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源氏物語の婚姻ー源氏千年紀講演から

2008-06-09 11:46:29 | 源氏物語
源氏物語は、社会史としての婚姻の法則をみごとに踏襲している、
と明らかにしてくれたのは、その道の研究者である詩人の藤井貞和氏。
人類学者が婚姻史の視点から注目したのは、
レビー・ストロースと高群逸枝、とのこと、
構造主義や文化人類学のレビー・ストロースは、南米やアボリジニなどの原初的な社会を調べ上げて結婚のルール、を突き止めたのですが、
親同士が異性のいとこ婚(交叉いとこ婚)が好まれること、源氏物語のなかにも認めた、
というものです。
親同士が同性のいとこ婚はさけたい関係のようです。
源氏物語での交叉いとこ婚、
 源氏と葵上、夕霧と雲居雁、匂宮と六の君、
これすべて正妻、確かに確認できます。

いっぽう、高群逸枝は、平安時代の日記などの恋愛を克明に調べ
(その詳細をカード作りにしたという)
日本古代の婚姻史をうちたてたわけですが、
源氏の中に認めた法則は、父と息子は生涯同居しない、ということだそうです。
通い婚から始まって、有力な妻方同許婚をへて、
夫方経営婚に至る、
実父とは同居しない、確かにそうです。
平安期は通い婚、といいますが、多様な様相があるのですね。
源氏は宮中の桐壷で育ちますが、
臣下に下って二条院に住み、そこから左大臣家に通い、
そして、六条院を造営して自分の家を持ち、妻を一堂に集めます。
夫方同許婚は栄華の象徴なんですね。
財力のない姫君(若紫など)が男のもとに引き取られることは、
さほど珍しいことではないのですね。

それにしても、文化人類学的に見ても源氏物語は完璧なんですね。
あらゆる視点で切り取ることができて、
しかもすべてを網羅して構想したとしか、思われない、
綿密な構造をなしているこの人間探求の物語、
大いなるものの力を得ている、と当初は怖れられた紫式部という人、
千年をへても、なおその霊力は衰えることを知らない,
すごいことだと改めて思います…。


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