「やっぱり、うちの高校でも」「結局、子どもにしわ寄せが」。これまで県内の高校では「ない」はずだった必修科目の履修漏れが、津市内の高田高校とセントヨゼフ女子学園高校の私学二校で発覚した三十日、受験を間近に控えた三年生や保護者に不安や憤りが広がった。県の調査にうその回答を繰り返した学校側には、厳しい批判が相次いだ。 (奥田哲平、宇田薫)
◇高田、校長らが謝罪
受験生「補修時間とれぬ」
津市一身田町の高田高。この日、一限目に履修漏れが判明した全三年生五百八十七人を講堂に集め、望月演(ひろむ)校長が謝罪した。その後、クラスごとに担任教諭が説明した。「やっぱり。他の私立と同じようにアカンと思っていた」。ざわついた生徒からはそんな声が上がったという。
昼前からの記者会見。同校は学習指導要領に反すると自覚しながら現在のカリキュラムを二〇〇四年度に編成した。「当初は悩んでいたが、進学指導に追われ流されてしまった」と望月校長は明かした。
全国各地で履修漏れが問題になり「うちも同じ」と指摘する教員もいた。しかし「六年制(中高一貫)カリキュラムの弾力性で説明できる」と押しとどめていたという。「隠そうとしたわけではないが、勇気がなかった」。県内トップクラスの同校の校長として、胸中を吐露した。
毎夜十時ごろまで予備校に通う国公立大理系志望の三年男子(18)は「今から二百十コマ(単位時間)も勉強するのは無理。その時間をほかの受験教科に充てなきゃいけない時期なのに」とやり切れない表情。別の生徒は「もともと受験に関係のない授業は受けなくてもいいのでは」と淡々と話し「せめて補習するコマ数を半分にしてほしい」と求めた。
同校は最高二百十コマの補習が必要な生徒が百八十四人いる。高臣文祥教頭は「軽減措置を期待しながら、時間割を計画する」と述べた。補習について、一部の生徒は国公立大二次試験の前期日程の後から卒業式までに集中実施する予定。来年三月一日の卒業式は延期となる見込み。
三十一日以降、保護者への説明会も開く。三年男子の母親(45)は「息子からの電話で知り、本当にびっくりした。学校は子どものための教育とか言って、結局、しわ寄せを受けるのは子どもなんですね。高い授業料を払っているのに」と憤っていた。
◇セントヨゼフ、「認識が甘かった」
セントヨゼフ女子学園高は、三年生百二十六人のうち国公立文系志望の十五人が地理の未履修。県に提出していた教育課程では地理と世界史を二単位ずつ履修させているはずが、実際は地理の授業は行わず、世界史の時間を増やしていた。
竹内明教務部長は三十日、「世界史を地理的な要素も含めて総合的な視点で教えていたつもりだが、認識が甘かった」と弁明した。補習には七十コマが必要で「受験生の負担にならないようにしたい」と述べた。
◇県担当者戸惑い、「教える立場でうそとは」
助成金減額も検討
二校の必修科目の履修漏れを見抜けなかった県の私学担当者は「どんな調査をしても、最後は学校を信じざるを得ない。性善説ではだめなのか」と戸惑いが隠せない。
県立高校を担当する県教育委員会は、各校が提出する教育課程表の内容と教科書選定状況が合致するかなどを毎年確認している。しかし私立を管轄する県生活部は、各校のカリキュラムが学習指導要領に添った内容かどうかを確認する程度という。同部担当者は「独自性を発揮することに意義がある私立校に対し、どこまで介入できるか。設置者でもなく、難しい問題だ」と話す。
同部はチェック態勢の見直しを検討しているが、たとえ県教委と同じ対応をしたところで限界はある。担当者は「教科書を時間割通りに購入していても、授業をしているかどうかは別の問題。最終的には、学校側の正しい報告に期待するしかない」と指摘。今回のような虚偽報告があった場合、見破るのは難しいとの認識を示した。
二十五、二十六日の県からの問い合わせにも「履修漏れはない」と回答していた二校。「子どもを教育する立場の学校がうそをついたことは誠に遺憾」と県は厳しく批判する。
県は二校に対し、適切に補習を実施するよう指導する。その上で、他の都道府県の状況も勘案し、私学助成金の減額など追加の対応も検討する。
助成額は、昨年度実績で高田高に約五億千九百万円、セントヨゼフ女子学園高に約一億六千五百万円(いずれも国費込み)。県が要綱に従って助成額を決めるといい、本年度分から減額する可能性がある。 (谷村卓哉)
◇高田、校長らが謝罪
受験生「補修時間とれぬ」
津市一身田町の高田高。この日、一限目に履修漏れが判明した全三年生五百八十七人を講堂に集め、望月演(ひろむ)校長が謝罪した。その後、クラスごとに担任教諭が説明した。「やっぱり。他の私立と同じようにアカンと思っていた」。ざわついた生徒からはそんな声が上がったという。
昼前からの記者会見。同校は学習指導要領に反すると自覚しながら現在のカリキュラムを二〇〇四年度に編成した。「当初は悩んでいたが、進学指導に追われ流されてしまった」と望月校長は明かした。
全国各地で履修漏れが問題になり「うちも同じ」と指摘する教員もいた。しかし「六年制(中高一貫)カリキュラムの弾力性で説明できる」と押しとどめていたという。「隠そうとしたわけではないが、勇気がなかった」。県内トップクラスの同校の校長として、胸中を吐露した。
毎夜十時ごろまで予備校に通う国公立大理系志望の三年男子(18)は「今から二百十コマ(単位時間)も勉強するのは無理。その時間をほかの受験教科に充てなきゃいけない時期なのに」とやり切れない表情。別の生徒は「もともと受験に関係のない授業は受けなくてもいいのでは」と淡々と話し「せめて補習するコマ数を半分にしてほしい」と求めた。
同校は最高二百十コマの補習が必要な生徒が百八十四人いる。高臣文祥教頭は「軽減措置を期待しながら、時間割を計画する」と述べた。補習について、一部の生徒は国公立大二次試験の前期日程の後から卒業式までに集中実施する予定。来年三月一日の卒業式は延期となる見込み。
三十一日以降、保護者への説明会も開く。三年男子の母親(45)は「息子からの電話で知り、本当にびっくりした。学校は子どものための教育とか言って、結局、しわ寄せを受けるのは子どもなんですね。高い授業料を払っているのに」と憤っていた。
◇セントヨゼフ、「認識が甘かった」
セントヨゼフ女子学園高は、三年生百二十六人のうち国公立文系志望の十五人が地理の未履修。県に提出していた教育課程では地理と世界史を二単位ずつ履修させているはずが、実際は地理の授業は行わず、世界史の時間を増やしていた。
竹内明教務部長は三十日、「世界史を地理的な要素も含めて総合的な視点で教えていたつもりだが、認識が甘かった」と弁明した。補習には七十コマが必要で「受験生の負担にならないようにしたい」と述べた。
◇県担当者戸惑い、「教える立場でうそとは」
助成金減額も検討
二校の必修科目の履修漏れを見抜けなかった県の私学担当者は「どんな調査をしても、最後は学校を信じざるを得ない。性善説ではだめなのか」と戸惑いが隠せない。
県立高校を担当する県教育委員会は、各校が提出する教育課程表の内容と教科書選定状況が合致するかなどを毎年確認している。しかし私立を管轄する県生活部は、各校のカリキュラムが学習指導要領に添った内容かどうかを確認する程度という。同部担当者は「独自性を発揮することに意義がある私立校に対し、どこまで介入できるか。設置者でもなく、難しい問題だ」と話す。
同部はチェック態勢の見直しを検討しているが、たとえ県教委と同じ対応をしたところで限界はある。担当者は「教科書を時間割通りに購入していても、授業をしているかどうかは別の問題。最終的には、学校側の正しい報告に期待するしかない」と指摘。今回のような虚偽報告があった場合、見破るのは難しいとの認識を示した。
二十五、二十六日の県からの問い合わせにも「履修漏れはない」と回答していた二校。「子どもを教育する立場の学校がうそをついたことは誠に遺憾」と県は厳しく批判する。
県は二校に対し、適切に補習を実施するよう指導する。その上で、他の都道府県の状況も勘案し、私学助成金の減額など追加の対応も検討する。
助成額は、昨年度実績で高田高に約五億千九百万円、セントヨゼフ女子学園高に約一億六千五百万円(いずれも国費込み)。県が要綱に従って助成額を決めるといい、本年度分から減額する可能性がある。 (谷村卓哉)
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