酔っ払いの戯言

塾長から使えば?などと、甘い言葉に
ついつい乗せられて。

三重県下で履修漏れ(伊勢新聞)

2006-10-31 10:00:05 | 履修漏れ
高校の必修科目の未履修問題で、県は三十日、私立高田高校(津市一身田町、望月演校長、生徒数千七百八十七人)の三年生全員の五百八十七人と、私立セントヨゼフ女子学園高校(同市半田、中津幹校長、同四百七人)の三年生十五人の計六百二人が、世界史や地理などで未履修や単位不足となっていることが分かったと発表した。県内高校で履修漏れが発覚したのは初めて。未履修が最も多い生徒で、高田で六単位、二百十時間の補習が必要な生徒もいる。今後、二校には補習などを適正に行うよう指導する。

 また、青少年・私学室では県内の私立高全十六校に履修状況を確認し、両校を含め二十六日に全校で「問題はない」と発表していたが、両校は県に対し、虚偽報告していたことも判明した。同室は「誠に遺憾だ」と対応を批判している。

 県の調査で、高田は六年制カリキュラムの三年生二百三人が、政治・経済、保健、情報Bのいずれかの単位が未履修。さらに二百三人のうち、百二十七人が世界史Bを未履修、四十六人が同Bの単位不足、十一人が地理Bの単位が不足していた。

 三年制カリキュラムの三百八十四人全員も、情報Aが単位不足となったほか、うち百四十九人は日本史Bか地理Bが未履修となっていた。

 セントヨゼフ高は三年生百二十六人のうち、十五人が地理Aの履修漏れとなっていた。

 両校とも、いずれも平成十六年度からのカリキュラムで未履修が発覚。卒業生は旧カリキュラムのため履修漏れはなく、問題となるのは現三年生のみという。



全国私立で履修漏れ(産経新聞)

2006-10-31 09:57:04 | 履修漏れ
高校必修科目の履修不足問題に絡み、千葉県の専大松戸高校(松戸市)など各地の私立校でも多数の未履修の生徒がいることが30日、分かった。

 専大松戸高では保健、芸術、家庭基礎、情報の計4単位の未履修など、614人が該当。同校によると、進学実績を上げるため平成14年度から受験に必要ない科目を削り、主要科目の授業に充てていた。昨年、県が監査に入った際は、実際とは異なるカリキュラム表を県の担当職員に見せ、履修不足の発覚を防いだという。

 千葉県内の私立校で他に未履修が判明したのは、志学館(木更津市)381人▽暁星国際高(同)94人▽拓大紅陵高(同)41人▽千葉明徳高(千葉市)286人。

 また、山口県岩国市の高水高で224人、松山市の済美高でも325人が未履修だったことが明らかになった。


森元首相の私見

2006-10-31 02:07:20 | 履修漏れ
自民党の森喜朗元首相は30日、大阪市での講演で、高校必修科目の未履修問題をめぐり伊吹文明文部科学相に対し「大目に見てやったらどうか」と提案したことを明らかにした。
 同時に「学校側が必修科目を受けたことにしていたのなら、学校が子供たちに『うそをつけ』と教えていたようなもので、子供に責任はない」と指摘。「卒業した生徒は問わないなら、今の3年生も問わなければいい。問題はこれからどうするかだ」と述べ、文科省は再発防止に力点を置くべきだとの考えを強調した。


三重県私立高校の履修漏

2006-10-31 02:04:28 | 履修漏れ
「やっぱり、うちの高校でも」「結局、子どもにしわ寄せが」。これまで県内の高校では「ない」はずだった必修科目の履修漏れが、津市内の高田高校とセントヨゼフ女子学園高校の私学二校で発覚した三十日、受験を間近に控えた三年生や保護者に不安や憤りが広がった。県の調査にうその回答を繰り返した学校側には、厳しい批判が相次いだ。 (奥田哲平、宇田薫)

 ◇高田、校長らが謝罪
  受験生「補修時間とれぬ」

 津市一身田町の高田高。この日、一限目に履修漏れが判明した全三年生五百八十七人を講堂に集め、望月演(ひろむ)校長が謝罪した。その後、クラスごとに担任教諭が説明した。「やっぱり。他の私立と同じようにアカンと思っていた」。ざわついた生徒からはそんな声が上がったという。

 昼前からの記者会見。同校は学習指導要領に反すると自覚しながら現在のカリキュラムを二〇〇四年度に編成した。「当初は悩んでいたが、進学指導に追われ流されてしまった」と望月校長は明かした。

 全国各地で履修漏れが問題になり「うちも同じ」と指摘する教員もいた。しかし「六年制(中高一貫)カリキュラムの弾力性で説明できる」と押しとどめていたという。「隠そうとしたわけではないが、勇気がなかった」。県内トップクラスの同校の校長として、胸中を吐露した。

 毎夜十時ごろまで予備校に通う国公立大理系志望の三年男子(18)は「今から二百十コマ(単位時間)も勉強するのは無理。その時間をほかの受験教科に充てなきゃいけない時期なのに」とやり切れない表情。別の生徒は「もともと受験に関係のない授業は受けなくてもいいのでは」と淡々と話し「せめて補習するコマ数を半分にしてほしい」と求めた。

 同校は最高二百十コマの補習が必要な生徒が百八十四人いる。高臣文祥教頭は「軽減措置を期待しながら、時間割を計画する」と述べた。補習について、一部の生徒は国公立大二次試験の前期日程の後から卒業式までに集中実施する予定。来年三月一日の卒業式は延期となる見込み。

 三十一日以降、保護者への説明会も開く。三年男子の母親(45)は「息子からの電話で知り、本当にびっくりした。学校は子どものための教育とか言って、結局、しわ寄せを受けるのは子どもなんですね。高い授業料を払っているのに」と憤っていた。

 ◇セントヨゼフ、「認識が甘かった」

 セントヨゼフ女子学園高は、三年生百二十六人のうち国公立文系志望の十五人が地理の未履修。県に提出していた教育課程では地理と世界史を二単位ずつ履修させているはずが、実際は地理の授業は行わず、世界史の時間を増やしていた。

 竹内明教務部長は三十日、「世界史を地理的な要素も含めて総合的な視点で教えていたつもりだが、認識が甘かった」と弁明した。補習には七十コマが必要で「受験生の負担にならないようにしたい」と述べた。

 ◇県担当者戸惑い、「教える立場でうそとは」
  助成金減額も検討

 二校の必修科目の履修漏れを見抜けなかった県の私学担当者は「どんな調査をしても、最後は学校を信じざるを得ない。性善説ではだめなのか」と戸惑いが隠せない。

 県立高校を担当する県教育委員会は、各校が提出する教育課程表の内容と教科書選定状況が合致するかなどを毎年確認している。しかし私立を管轄する県生活部は、各校のカリキュラムが学習指導要領に添った内容かどうかを確認する程度という。同部担当者は「独自性を発揮することに意義がある私立校に対し、どこまで介入できるか。設置者でもなく、難しい問題だ」と話す。

 同部はチェック態勢の見直しを検討しているが、たとえ県教委と同じ対応をしたところで限界はある。担当者は「教科書を時間割通りに購入していても、授業をしているかどうかは別の問題。最終的には、学校側の正しい報告に期待するしかない」と指摘。今回のような虚偽報告があった場合、見破るのは難しいとの認識を示した。

 二十五、二十六日の県からの問い合わせにも「履修漏れはない」と回答していた二校。「子どもを教育する立場の学校がうそをついたことは誠に遺憾」と県は厳しく批判する。

 県は二校に対し、適切に補習を実施するよう指導する。その上で、他の都道府県の状況も勘案し、私学助成金の減額など追加の対応も検討する。

 助成額は、昨年度実績で高田高に約五億千九百万円、セントヨゼフ女子学園高に約一億六千五百万円(いずれも国費込み)。県が要綱に従って助成額を決めるといい、本年度分から減額する可能性がある。 (谷村卓哉)


奈良・搬送事件③

2006-10-31 01:53:15 | 医療
報道記事に関しては最初の報道記事とその後の整合性がとれていなかったりして私はもう積極的に見る気にはなれません*1。
各所でつっこみが入っているにもかかわらず、微妙に改変したのみで、訂正記事も出さずに基本姿勢は変えず垂れ流しで、それこそ『恥を知れ』ですね。

最終の報告
ここ2,3日で私自身が知りえた事を書きます。たぶんこれ以上はもう解らないと思います。
妊娠中
(1)最終月経は平成17年10月23日より5日間。近くの開業医で妊娠と診断され、同年12月20日大淀病院産婦人科初診。
(2)初診時子宮の後壁に28*18の筋腫核指摘。既往歴、家族暦には特記すべきことなし。
(3)同年12月31日、感冒症状あることと、悪阻強く、何度も嘔吐するため、本人より病院に電話があり、点滴を希望される。当直医指示により点滴を行う。この悪阻症状は 2月まで続き、そのため時々点滴を受けた。
(4)妊娠経過中はきっちり指示どおり来院、同病院で行われた母親学級も3回きっちり受講した。妊娠経過は順調で血圧も高くなく、96- 118/50-60 mmHg で経過しPIHの所見もなかった。他の検査、超音波やX-ray film によるpelviometry も行われたが新しい筋腫核がもうひとつ見つかったぐらいで、ほとんど異常なく経過した。また分娩は夫立会いを希望し、所定の承諾書に署名捺印を行った。
(5)同年7月(妊娠37週)の外来受診時、時々ひどい嘔吐があることを訴える。
(6)妊娠40週頃2回行われたnon-stress testもreactive であった。
入院以後
(1)妊娠41週超で誘発目的にて入院。失神に至るまでは、おおむね今までの書き込みの通りである。誘発開始(09:40)よりPGE服用終了 (14:45)まで産科病棟師長で助産師である経験31年近い助産師がベッドサイドに付き添い刑事的に内診、バイタルチェック、CTGのチェックを行い看護記録に記載あり。
(2)(17:00)準夜勤務の助産師(経験20年)に交代。陣痛は2分おきと患者応答あり。子宮口3cm開大。
(3)(17:20)入院以来最初の嘔吐あり。(胃液様)show(+)
陣痛間歇2分、発作20~30秒。助産師より呼吸法を指導す。fetal wellbeing 良好。患者「痛い、痛い」と声を出している。
(4)陣痛と悪心、嘔吐あるため夕食摂取せず。かわりにポカリスエットを十分摂取している。(18:00) CTG で異常所見なし。あいかわらず「痛い、痛い」と訴えあり。
(5)(21:30)胃液様嘔吐あり。ポカリスエットを摂取してはいるが、嘔吐が何回もあるので、ルート確保も兼ねて、5% glucose 500ml 点滴開始。(21:40) 子宮口4cm開大。児心音良好。
(6)(22:00)胃液様嘔吐あり。(23:00) 発汗多い。「もういや、家に帰りたい」との訴えあり。血性帯下を認める。
児心音良好。
(7)(0:00)こめかみが痛いとの訴えあり。発汗を認める。脱水気味。BP 155/84 HR74/min.。産婦人科医師に報告。点滴をnormal saline 500ml に変更指示あり。
(8)(0:10)胃液嘔吐あり。産婦人科医師に報告。プリンペラン1A 側管より投与の指示あり。よびかけに応答があり、開眼する。
(9)(0:14)突然の意識消失、応答に返事なし。SPO2 97%,
産婦人科医師に報告、すぐ来室。BP147/73 HR73/min.
産婦人科医師の診察。瞳孔、左右差なし。対光反射もあり偏心も認めない。血圧も安定し呼吸も安定。痛覚刺激に顔をしかめて反応。念のため内科当直医(経験6年の循環器内科 医)に診察を依頼。
(10)内科医師すぐに来室、患者の概略を説明のうえ、ヒステリー発作の可能性も含めての診察依頼。内科医師は一通りの診察を行い、「失神発作でしょう」と答えた。この記載はカルテの医師記載欄および看護日誌にも記載あり。ここで産婦人科医は内科医に「頭は大丈夫?」と質問した。内科医は肯定も否定もしなかった。(おそらく頷くか何かのジ ェスチャーをしたのではないか。これは推測)バイタルサインもよいので経過観察ということで意見一致。
(11)産婦人科医はここで陣痛と家族の期待に対する精神的負担による失神かと考えたので、主人に「今までこんな失神のような事なかったか」と質問すると、「なかった」と 主人答える。尿失禁を認めるも、全身状態安定。産婦人科医が主人に「全身状態が良いのでこのまま様子を見ます」と伝えた。
(0:25)BP148/69mmHg,sPO2 97% ここで一旦、産婦人科医と内科医が分娩室をでて、当直室に帰る。
(0:30)BP156/71mmHg,顔色は良い。
(0:40)CTG 再装着。児心音良好。バイタルサイン良好。
(1:00)BP152/84mmHg,SPO2 97-98% 呼びかけに対し、眠っているのか、返事がない。呼吸は平静でイビキも認められない。陣痛発作時は四肢を動かしたり、顔をしかめたりする。
(1:30)CTG 異常所見なし。呼びかけに対し応答なし。よく眠っている様。顔色良好。
(1:37)突然の痙攣発作出現。当直室の産婦人科医を呼ぶ。BP175/89mmHgと上昇、水銀血圧計でBP200/100mmHg。 SPO2 97%、いびきをかき始める。強直性の様な痙攣を認める。産婦人科医は強直性の様な痙攣と血圧の上昇から子癇発作と診断、すぐにマグネゾール20ml 1A 側管より静注すると痙攣はおさまった。引き続き微量注入装置を使用し、マグネゾールを 20ml/hr. のスピードで点滴を始めた。
(1:50)内科当直医を呼び出し、循環器系の管理を依頼するとともに、バイトブロックを咬ませ、口腔内と鼻孔を吸引した。バルーンカテーテルも挿入した。この時点で、母 体搬送を決断し、奈良医大付属病院に連絡し、当直医を呼び出して搬送を依頼した。
(2:00)BP148/75,HR76/min.SPO2 97%,R26/min.痙攣発作は認めない。二回目のBP144/71,HR96/min. 瞳孔散大。搬送用紙、紹介状を作成。奈良医大当直医より満床の返事あり。こちらに人手がないため、奈良医大の方で引き続き奈良医大での再検討もふくめ、他の受け入れ施設を探してくれるように依頼。また奈良医大よりのパート医師で、当患者をずっと外来で診察していた医師を電話で呼び出したが連絡がつかない。
(2:15)患者に痛覚反応を認める。ここで内科医と産婦人科医が話し合い、頭部CTスキャンを検討したが、今の時間ではもし奈良医大が引き受けてくれたなら、ここから1 5分程度で奈良医大着くだろう、(距離にして15kmで一般道だが一部四車線区間もあり、奈良にしては比較的整備されている区間)いつ母体搬送受け入れの返事がくるかもわからないし、いま移動する事による母体、胎児への悪影響を考えると、高次病院での検査、診断、処置が最善と判断した。その後内科医は、母体搬送を送り出すまで全身管理を手 伝ってくれた。
(2:30)産婦人科医師が患者家族への説明を行う。「子癇の疑いがあり、現在薬剤で対処しているが、これ以上の当院での対応は無理なので、現在奈良医大のネットワークを 通じて受け入れ病院を探しているので、返事を待って欲しい」マグネゾールを25ml/hr.に増量指示。
産婦人科医師は、とりあえず内科医当直医に患者のベッドサイドについてくれるように頼み、当直室で電話をかけ、電話を待ちつづけた。
その後(時間不詳)内科医と交代で患者ベッドサイドへ。主人をふくむ家族が患者を触るたびに血圧上昇を認めるので、触らないように指示。
時間が流れるうち、国立循環器病センターが受け入れ可との連絡あり。
(4:30)呼吸困難状態発生。気管内挿管。
(4:50)救急車へ移送。大阪へ。


2:30 以後は適宜前に書いた書き込みで補ってください。皆様のご理解とご協力よろしくお願いします。

カルテのコピー

実はこの経過の文章のうち、95パーセントはカルテに書いてある事なのです。彼らはコピーを持っていながら、医師の記載欄や看護記録のtechnical termが理解できないから、あんな記事になったのでしょう。この文章はカルテのコピーを見ながらまとめました。コピーはもう返却しました。


奈良・搬送事件②

2006-10-31 01:46:35 | 医療
奈良の事件です。まず亡くなられた患者様に深い哀悼の意を表し、残された御遺族の方に慎んでお悔やみを申し上げます。

事件の詳細はある産婦人科のひとりごとで詳しいかと存じます。ここでの管理人氏の意見が一番正論かと思います。宜しければそちらをまず読まれることをお勧めします。

事件の構図を簡単にまとめます。


分娩中に頭痛を訴え意識消失発作を起こした。
産科医は子癇発作と考えその処置を行なった。
しかし経過が重篤で他院での処置が必要と判断した。
転送先を探すも18軒に断られ、19軒目の国立循環器病センターにようやく運ばれた。
患者は脳出血を併発しており死亡、子供だけは助かった。

ここで出てくる子癇発作の教科書的解説を先に入れておきます。


妊娠,分娩,産褥期に出現する強直性あるいは間代性痙攣と昏睡を主症状とする特殊型妊娠中毒症である.このうち分娩子癇が最も多い.妊娠中毒症の早期発見・治療により,子癇の発症は減少した.1,000~2,000分娩に1件といわれている.前駆症状として脳症状,眼症状,胃症状が出現する.高血圧,蛋白尿,浮腫は高度であるが,時にこれらの症状がみられないこともある.まず,意識が消失し,強直性あるいは間代性痙攣がみられる.痙攣がおさまった後に昏睡がしばらく続く.脳・肝臓内の出血がよくみられる.予後は速やかな治療法により改善されてきているが,母児ともに非常に危険であることに変わりはない

この経過中の処置や判断についてはネット上で様々な意見が既に交わされています。子癇発作と脳出血の鑑別、妊婦の頭部CTの是非、子癇治療と頭部CT適用の境界線、転送判断時期の可否、脳外科医が当該病院に勤務していたそうですが、呼び出しをしなかったことへの判断の問題、などなどです。

これらの問題はなにぶん情報不足で、ここでの是非の分析は控えておきたいと思います。話は単純化して、産科医は患者の子癇発作が自分の病院では処置しきれないと判断したところから始めます。おそらく転送要請の内容は


「重症の子癇発作、母子ともに危険。緊急転送お願いします。」

ぐらいのような気がします。これに「経過から頭蓋内出血の可能性もあり」も付け加えられたかもしれません。この情報を聞いて受け入れる側の病院が考える事は、


緊急帝王切開が必要である。
脳出血に対する緊急手術が必要であろう。
胎児もリスクが高く、新生児室も万全の用意が必要であろう。

これらに必要な物は、産婦人科医、脳外科医、麻酔科医、小児科医がとりあえずまず必要で、さらにICU、NICU、夜間緊急手術スタッフ、十分な輸血量の確保ぐらいは誰でも考えます。さらに手術は帝王切開と脳外科手術を並行して行なう必要があり、ドラマやマンガの設定なら神の手医師が奇跡の腕を振るう山場ですが、実際の現場では例外中の例外の出来事であり、そんな事をやった事のある医師の方が稀ですし、いずれにしても非常に高い水準の技量が求められます。しかも時刻は真夜中です。また受け入れてもリスクが非常に高い症例です。母子ともに非常に危険な状態で、母親は命だけでも救えればラッキーで、母子ともに死亡する可能性が非常に高いものと予想されます。

さらに受け入れ病院には非常に重い十字架が架せられています。最近の医療では不十分な体制で受け入れる事も非難される時代になっています。義侠心を出して手薄な体制で引き受け、結果として不幸な転帰を取った時には「引き受けた方が悪い」と非難の的になります。「なぜもっと万全の体制の医療機関に送らなかったのか」の厳しい批判です。批判は単なる言葉だけの問題ではありません。莫大な賠償金付きの訴訟が待っています。訴訟が起されればマスコミからのリンチのような社会的制裁が待っています。そんなものを受ければ病院の存亡に関わる事態になりかねませんし、担当した医師は医師生命を断たれてしまいます。

この十字架についてはネットに参加する医師の間では既に常識化しており、「ロシアン・ルーレット」とか「ババ抜き」と表現されています。患者の為に医師の使命感に燃え、無理を承知で引き受けたものが破滅する怖ろしいシステムです。この十字架は都市伝説の類ではなく、立派に司法の場で繰り返し断罪され判例となっている事実なんです。

この十字架はネット上では常識ですが、あくまでもネット上のことであり、どれほど広く医師一般に広がっているかはこれまでよく分からなかったのですが、今回の事件で相当広範囲に伝播している事が判明しました。さらに今回の事件でより広く伝わる事は想像に難くありません。

そんな日が来るのは時間の問題と考えていましたが、ついに現実のものとなったかと言う想いです。助けられそうに無い患者は引き受けない防衛医療の広範囲の浸透です。この事件のもたらすものは、これを契機に救急医療の再構築をが一般の反応でしょうが、医師の反応は防衛医療のより一層の徹底化です。いくら「引き受けろ」と言われても結果責任を引き受け側がすべて問われる現状なら、ノータッチで一切触れないほうに急速に傾くのはもう誰にも止められません。

それでもドンキホーテはいるでしょうが、ドンキホーテはやがて各個撃破されて消えていきます。医療の焼野原への大きな曲がり角を通り過ぎた事件と私は思います。

奈良の搬送事件・医師側からの私見①

2006-10-31 01:43:53 | 医療
転送拒否続き妊婦が死亡 分娩中に意識不明
コメント(私見):

周産期医療は、助産師、産科医、新生児科医、麻酔科医などの大勢のスタッフからなるチーム医療であり、そのうちのどの診療科が欠けても決して成り立ちません。

分娩経過中に、突然、母体が子癇発作を起こし意識消失し、母体搬送されて来るような事例は我々も時々経験しますが、これは母児にとって非常に危険な状況です。発症直後より、大勢の専門スタッフによる集中的な治療を要します。万一、地域内の施設より、そのような重篤なケースの母体救急搬送の受け入れ要請があれば、地域基幹病院としては、満床であろうが、とにかく直ちに受け入れ早急に治療を開始せざるを得ないと考えるのが普通です。しかし、肝心の専門スタッフ(産科医、新生児科医、麻酔科医、脳神経外科医、など)が院内に揃っていなければ何もできないので、母体搬送の受け入れを拒否せざるを得ないのかもしれません。

地域の周産期2次医療体制を整備するためには長い年月がかかり、決して一朝一夕に達成できるものではありません。いったん地域の周産期2次医療体制が崩壊してしまえば、それを再び一から立ち上げて軌道に乗せるのは至難の業です。

社会の無理解がこれ以上続けば、他の地域でも同様の事例が今後続発するのではないかと危惧します。周産期2次医療体制は地域の宝です。それが全国いたる所で崩壊の危機にあり、今は、地域ぐるみで、大切に守り育てていかねばなりません。


2006,10,30 教育基本法改正審議より

2006-10-31 01:40:23 | 履修漏れ
文科省は学校現場、すなわち校長に一義的な責任があるという立場だ。伊吹文科相は「高校教員の人事権は基本的には教育委員会にある。学校の運営権は校長にある。文教行政の責任者としておわびをしないといけないのは当然だが、それにしても、権限を持って実際にあたっている人はしっかりして欲しい」。いじめ自殺にも触れ、「精神論だけで(うまく)いかない場合は、(教委を)制度的に見直していかねばならない」と現場批判を展開した。
 これに対し、野党は逆に頂点に立つ文科省批判を強める。
 野田佳彦氏(民主)は「一学校の問題なら校長が謝罪すればいい。見逃した教委でもいい。だが日本中で起きた」と指摘。「文科省の責任だ。文科省のトップが教委が悪いとか校長が悪いとか言っている場合でない」と切りつけた。
 この違いは、教委見直し問題とも密接に絡む。強化を唱える文科省や与党と、廃止を掲げる民主党という対立構図だ。
 安倍首相は30日の審議後、記者団に教育再生会議で教委見直しを検討する考えを示したうえで「どのような機能を強化していくか、国との関係等ということもある」と語り、文科省にくみする立場を鮮明にした。


校長が自殺

2006-10-31 01:36:47 | 履修漏れ
30日午後4時5分ごろ、茨城県大子町左貫の山林で、県立佐竹高校(常陸太田市)の高久裕一郎校長(58)が木の枝に掛けたロープに首をつった状態で死亡しているのを、県警大子署員が見つけた。遺体のそばにあった封筒に遺書らしきものが入っており、同署は自殺とみている。同校では履修漏れが発覚し、校長は対応に追われていたといい、同署は自殺の動機を調べている。
 調べでは、高久校長は29日午後3時ごろに外出。30日朝になっても帰宅しないため、家族が同日正午に捜索願を出していた。遺体が見つかった山林は、常陸太田市の自宅から約2キロ離れており、入り口には校長の車が止めてあった。
 佐竹高校では、3年生の生徒80人が本来履修すべき世界史と理科を履修していなかったことが発覚。高久校長は27日、生徒に説明をしていた。教頭によると、校長は説明会の終了後、疲れた様子で、30日に予定されていた保護者説明会について、「(気が)重い」と話していたという。