連続する国難を如何に克服し、伝統ある祖国を保守するか、著者は真剣勝負にでた。
 まず著者は「保守主義」とは何かを模索する。
 評者(宮崎)に言わしめれば、現代日本の保守は三つのカテゴリーに区分けができ、まことの保守、体制保守、そして生活保守である。
これらが、しかし冷戦終結前までは、おおざっぱに「反共」という陣営にあって、左翼と戦っていた。左翼が昔日の面影もなく後退して、左翼の牙城=朝日新聞が命脈を絶とうとする今、保守は明確に分裂している。
 著者は最初に、摘菜修や中野剛志とか、「保守」の新星を批判しつつ、保守とは生活そのもののなかにあり、とした小林秀雄、福田恒存、江藤淳らの思考の軌跡をたどる。
 そして保守論壇の現況に言及し、こう言われる。
 「国際的なネットワークやグローバリズムへの反感が、今の保守には大変強い。幕末で言えば攘夷だ。しかし、結局、日本が幕末を生き延びられたのは攘夷の情念を超克して、尊皇開国を決断したからです。それから大騒ぎになりそうなTPPでもそうなのですが、どうも今の保守の議論は、攘夷を小さくした、旧来の自民党的保護主義に、根性が似ている」。
 女々しい議論が横行するが、「自主防衛で強靭な国家を選択する以外に道はない」。
 そうだ。そもそも独立国家に外国の軍隊がなぜ居るのかという議論が殆ど為されていないのである。
 また評者もつねづね言ってきたことだが、論壇は保守全盛となったが、文壇は未だに左翼全盛なのである。大江が大御所で、グローバルをいう村上春樹が偉そうに振る舞い、左翼崩れは論壇では論理が破産したが、論理を無視する世界、つまり文学では左翼がいまも圧倒的に強い。文芸家協会は保険の相互援助組合化しており、ペンクラブは左翼の吹きだまりとなった。
 このゆゆしき現状について小川氏はいう。
 「日本の出版界は、歴史に残る文豪を一人も世に出せなくなった。大碩学もいなくなった。幸田露伴、泉鏡花、谷崎潤一郎、柳田国男、小林秀雄、白川静。。。商売を度外視した世界だったからこそ、逆に長い目で見れば末永く商売になる」にもかかわらず「目先のビジネスだけに血道を上げ、出版界を枯れ果てた土壌にしたのは、グルーバリズムでもアメリカの日本収奪でもなかった」のだ。
 したがって国家百年の計を立て、日本を立て直す「基礎工事」をなすには、次の三つが最も大切だと著者は言う。
 第一に人口減少社会の対処。第二がエネルギー問題。第三は教育である。
基本的に賛成である。ただし、評者は第一が教育、第二がエネルギー、第三は国防であり、人口減少は歴史教育が復活し日本人がもとのような「人間」になれば自然に増えるので楽観視している。
人口バランスを取るための「移民奨励」などは愚の骨頂である。
 それよりも、保守とは何か、日本の保守は何をしなければならないかの前提として、著者は下記の分析を展開されている。
 保守主義はイデオロギーではなく、日本人は古来より自然に親しみ、「自国の伝統を創造し続けられた事が、日本で保守の理論化が進まなかった根源的な要因」である。
 また戦前は「保守思想が成立する意味も余地もなく、国民一丸となって富国強兵に専念する一方、戦後初めて左翼への言論嬢の防御が必要となったときには、防戦一方とな」っため、理論化が進まなかったと分析される。その通りだろう。
 第三に理論家を推進できなかった理由はアケデミズムの怠慢だった。
かくするうちに「ソ連の崩壊により冷戦が終わりました。日本は赤化からなんとか逃げられた。ところが、今度は、その事が日本の保守派を、また油断させてしまった」のである。保守主義を考える格好の問題定義が並んだ。
まことに祖国再建への道のりは遠い。
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