
「あー、嬉しいなぁ」
そうつぶやいていた。
「あー、嬉しいなぁ」
と、100回くらい。
天馬街道。
天馬街道を走りながら、「あー嬉しいなぁ」と心の底から言葉が出てきてしまう。
「逢いたい人に会う旅」である。
「行きたい場所に行く旅」である。
行きたい場所には相当な確率で行けるが、逢いたい人に会える確率は、僕が思うに、それほど高くない。
旅の途中というのは、ほぼワンチャンスである。略すと「ワンチャン」である。
ワンチャンで会える確率は低い。今日は不在だからまた明日来よう!というわけにはいかない。今日会えなければ、来年か再来年か、いつになるのか。という具合なのである。
だからこそ、ワンチャンだからこそ、会えた時の喜びは大きい。
そして、数年ぶりに訪れた「ただの客」の僕のことを、何百人何千人という中の「ただの一人で」の僕のことを、覚えていてもらえたりすると、笑顔で迎えてもらえたりすると、その喜びは、天馬の頂をも超えるほどになるのである。
これは、「夢の館」の話。